フジテック株式会社様は、エレベータ、エスカレータ、動く歩道といった都市空間移動システムの専業メーカーです。研究・開発から販売、生産、据付、保守、リニューアルまで、一貫体制で安全・安心な移動を実現するため、世界の都市機能の未来を創造しています。今回はエレベータなどのCGパース作成における課題解決のためTooにご相談いただき、3ds MaxとレンダリングソフトウェアV-Rayのカスタムトレーニングを受講いただきました。その効果や背景を、技術本部 営業技術センター 営業技術統括部 課長代理 栁沢啓太様に伺いました。
3ds MaxとV-Rayのレンダリングは「空気感」が明らかに優れている
わたしが所属する営業技術統括部では、業務の効率化や新しい業務システムの開発に注力しています。特に近年は、アプリケーションの連携による業務の効率化と、デジタルツインを用いたお客様との仕様の合意形成の迅速化に取り組んでいます。
3ds MaxとV-Rayの導入前は別の3DCGアプリケーションを使用していましたが、アプリケーション間の互換性などによる作業効率やCGの成果物のクオリティに課題がありました。
これらを解決するため、3D CADアプリケーションInventorとの連携ができる、Autodeskの3ds Maxの導入を計画しました。3ds Maxを使用していく中での課題が明確になったところでTooさんに相談し、レンダリングのクオリティを高めるために提案いただいたV-Rayの導入とトレーニングをお願いしました。
よりスピード感を持ってお客様への提案ができるように
3ds MaxとV-Rayを組み合わせることで、従来のレンダリングと比べて同じ時間でより高いクオリティの成果物を得られるようになりました。影や反射の自然さなど「空気感」が明らかに優れています。たとえば、従来使っていた3DCGアプリケーションでクオリティが100のものを作るのに1時間かかっていた作業が、30分程度で完了できるようになりました。
当社では、お客様との仕様の早期決定や合意形成の迅速化、お客様の理解度向上を目指しています。納品後に「思っていた色と違う」「思っていた仕様と違う」といったことがあってはならないですし、早期に仕様が決まれば生産工程も早められます。
そのために3DCGを活用して合意形成を進めているのですが、3ds MaxとV-Rayの導入で3D CADデータを読み込んでCGを作れるようになったこともあり、よりスピード感を持って提案ができるようになりました。お客様にとってわかりやすいのはもちろん、打ち合わせを行う社員からもポジティブな反応が返ってくることが多いです。
業務内容を理解した最適なトレーニングの提案
導入にあたっては、Tooさんによるトレーニングが非常に効果的でした。初期段階で、内容や方向性を、予算を含めて提示していただいたことも非常に助かった部分です。
トレーニングの前段階では、わたしたちが提出した3DCGデータをもとに、V-Rayを使用した場合としない場合の比較資料を作っていただきました。その時点ではまだV-Rayの導入を決めかねていた状態でしたが、具体的な違いを見ることができて導入の判断材料となりました。
エレベータは非常に特有な商品でCGの作り方も特殊です。建築の内観パースの場合、部屋の中の人の目線で作ることが多いのですが、エレベータは非常に狭い個室空間なので、そのような作り方では壁との距離が近すぎて適切な表現ができません。そのため、密室でありながら外から見ているような空間を表現する必要があります。
Tooさんの講師に以前使っていた3DCGのデータを渡し、内容を読み解いてもらうことで、こちらがやりたいことを高いレベルで理解した上で最適なトレーニング内容を提案していただきました。
3ds Maxのトレーニングを提供している企業は多くありますが、V-Rayも一緒にとなるとほかには見つかりませんでした。そのような意味でも、非常に貴重なトレーニングの対応をしていただいたと思います。また、作業者のスキルに依存せずに品質の均一化が実現できるようになりました。
3D CADとの連携でCG制作の工数を削減
CG制作のワークフローは大きく二つあります。一つは二次元の図面データから手作業でCGを起こす作業です。手作業といっても完全なゼロベースではなく、データベースを活用してある程度できているものを編集します。以前の3DCGアプリケーションを使っていたときと同じワークフローですが、3ds MaxとV-Rayの導入でスピードもクオリティも上がっています。
もう一つのワークフローは、3ds Maxを導入した大きな理由でもある、3D CADアプリケーションとの連携です。Inventorで作成した3D CADデータを3ds Maxに取り込んで、ライティングやマテリアルを設定する方法をとっています。定量的な効果を示すのは難しいのですが、かなり工数が削減され導入効果を感じています。
なお、標準的な仕様のエレベータについては、当社が開発した「デザインシミュレーター」で誰でもCGを作成できます。そのため、わたしたちが制作するのは、標準仕様から外れた特殊な仕様や1トン以上の大型エレベータ、デザインシミュレーターでは作れないエスカレータが中心となっています。
誰が作っても同じクオリティのCGが作れる環境を整える
3ds Maxへの移行に伴いCGを作る手順が変わったため、その基準化が課題となっています。理想としては、3D CADデータを元にボタンを1回押すだけで自動的にCGができあがる仕組みの構築です。これは夢物語かもしれませんが、アプリケーション間の連携や設定を自動化することで、この理想に近づける模索をしていきます。
デジタルツインについても、エレベータ特有の方向性を模索しています。たとえば自動車であればショールームで実物を見ることができますが、エレベータの場合はそれが難しいです。実際に実物の確認を希望されるお客様も多いため、デジタルの中でサイズ感などをいかに適切に表現できるかをCGで対応しようとしている状態です。エレベータの場合、動画による確認で、くるくる回せることが正しいとは限らないので、皆さんが思い浮かべるようなデジタルツインとは、もしかしたら違う方向性に進むかもしれません。
※記載の内容は2024年12月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。