ヤマハ株式会社様は、「感動を・ともに・創る」という企業理念をもとに、アコースティックからデジタルに至る楽器全般、音響機器、通信機器などの製品を提供されています。今回は、これら製品の取扱説明書の校正に、オンライン校正ツールZiflowを導入されました。音響事業本部 基盤技術開発部 製品情報デザイングループの石川秀明様、吉野圭一様、大石浩史様に、導入の経緯や効果を伺いました。
製品の仕様を的確に伝えるための取扱説明書を複数媒体制作
吉野様(以下、敬称略):
我々の部署では、弊社が提供する製品の仕様情報をトータルで提供するための、取扱説明書を作成しています。ワンソースマルチユースで紙媒体だけでなく、PDFやHTML、動画マニュアルなどを制作し、日々より良い情報提供の形を模索しています。
取扱説明書を制作する際には、分かりやすさはもちろん、仕様と違いがないか、法規制に則っているかなど、クオリティーを担保するための校正に力を入れています。1回の校正には、我々制作担当以外に製品の開発担当者など、10人以上のメンバーが携わることもあります。
石川様(以下、敬称略):
私たちの製品は多言語展開されているため、全言語を合わせると年間で約15万ページの取扱説明書を制作します。特に法規制とスペック表記の間違いが起こると製品の出荷が止まる恐れもあるので、力を入れて校正にあたっています。
さまざまな媒体を同じフローで校正できるZiflowを導入
吉野:
従来はAcrobatの共有レビュー機能や、紙に印刷して校正を回覧していました。PDFの取扱説明書に関してはさほど問題ありませんでしたが、HTML媒体はページ遷移の確認ができないため、Acrobat上の修正指示とプレビューのHTMLを画面上で見比べる必要がありました。動画に関しては、修正箇所のスクリーンショットを撮って、テキストで修正や秒数を指示するなど、手間がかかっていました。
大石様(以下、敬称略):
校正を始める前処理として、HTMLをPDF化したり印刷する作業が必要で、校正後はコメントの集約が必要でした。また、以前使っていたデスクトップアプリでは各人の環境に影響され、コメントが正常に表示されないことなどのトラブルがありました。トラブルが起きると、解決のために本来注力すべき校正業務を止めて対応をしていました。
吉野:
そんな時に、TooさんからZiflowを紹介してもらいました。ZiflowはPDFやHTML、動画を含め、さまざまな媒体の校正ができる点が非常に魅力的でした。また、複数人と同時に同じ制作物を校正できる点も決め手になったと思います。トライアルでこれらの機能を試して、校正を回覧するときのコミュニケーションコストや工数を削減できると期待できました。
HTMLのページ遷移など動的な確認も可能に
吉野:
本格的な運用はこれからですが、PDFの版下チェックや、動画のチェック、今までできなかったHTMLの動的な確認などにZiflowを活用していく予定です。HTMLに関しては、ページ遷移だけでなくレスポンシブも試せるのが便利です。
大石:
他社製の校正ツールも調べてはいましたが、HTMLの校正に関しては対応できるツールがほとんどありませんでした。あったとしても、すでに一般公開されているウェブサイトのみの対応でした。Ziflowはイントラのサーバーにアクセスできるため、公開前の製品情報が載ったHTMLを校正できる点が良かったです。
石川:
世の中の情勢に合わせて、取扱説明書はさまざまな媒体に変化していく可能性があります。Ziflowはどの媒体でも同じ方法で校正できるので、ツールを使い分ける手間や迷いがなくなり、校正にかける工数も削減できると考えています。
取扱説明書の品質向上に業務時間を割ける
吉野:
UIに関してもかなり作り込まれている印象です。マウスオーバーで機能名が表示されるため、触ればある程度理解できます。これからレビュワーになる人も、問題なく運用できるだろうという感触は得られています。
運用が進めば、取扱説明書を各言語に翻訳している海外の現地法人の方々へも展開できそうです。やり取りも効率化されますし、Ziflowの招待を送る際にパスワードの設定ができるため、セキュリティもより安心できるものになっていくと思います。
これまでは校正期間を1週間設けたとして、トラブルや校正のための準備でレビューにかける時間が削れていました。Ziflowはブラウザベースで動くため各人の作業環境に左右されにくく、何より「校正だったらここを見る」と一元化できる点が非常に良かったです。余裕を持って校正に取り掛かることで、取扱説明書の品質向上のための仕事に時間を割けるようになりそうです。
導入前後のフォロー体制にも安心できた
大石:
弊社ではクラウド製品を導入するとき、セキュリティーの要件を確認する必要があります。Tooさんに協力してもらい、安全な製品だということを弊社の情報システム部のメンバーに認めてもらえました。製品説明だけでないサポートもありがたかったです。
吉野:
Tooさんからは他のデジタル校正ツールを導入しているため、ふとした相談からZiflowを紹介してもらえました。今のところ校正を複数人で回覧できる機能だけでも十分メリットがあると考えているため、承認フローなどの細かな機能は活用していません。今後Ziflowに慣れてきてさらに活用したくなった時に、ぜひ相談させてもらいたいです。
純度の高い製品情報を発信していきたい
吉野:
ここ10年ほどで、紙媒体以外の取扱説明書はかなり増えています。パッと知りたい人は紙でできた簡易ガイドを、さらに深く知りたい人は紙からHTMLや動画マニュアルへ誘導しています。今後、例えばZiflowにAIでレビューできる機能が追加されれば校正はより効率化されて、お客様が必要な情報を提供するための仕事に注力できそうです。
石川:
何より重要なことは、アイデンティティである製品情報を、できるだけ純度の高い状態で発信していくことです。今の世の中、ネット上に出た情報は、いろいろな人が拡散し、拡散された情報は要約されて、時には歪みが生じます。その歪みを回避するために、できるだけ短くてわかりやすい文章かつ、自動翻訳されても誤訳されない状態にする必要があります。これらに注力するためにも、私たちの業務の中で校正ツールは非常に重要な役割を担っています。
※記載の内容は2023年5月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。