株式会社明昌堂様はDTPをメインとしたコンテンツ制作会社で、学習参考書、教育書を中心に実用書、専門書、ムック・旅行ガイドなどさまざまな出版物を手がけています。主なクライアントは大手出版社と印刷会社で、東京本社で営業、製版と制作の一部を担い、ほとんどの制作は新潟支社で担当しています。
同社では、ワークフロー自動化ツールのEnfocus SwitchとPitStop Serverを3セット導入し、日々の業務効率化に活用されています。新潟支社の技術開発部 部長 本田真規様に導入の背景や効果を伺いました。
機械に任せられる部分は任せたいという社風
技術開発部は約6年前に立ち上がった、50年以上の社歴の中で比較的新しい部署で、最近いろいろな成果が出始めてきたところです。主な業務はDTPに関する技術開発で、オペレーターが抱える課題を技術力でサポートしています。ちょっとしたスクリプトを書いたり、開発レベルの高いものは外部の業者と一緒に開発することもあります。
社員向けの技術相談窓口のようなサポートチームとしての役割も担い、マシンの不調や作業中のトラブルにも対応しています。オンライン上に社員が困ったことを書き込むと、技術開発部員が対応する体制も作っています。
DTP作業は人間が一生懸命手を動かしてモノを作り上げていきますが、機械に任せられる部分はなるべく機械に任せたいという考えを会社として持っていました。そのような社風もあり、SwitchとPitStop Serverの導入時期はかなり古く2008年です。導入当初はまだ英語版で、情報やノウハウがまだ少ない中で試行錯誤しながら使っていました。
「まさに理想の自動化ツール」と即導入
導入のきっかけは、展示会でTooにSwitchを紹介してもらったことです。上司と一緒に「まさに理想の自動化ツールだ」と盛り上がったことを覚えています。その後、すぐに決裁を取って即導入しました。
当時はPDFでの印刷会社への入稿が始まったばかりの時期で、PDFの検査に試行錯誤していました。修正作業を効率化すべく、どんなにページ数が多い制作物でも修正ページだけを差し替える対応を可能にするために、1ページ1ファイルのPDFを作って印刷会社に納品する方針を取っていました。そのため、SwitchではInDesignデータのPDF変換とその単ページ化を自動化することを第一の目標としました。
4時間ほどかかっていたPDFの書き出しが1時間に
導入後の効果としては、作業時間の大幅な削減が挙げられます。例えば、旅行ガイドブックの場合、写真が多いため1冊200ページくらいのもので10GBを超えるファイル容量になります。これを手作業で人間が1ページずつPDFに書き出す作業に、4時間ほどかかっていました。今はフォルダにファイルを投げ入れてしまえば自動で処理されるので、その時間に別の作業ができます。書き出されたPDFをチェックする作業は必要ですが、今ではトータル1時間程度で済んでいます。
ほかにも、細かな作業の自動化によって、スタッフそれぞれの作業時間が少しずつ短縮され、全体として大きな時間削減効果が出ています。機械の処理を待つ時間を削減できたことが一番効率化に繋がっていると考えています。
PitStop Serverで同じレイアウトファイルから2種類のPDFを別々に書き出す
教材制作では、PitStop Serverが非常に重要な役割を果たしています。教科書は通常の生徒用のものとは別に、解答や補足説明が入った教師用も作ります。その際に、教師用にしかない要素は特色で作っておきます。そこでPitStop Serverを使用すると、1つのPDFから、生徒用と教師用とを分けて書き出すことが簡単にできます。
生徒用と教師用を別々のファイルで管理すると、修正時に2つのファイルに変更を加えることになり、手間がかかりますしミスも起きやすくなります。レイヤーで分ける方法も考えられますが、例えば解答欄を表組で作ったときに表の罫線と中の解答のテキストを別レイヤーで扱わないといけないので、作業が煩雑になり修正時の手間もかかってしまいます。
最近の使い方として、クラウドコンテンツマネジメントのBoxのフォルダを監視させて、そこにPDFが入ってきたら自動でプリントアウトしています。月刊誌など定期的に校正が入る仕事では、非常に役立っています。編集者がBoxにファイルを入れると、こちらのオフィスのプリンターから出力されるので、メールでのやり取りが不要になりました。
自動化やオンライン化の推進により作業効率向上を図る
以前は4年に1回の教科書改訂期には、夜9時や10時まで作業するのが当たり前でした。しかし今では残業はほぼなくなっています。マシンやサーバーのスペックが上がった影響もありますが、SwitchとPitStop Serverによる自動化の効果が大きいです。
また、年々事故率も下がっています。毎年、年間の総仕事量に対してどのくらいクレームが発生したかの統計を取っていますが、数値ははっきりと下がってきています。これは、チェックのフローができあがってきたこと、一つひとつのクレームにきちんと対策をしてきた積み重ねの効果だと考えています。
今一番興味があるのはAIの活用です。たとえば、Switch上で画像の切り抜きが自動でできるようになれば、とても便利だと思います。DTP以外の分野でも技術開発の研究を進めていて、3Dプリンターでの胸像作成に活かすため、AIを利用して写真から3Dを作る実験などもおこなっています。
Tooには信頼を置いていますし、付き合いも長くなりました。この業界で使われるツール類を幅広く取り扱っていて、いろいろ紹介してもらえるので助かっています。新しい物好きな私としては、導入するしない以前に興味深く話を聞くことが多く勉強にもなります。
私の目標の一つは、物流を極力少なくすることです。現在でも、新潟と東京の間で毎日原稿のやり取りに宅配便を使っていますが、これを減らしたいと考えています。この辺りは雪が降れば交通が麻痺することもあり、以前からの目標です。
こちらで作ったものを紙でプリントすることは減ってきていて、校正はPDFで済むケースがほとんどです。しかし、入稿される原稿が紙であるケースはまだあるので、よい仕組みを作って最終的にゼロにしたいと思っています。いろいろ提案いただければありがたいです。
※記載の内容は2024年10月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。