ピアノの製造・販売や音楽教室の運営などをグローバルに手がけられている株式会社河合楽器製作所様は「もっと伝えたい、感動を。」をスローガンに、2027年に創立100周年を迎えます。同社では、楽器のデザインや店舗・教室などのインテリアデザインに、概念設計や自由曲面表現に優れた3次元モデラー「Rhino」を利用されています。今回はデザイン室の室長 池川友康様、主務 植木淳也様、小那覇美咲様に、導入の経緯や具体的なご活用内容を伺いました。
世界中で展開される楽器や店舗のデザインなどを手がけるデザイン室
植木様(以下、敬称略):
当社は1927年創立で、創業者河合小市による「世界一のピアノをつくりたい」という熱い想いからスタートしています。その後楽器の製造や販売に限らず、教育事業なども幅広く手掛けるようになりました。
小那覇様(以下、敬称略):
デザイン室では楽器のデザインを中心に、音楽教室の店舗・展示空間などのインテリアデザイン、ポスターやカタログ、アプリなどのグラフィックデザインなどをおこなっております。創造性と機能性を兼ね備えたデザインを提供しながら、お客様の期待を超えるような成果を上げることをミッションに掲げています。
池川様(以下、敬称略):
それに加え、2027年に当社が100周年を迎えるにあたり、デザイン室のメンバーもワーキンググループに参画して、各種アクションに対してデザイン面からフォローをしています。
Macでも動作可能であらゆる形状のモデリングに対応
池川:
デザイン室でRhinoを導入したのは15年ほど前です。過去にはいろいろなCADツールを試していましたが、Macでも動作が可能で、自由曲面を扱いやすいツールは当時Rhinoぐらいでした。また、買い切りのソフトウェアであるため、他のツールに比べるとリーズナブルな点も魅力でした。
植木:
主な用途は、楽器や店舗インテリアのモデリングです。楽器のデザインプロセスは、まずはコンセプトの作成、そしてそれに基づいたデザインデータを複数モデル制作します。その後製造部門プロダクトチームでレビューしコスト試算しつつ、私たちはレンダリングを制作、営業部門や経営部門と共有し意見を集めます。最後に設計部門とコミュニケーションをとりながら量産形状に落とし込んでいきます。
小那覇:
店舗のデザインでは、音楽教室や店舗を担当する営業部門と一緒にコンセプトを作るところから始まります。地域ごとの特徴に合ったイメージを提案して、Rhinoでデザインを形にしていきます。簡単なレンダリングもできるため、建築パースを常に可視化しながら設計していきます。
Rhinoはプロダクトとインテリア、どちらのモデリングも得意なので誰がどの業務についても一つのソフトで完結できるのがありがたいですね。
複雑な自由曲面も正確に出力が可能
小那覇:
Rhinoはインターネット上に操作方法やチュートリアル動画が多く掲載されるので、使い方で困ったことはほとんどありません。複雑な曲線を作り出すのが得意なため、コンセプトモデルなど、デザイン室ならではのおもしろい形にチャレンジしたいときはぴったりです。
植木:
SubDの機能によって複雑曲面制作のアプローチがグッと広がりましたね。自由度の高いSubDで感覚的に素早く制作しつつ、従来のモデリングで精度の高いデータ制作をするなど、使い分けができるように機能の理解を深めていけたらと思います。
さまざまなデータフォーマットに対応。部門を越えたやりとりもスムーズ
植木:
さまざまなデータフォーマットに対応している点も魅力だと感じています。Rhinoでモデリングをしたあと、MODOへエクスポートをするのですが、スムーズにデータを展開できます。また、楽器のデザインをするときは設計部門とのやり取りが多くなります。量産設計用途で使うSOLIDWORKSへエクスポートするときにも互換性があるため、設計部門に正確なデータを渡すことができます。
最近、楽器のデザインのレビュー用に、VRゴーグルの導入を始めました。VRゴーグルへのデータの展開もスムーズです。試作品を作るとなると、1台あたり数10万円のコストがかかりますが、ざっくり形を決めたいときや量感を確かめたいときに、VRなら気軽に試すことができますし、遠隔地で同時に確認しながらの打ち合わせも可能です。
小那覇:
当社は15年以上Rhinoを使っていますが、過去に作成されたデータもきちんと開くため、更新しながら今でも使うことができます。また、定期的なバージョンアップによって新しい機能が追加されるので、安心して長く使うことができます。
ソフトからデバイスまでTooが総合的にサポート
植木:
Tooからはさまざまなソフトウェアを導入しているので、困ったことがあったらまずTooに連絡しています。何かあっても解決してもらえる安心感が頼もしいです。
小那覇:
必要なツールがある場合は、相談から見積りの作成まですぐに対応してもらえます。導入までスピード感があるので助かっています。
池川:
Tooとは昔から付き合いがあり、私たちも知らないようなツールについてもよくご存知です。ソフトウェアだけでなく、Macの調達もApple Financial Services (AFS)を使用しています。会社にとってメリットのある購入方法を教えてもらえるのがありがたいです。
さらに効率的にデザインをするために
植木:
今後モデリングの効率化が重要になってくると思います。シリーズごとに形状的な共通項を持たせることや、量産加工時にエラーが出そうな形状をあらかじめ潰しておくなど、加工に関する知見のデータ化に取り組みたいです。
開発途中のレビューで繰り返される修正を減らすことも重要で、私たちのデザインの意図を多くの人に正確に伝えるためにも、VRの活用はさらに進めていきたいです。
小那覇:
インテリアの分野でもVRを導入したいと考えています。楽器ショーのブース設計も私たちの担当ですが、全国各地、海外でも開催されるすべてのショーに足を運べるわけではないので、3Dでの検討段階にすべてがかかっているといっても過言ではありません。特に、実寸大の再現が難しい看板などをVR上でできればと期待しています。
※記載の内容は2024年10月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。