伝統産業から先端産業、個性豊かな大学や企業を数多く有し、約144万人の人口を誇る京都市。かつては都が置かれ、今でもその歴史と伝統、文化を感じられることから、日本各地、世界各国から観光客が訪れます。
京都市行財政局 防災危機管理室様は、そんな京都市の安全を守り、安心して暮らせるまちづくりのため、京都市の災害対応を統括する役割を担われています。今回、水害や地震などの自然災害、大規模事故等に対する予防や応急対策、復旧・復興に関する京都市の取組内容を定めた「京都市地域防災計画」の修正作業に、重要文書の改訂管理ツール「新旧文書」を導入されました。導入のきっかけや効果について、担当係長 吉川 暢 様と主任 𠮷川 真由美 様に伺いました。
京都市全体の災害予防や災害対応を円滑に進める
京都市行財政局 防災危機管理室は、京都市が全庁を挙げて取り組んでいる災害対策や災害発生時の対応を統括する役割を担っています。災害発生時には、災害対策本部を立ち上げ、本部事務局として京都市全体が円滑に災害に対応できるよう、各部局や区・支所本部の交通整理や統括を行います。他には、京都市と防災関係機関の連携強化を目的として年に1回実施している総合防災訓練の企画運営なども担当しています。
業務の中でも、特に重要な位置づけとなっているのが「京都市地域防災計画」の修正作業です。この地域防災計画は、都道府県や市町村が災害対策基本法に基づいて作成しており、“毎年”の点検と“必要な場合”の修正が義務付けられています。この「京都市地域防災計画」は、京都市が行う災害対応の羅針盤となるため、本市では、毎年修正を行っており、1年がかりで作業を行っています。
新旧対照表の作成と本編への転載に時間がかかっていた
修正内容は、各自治体に設置されている「防災会議」で承認を受けることにより確定します。そのため、本編の修正に先立ち、はじめに修正箇所をまとめた新旧対照表の作成が必要です。各部局で作成した新旧対照表を防災危機管理室で一つに取りまとめ、防災会議にこの新旧対照表を提示して委員の皆様に承認いただき、その後、本編に反映させる、という手順になります。
これまでは、この新旧対照表の取りまとめと修正箇所の本編への反映作業が、非常に負荷のかかる煩雑な業務になっていました。災害の種別や対応内容に応じて膨大な項目に分かれており、新旧対照表だけでも毎年のように100ページを超えるボリュームとなります。
いつ災害が起こってもおかしくない状況下での修正作業は、区切りをつけながらスピード感を持って進める必要があるため、「早急に効率化を図りたい」と考えていました。
新旧対照表の作成と本編への反映、この2つの作業を1つにできないかと考え、さまざまなツールを探したところ、新旧文書に辿り着きました。
新旧対照表が自動生成 作業時間が3分の1まで減少
新旧対照表の作成を自動化できたことが、導入して一番大きく感じている効果です。これまで、各部局による新旧対象表の作成と防災危機管理室による取りまとめ、防災会議での承認を得た後に防災危機管理室が本編への反映、という手順で修正作業を行っていましたが、各部局に本編に直接修正を書き加えてもらい、修正前後の原稿を新旧文書で読み込むことで、新旧対照表が自動で生成されるようになりました。新旧対照表の取りまとめと本編への反映作業を丸々省略できるようになったことで、体感ですが、修正作業にかかる時間が従来の3分の1程度になりました。手作業によるミスを回避できることもメリットに感じています。
文書の修正作業には集中力が必要ですが、これまでは突発的な災害対応などで業務が中断されることにより、リズムが崩れることも多くありました。特に新旧対照表を取りまとめる8月〜10月は、水害が多く発生する時期であり、大規模な被害が発生した場合は、1、2か月程度、災害対応に集中して取り組む必要があるため、普段から地域防災計画の修正作業にかかる負荷をできるだけ減らしておきたいという思いがありました。
手が回らない潜在的な課題の解決に取り組み、チーム全体の業務改善に繋げていく
修正作業の効率化により、明確な期日やゴールがない潜在的な課題の解決に取り組む時間が確保できるようになると感じています。
例えば、災害対応を行う危機管理センターの機器配置や災害対策本部の運営支援システムの充実など、まだまだ改善したい課題がたくさんあります。それらに時間を充てられることで、防災危機管理室だけでなく京都市全体の災害対応力の向上に繋がっていくと考えています。
修正作業のマニュアルづくりから活用まで、仕組みづくりに伴走してもらった
今回の取組は、紙媒体削減を目的として京都市地域防災計画を電子ブックに置き換えるタイミングに合わせて修正作業フローの効率化に乗り出したことが元々のきっかけでした。Tooさんには、最適なツールの紹介から文書の電子化まで、一連のフローの構築を一貫してサポートしてもらいました。
人事異動により、修正作業を担当する職員が定期的に入れ替わるため、作業マニュアルの用意や活用サポートなど、引き継ぎの仕組みづくりにも伴走してもらいました。マニュアルは非常にわかりやすく、使い始めたばかりの職員でも操作に迷うことはありませんでした。また打ち合わせ時の抽象的な依頼や指示にも具体的な解決策を提示いただけたため、非常に効果を感じながら活用できています。
「もっとこうしたい」を実現し、市民の安全を守っていく
「新旧文書」を実際に導入してみて、大量の文書事務を取り扱う役所組織では非常に重宝されるツールであると感じています。個人的には、防災危機管理室に限らず、様々な部署にも導入することにより、業務の効率化を全庁に広げていきたいという思いもあります。
新旧文書の導入を皮切りに、今後は、業務の仕組み化・効率化を加速させていきたい、そして業務の効率化により「潜在的な課題(もっとこうしたい)」の解決を試みる時間を生み出し、市民の安心・安全に向けた「あと一歩」の取組につなげたい、と考えています。
※記載の内容は2024年9月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。