圧倒的なディテールが後押しするスタジオカラー流モデリング術

まだ20歳の新人スタッフが、「日本アニメ(ーター)見本市」第二弾 自転車アニメ(フル3DCG作品)「HILL CLIMB GIRL」を通してなにを学んだのか?
スタジオカラー流のCGモデリング術とはなにか?をご紹介します。
http://animatorexpo.com/hillclimbgirl/

「HILL CLIMB GIRL とは」

女子高生ひなこは、プロロードレーサーに憧れるほど自転車大好き。
毎朝、坂の上の学校まで、同級生の男子とママチャリで競っているが、連戦連敗。
悔しいひなこは、憧れの選手のレース映像から勝利のヒントを得て、翌朝に望むのだが…

熊谷 春助
大阪情報コンピュータ専門学校2014年卒
本作では
モデリング、ライティング、コンポジット
モデリングでは、主にロードレーサーのクランクやハンドルなどパーツ単位で担当
ライティング、コンポジットでは特に変身シーンなどを担当

髙部 翼
大阪デザイナー専門学校2014年卒
モデリング、ライティング、コンポジットに加えリギングを担当。
主人公たちが背負うカバンのモデルとリグ、フェイシャルリグも担当。
ライティング、コンポジットでは変身前の自転車シーンを多く担当

宮城 健
1984年沖縄県生まれ
本作では3Dディレクターを務める
スタジオカラーデジタル部では モデリングディレクター、研究開発ユニットリーダー


プロデューサー瓶子(以下P)
制作お疲れさまでした。今回初めてのスタジオカラー作品への参加でしたが、どうでしたか?
熊谷 僕は、学生時代にセルCGの作品は制作した事がありませんでした。具体的には、ラインを出す為にエッジを立たせることや、スムージンググループの作成など初めての経験が多かったです。前半のモデリング時期は淡々とこなせていたのですが、後半のライティング/コンポジットに移行してからは時間がなくて、土日も作業していました。
髙部 自分はリグの基本機能は知ってはいたのですが、ルックアットするアップノード軸を設定するなど、リグリーダーの鈴木さんに細やかな設定を教えて貰いました。最後は朝まで仕事して家に帰ってシャワーだけ浴びて、スタジオで午前中休むスタイルになりました。
P も、もうしわけありません。(汗) 3Dディレクター宮城くんにに聞きたいのだけれども、ズバリ、2ヶ月近く自転車のモデリングをしてたでしょう。4人掛かりで1台の自転車をあんなに....狙いは何処に有ったのかな?
宮城 テレビアニメ[Over Drive]の止め画で見せる自転車ディテールの緻密さに、自転車に対する愛を感じたんです。折角の3D作品なので、その愛を動画でも感じるとれる表現をしたいと思いました。自転車好きの人にも、認めてもらえるレベルのアニメーションが作りたかったので、どれくらいUPになっても、というよりも、UPになればなるほど、違いがわかるモデリングを目指したかったんです。
P 狙い通りにはなってはいます…。
宮城 今回、モブキャラクターも全部3DCGなんですけども、それらを担当した小林学さんに資料を沢山収集してもらいました

宮城 ロードバイクも一旦は海外サイトで同じモデルが有ったので買ったんですけど、
比較検証すると正確でない部分を多く発見したので、
結局、しっかり合わせていく段階でフレーム部分は田村君にほとんど作り直してもらいました。
P え!あれ、買ったのにそのまま使かわ…う、うん。

熊谷 僕も学生時代にモデリングをした事は何度もありましたけど、
資料を集めて、大抵は3面図を元に制作していました。
今回は三面図だけでなく、斜めや真下なども写真、資料を集めてあらゆる角度からみて正しいモデリングを!と言われて驚きました。
宮城 とにかくとことん資料を集める、ネット検索は適切ではない画像が混在します。それらを見分けるためには、公式な資料や実物を見に行き触ってみるを繰り返し実戦してもらったんです。
熊谷 実際、参考の写真資料では水平に見えていた部品が、実際見て触ってみるとテーパーがかかっていました。自転車の外見だけでなく、構造も理解できるように成りました。
宮城 カラーの内製スクリプトになりますが、KH image plane のおかげで揃えた資料にトコトン合わせていく作業ができました。
P 熊谷君はロードバイクのモデルだと、どこらへんを担当したのかな?
熊谷 クランクとサドルとステムとコントロールレバーです!
P マニアックだ。
P リギング/セットアップも今回用に新たにたくさん試していたよね。
宮城 今回フェイシャルのモーフターゲットはむしろ少なめでした。
P え!
宮城 たくさんのモーフターゲットから選ぶのではなく、キャラクターデザインの表情集、作画監督修正にあわせられるようにフェイシャルリグを用意しました。
P そ、そう...だったよね(汗)
髙部 自分はフェイシャルのリギングを担当しました。

宮城 キャラクターデザインの絵がとても魅力的でしたので、それをポリゴンで表現する際に、どれぐらいモデル形状の嘘を付かないといけないかを、髙部君に沢山検証して貰ったんです。
髙部 はい。
コンポジットでは影とハイライトをアニメ調にデザインし直す為にAfter Effectsでかなりレタッチもしました。 坂本さんも今回はアニメ調のライティングにこだわるって凄かったので。
宮城 制作期間も短かったので、アニメーション期間に納まらない部分を彼ら、レンダリングチームに担当してもらいました。
P すみません…(6分間をアニメーター4人で6週)
宮城 ライティングと言いつつもハイライト/影の制御にはじまり、ラインの設定や、襟、シャツの皺など変形まで追い込んでもらいました。


P これからCGをはじめる学生のみなさんにアドバイスは?
髙部 出来るだけ沢山の作品を作ってください。
スキニングなどは習熟による勘が必要です。どれだけ多くソフトを使っていたかはプロになってからも役に立つ自分の自信になります。
熊谷 インターンなど機会があれば、プロフェッショナルの現場に触れみてください。自主制作の場合、品質を保つ責任者が自分なので、妥協できない状況と、先輩などのアドバイスで自分を高めてくれる環境に身を置く事も重要だと思います。

日本アニメ(ーター)見本市 とは?
「日本アニメ(ーター)見本市」とは、スタジオカラーとドワンゴが贈る短編映像シリーズ企画です。今回お話いただく「HILL CLIMB GIRL」は、本企画内で第2弾作品として公開されました。本企画では様々なディレクター陣による、オリジナル企画・スピンオフ企画・プロモーション映像・MusicPVなど、ジャンルを問わず愛と勢いで創りきる数々のオムニバスアニメーション作品を毎週金曜日に1話ずつ公開します。本企画を通じて、表現の規制のない"自由な創作の場"を提供し、日本のアニメ制作における企画開発、 R&D、人材育成など、この先の映像制作の可能性を探りたいと考えています。


(c)2014 nihon animator mihonichi, LLP




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