住友ファーマ株式会社様は、企業理念*に「人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献する」を掲げ、革新的で有用な医薬品や医療ソリューションの研究開発に全力を注がれています。今回は、医薬品の添付文書や解説書などの照合に、ドキュメント差分検出ソフトウェアCollate Proを導入いただきました。導入の経緯や効果を、メディカルサイエンス部 金澤勝則様と北山甫様に伺いました。
* 2023年7月1日付で「理念」に変更
人の命に関わる重要な照合作業を担当
北山様(以下、敬称略):
私たちの部門では、自社で製造販売している医療用医薬品を医療関係者に適正に使用してもらうための資材や、患者さん向けの説明文書を作成しています。医薬品の有効性や安全性、服用時の注意点などが書かれた文書や冊子を、紙媒体や電子媒体で提供しています。
金澤様(以下、敬称略):
具体的には添付文書の作成に関与しています。また、添付文書を補完する解説書であるインタビューフォーム、患者さん向けの説明文書である患者向医薬品ガイドやくすりのしおりなども作成しています。
北山:
特に私と金澤は東南アジア各国向けの添付文書を担当しています。業務の一つとして、海外の印刷工場が作成した添付文書の内容が、各国当局から承認を受けた内容と違いがないかを一文字ずつ照合しています。人の命に関わる情報ですので間違いは許されず、正確性を求められる仕事です。
文字が小さく、密にレイアウトされた外国語文書の短期間での照合作業には精神的な負担がかかっていた
北山:
添付文書は製品ごとに作成し、毎年のように改訂されるため、その都度照合作業が必要です。
これまでは、文書を印刷してマーカーペンで線を引きながら照合し、上司にダブルチェックをしてもらうのが基本フローでした。新型コロナウイルスの影響で在宅勤務をすることになった際は、パソコンの画面上で見比べながら照合していました。目視だったこともあり、集中しても1文書あたり半日ほどかかる作業でした。
金澤:
我々が扱っている東南アジア各国向けの添付文書は、日本のものと比較して文字のサイズが非常に小さく、密にレイアウトされています。それが大判の紙の表裏、国によっては表裏が複数の言語で表示されています。そのままの大きさで照合するのが難しい場合には、拡大コピーをするなどの工夫が必要でした。
北山:
添付文書には患者さんの命に関わる情報が記載されているので、間違いを見逃してはいけないという精神的な負担があります。また、海外とのやり取りには時間がかかるため、照合作業のための期間は短く設定されています。その2つのプレッシャーを抱えながら、業務にあたっていました。
文書間の差異を自動で検出。ヒューマンエラーによる見落としを防ぐ
金澤:
我々の作業では、各国当局から承認を受けた改訂文書と、その文書に基づいて海外工場が作成した添付文書を比較していますが、両者のファイル形式が異なることがよくあります。文書照合ソフトについては他社製品もいろいろと検討しましたが、突き合わせる文書のファイル形式が異なっていても照合できるのはCollate Proだけでした。
当初は当部門で検討を開始しましたが、DXの機運も高まっていたことから、DX関連部署と協力して、我々と同じような課題を抱えていた他の部門も巻き込んだ全社横断的な導入検討プロジェクトを組織することにより、最終的にはほぼ全社に導入しました。
北山:
また、当社は2022年4月1日に商号を変更しました。商号の変更にあたり、当部門では旧商号の入った多くの文書を改訂する必要がありました。改訂した文書の照合作業にも、Collate Proが大いに役立ちました。
Collate Proは、文書間の差異を機械的に検出してくれるので非常にありがたいです。思い込みによる見落としなど、ヒューマンエラーによるミスも防げるようになりました。
照合作業にかける時間を年間で約150日削減と試算された
北山:
導入時に効果を試算しましたが、当部門では年間で約150日は照合作業が削減できそうです。東南アジア向け添付文書の照合作業では、これまで半日ほどかけていたものが30分以下に短縮されました。
金澤:
海外工場から送られてくる改訂版添付文書のPDFでは、本来改訂していない部分に作業ミスによる誤記載が生じているようなことが多々あります。そのため、たった1カ所の変更改訂であっても、意図していない部分が変更されていないか、毎回、添付文書のすべての記載を照合する必要があります。Collate Proの導入によって、改訂箇所以外に不必要な変更が生じていないことも短時間で確実にチェックできるようになり、作業効率アップと同時に不安とストレスが大幅に削減されました。
削減された時間を他の業務や自己学習に充てられるようになった
北山:
当部門でCollate Proのトライアルに参加した従業員を対象に、Collate Proの使い勝手についてアンケートを取りました。「使いやすい」「文書間の差異が一目で分かって効率的に照合できる」といった意見が挙がりました。
当部門は添付文書関連の資材作成のほかにも、営業部門が作成した資材の審査も行っています。Collate Proによって削減できた時間を、資材の審査業務や、審査に必要な医学・薬学知識向上のための自己学習に充てることができるようになりました。
金澤:
当初の予定より導入検討に参加する部門が多くなったこともあり、Tooさんには、時間と手間をかけてもらい、Collate Proの使い方のセミナーも複数回開催してもらいました。現在はさまざまな業務担当の従業員が活用できるようになり、在宅勤務で自宅からCollate Proを活用している人もいます。
さらなるデジタル化にも期待している
北山:
現在は、Collate Proを照合作業の補助的ツールとして利用しており、人の目による照合も並行しています。将来的には、Collate Proで差異が検出されなかった箇所は人の目による確認を省略できるようなフローが実現したら理想的だと思います。
金澤:
さらに先の将来構想としてですが、現在Collate Proの導入で実現した「別文書間での内容照合」だけでなく、いくつものソースドキュメントから重要要素を抜粋して作り上げているインタビューフォームや、営業用資材などの審査作業の一部(複数のソースドキュメントの記載情報との照合作業など)も非常に複雑で時間を要する作業だけに、上手くソフトウェアを用いて作業をデジタル化できないかと考えています。今回のように肉眼照合に代わる自動化ソフト技術のノウハウをお持ちの会社にご協力いただきながら、よりデジタル化、自動化された審査フローの実現に期待しています。
※記載の内容は2023年6月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。