株式会社トラストネットワーク様は、テレビ朝日のグループ会社として平成元年に設立され、放送局やテレビ局の技術業務受託、番組制作業をおこなっている技術プロダクションです。現在では社員数は約1,000名まで成長し、2023年12月には新しいオフィスと「青海スタジオ」が完成しました。
同社では、青海スタジオ内に導入されたバーチャルプロダクションを簡素化するためのカメラトラッキングシステム HTC VIVE Mars CamTrack(以下、 VIVE Mars )によって、実物の被写体とバーチャル空間の背景を同時に撮影し、リアルタイム合成を実現されています。導入経緯や効果を、技術・制作戦略局長 工藤法隆様、プロダクション技術部長 礒野武志様、配信運用センター サブチーフ 岡本英樹様に伺いました。
近年はインターネット上の映像配信業務に注力
工藤様(以下、敬称略):
当社はテレビ朝日のグループ会社として創立され、マスターや放送準備・運行系の業務からスタートしました。クライアントのニーズに応えながら事業形態を柔軟に変化させ、現在ではインターネット上での映像配信業務が好調です。
礒野様(以下、敬称略):
プロダクション技術部では、JSPORTS様の放送や配信に関するスタジオ業務やロケ、中継を主におこなっており、その他AbemaTV様の『WRC世界ラリー選手権』『スーパーフォーミュラ』やCygames様の配信もおこなっております。
岡本様(以下、敬称略):
私はその中で、映像機材、放送機材に関しての導入や検証を主に担当しています。バーチャルプロダクションには以前から興味があり、3年ほど前から導入を検討していました。
低コストながら表現の幅が広がるVIVE Marsを導入
岡本:
映像配信サービスのコンテンツ制作は、短納期で低コストを求められることが多いです。導入がスムーズに進みコストをなるべく抑えられるバーチャルプロダクション製品として、リアルタイム制作ツールUnreal Engineと連動が可能なカメラトラッキングシステムを探していました。その中で見つけたのがVIVE Marsです。当社はビル内にスタジオを構えていることから、照度や広さには限界があります。そのような限られた場所でも、赤外線センサーを設置することでトラッキングできるVIVE Marsなら問題なく使用できます。
数年前は、ズームの連動がなく導入を見送っていましたが、外付けレンズエンコーダーのFIZTrackが新たに発売され、フォーカスやズームの動きをUnreal Engineに送ることができるようになったことで、導入に至りました。
製品のマニュアルが公開されていることもあり、導入は思ったよりもスムーズに進みました。捻出された時間はUnreal Engineの構築に時間を割くことができたので、非常に助かりました。
Unreal Engineとの連携で躍動感のある演出を実現。クライアントからも好評
礒野:
『WRC世界ラリー選手権・スーパーフォーミュラ』や『高円宮杯ナビ』などは、3つのカメラを同時にバーチャルプロダクション用に使用して収録しています。『WRC世界ラリー選手権』では開催国ごとの特色に合わせて、例えば画面上に動物を出したり雪を積もらせたり風車を建てたりといった遊び心を持った演出を加えています。背景となるアセットは基本的に購入して用意し、オリジナリティを出すために加工して使用します。
また、Unreal Engineのバーチャルカメラで、グリーンバックの外に生成したバーチャル空間を撮影できます。当社のスタジオはオフィスビルに入っているため、コンパクトで天井も低いですが、映像に広がりをもたせることができます。
岡本:
『高円宮杯ナビ』では、グリーンバック上に学校の教室のようなセットを作り、ゲストにトークしてもらいます。番組冒頭の導入では、グリーンバックの外で生成したグラウンドからあたかも教室の中に入っていくような躍動感のある演出を加えています。
工藤:
VIVE MarsとUnreal Engineの連携によって実現できる表現の幅が広がったため、中には、自社でバーチャルプロダクションをお持ちのクライアントが当社のシステムをご利用されることもあります。
コストを抑えて高品質なコンテンツ制作が可能に
礒野:
制作費用をかなり抑えた上で、柔軟な表現が可能になりました。普通バーチャルセットを作るとなると、最低でも数十万から百万円近くはかかると思われますが、それが数千円から数万円という低価格でアセットを購入すれば済むようになりました。インターネット放送は特に低コストを求められるので、予算内でクオリティの高いコンテンツを作ることができています。
導入時にはVIVE Marsを使いたい案件がすでに決まっており、スタジオ構築までの期間が1ヶ月という非常にタイトなスケジュール状態でした。Tooには当社のグリーンバックを使用したスタジオに合った提案やデモをしてもらったことで、具体的なイメージが湧きやすかったです。構築もスムーズに進み、案件に使えるスタジオが無事に完成したので、本当に感謝しています。
屋外での活用も想定。引き続き新たな体験を提供していきたい
礒野:
スタジオが完成した際のお披露目会では、多数のクライアント様に足を運んでいただいたので、VIVE Marsへの注目度は高いと思います。今回の導入をきっかけに、新たな引き合いが生まれたこともあります。
岡本:
バーチャルスタジオを稼働させるという目標は達成できました。今後は、表現できる幅をさらに広げられるように研究を重ねていきたいです。VTuber関連の依頼もいただいているので、バーチャル空間のスタジオでVTuberと演者がどう掛け合うかなどを検証していきたいです。
また、VIVE Marsは持ち運びが可能なため、屋外のライブや音楽イベントでの活用も考えています。バーチャル空間を作ることができれば、新たな体験を提供できると思います。VIVE Marsを導入している会社はまだ少ないですが、安価に入手できて手軽にバーチャルプロダクションに挑戦できるという点で、非常にお勧めできる製品です。
TEL:03-3405-3333 ウェブサイト
※記載の内容は2024年6月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。