"モノづくり産業のポテンシャルを解放する"をミッションに掲げ、図面データ活用クラウド「CADDi Drawer」やAI見積クラウド「CADDi Quote」を提供するキャディ株式会社様では、業務用パソコンとしてMacを選択する従業員が年々増加しています。急速な事業成長を遂げる同社において、Macの選択率が上昇している理由やWindows端末と比較した際の導入メリット、2024年1月から会社の標準機をMacへ切り替えた背景などを、同社コーポレートIT部の芦辺成矢様と塩野由理様に伺いました。
年々増加するMacの割合、現在は全体の約1/4がMacに
芦辺様(以下、敬称略):
当社では業務に利用するパソコンを従業員自らが選択できる「従業員選択制」を採用しています。その理由は、端末コストや管理コストなどが極端に重たくならないのであれば、従業員が好むデバイスを選択できるほうが生産性や満足度が上がると考えるからです。
会社設立当初は過去にWindowsを利用していた社員が多く、また、当社のお客様はWindowsを利用することの多い製造業であるため、2024年以前はWindows端末を第一選択肢として貸与していました。Macに関しては「どうしても」という人にだけ選択可能としていた形ですが、年を追うごとにMacを選択する従業員が増加しています。
塩野様(以下、敬称略):
現在、会社全体では約1000台の業務用パソコンを所有しており、そのうち約4分の1に当たる260台がMacです。今後もますますMacの比率が高まることが予想されます。そうした背景もあり、当社では2024年1月からMacを標準機として貸与する方針へ切り替えました。すると、まだ半年ほどしか経っていませんが、すでに50人ほどから希望が上がりMacへスイッチしています。Windows 端末を我慢して使っていた人だけでなく、これまで使ったことがない人からも、周囲にMacユーザーが増え、その良い評判を聞くことでMacへの切り替えが進んでます。
芦辺:
新入社員にも、特に要望がなければ標準PCとしてMacを渡しています。直近では中途入社10名のうち8名が問題なくMacを利用し始めています。Windowsを利用するお客様相手のカスタマーサクセス部門への配属が多い場合はWindows端末の比率が高まりますが、新しく貸与するPCの割合としては、体感で6割~8割程度がMacになっています。
デザインや開発だけでなく、さまざまな職種でMacが選ばれる
芦辺:
従業員に貸与しているMacはすべてMacBookシリーズで、テクノロジー部門とデザイナー部門ではMacBook Pro、そのほかの部門ではMacBook Airを標準機としています。2024年現在利用しているもっとも古いモデルはM1チップを搭載したモデルで、リプレイスの際には最新モデルを貸与しています。リプレイスサイクルは4年ですが、従業員からの要望があれば3年経過したら交換可能です。その際、現在はMacを標準機として推奨しているものの、Macで動作しないCADソフトなどを業務上利用する必要がある従業員に関してはWindows端末を使ってもらったり、MacとWindows端末の2台持ちも選択可能です。
塩野:
Macを選択する人の職種はさまざまです。テクノロジー部門に所属する開発者やデザイナーの多くはMacを選びますし、バックオフィス全般を担う私たちのようなコーポレート部門でもMacの割合が増えてきています。フィールドセールスを行う営業部門や、マーケティング部門などでも利用されています。とはいえ、当社の主なお客様は製造業ですから、お客様と環境を揃える必要のあるカスタマーサクセス部門ではWindows端末を利用する従業員もまだ多くいるのが実情です。
スペックだけでは測れない処理能力の高さがMacを選ぶ理由
芦辺:
年々Macへ切り替える従業員が増加しているのは「生産性の向上」が大きな理由です。当社ではMacとWindows端末のマシンスペックをできるだけ揃えるようにしていますが、表記上の仕様が同じであってもMacのほうが処理性能に優れています。特に重いスプレッドシートを開くときにそれが如実に現れます。たとえメモリの量が同じでも、Windowsの場合はスプレッドシートを開けなかったり、開くまでに5分ほどかかったりしますが、Macでは待つことなく開けます。
また、ビデオ会議ソフトで画面共有しながらスプレッドシートを見せたり、当社のソフトウェアを動作させたりしたとき、Windows端末だと突然ソフトウェアが固まったり、落ちてしまったりすることがありますが、Macではそうした問題は起きません。また、Macは熱効率や排熱に優れているので本体が熱くなったり、ファンが回ったりしてうるさく感じることもありません。こうした違いは、ユーザ体験としてはかなり大きいです。さらに外回りの多い営業職には、Macのバッテリの持ちの良さも評価されています。
塩野:
Macでは、たとえCPUが異なるモデルに変わっても、ユーザ体験がほぼ変わらないのも良い点です。もちろん、新しいマシンのほうが外部ディスプレイを多く接続できるなどの違いはあるかもしれませんが、だからといってマシン自体の使い勝手が大きく変わるわけではありません。Windows端末のように搭載するCPUがCore i5かCore i7かで極端に処理能力の差が生まれるようなことがない点が素晴らしいと思います。
「Macはトラブルレス」が従業員の生産性UPと管理コストの低減につながる
芦辺:
Macを標準機として採用したもう1つの大きな理由は、壊れにくく、トラブルが少ないからです。Windows端末では「電源が入らない」「カメラがオンにならない」「スプレッドシートの動きが悪い」など従業員からのさまざまな問い合わせが少なくとも1日1件はあります。一方で、Macの場合は"年間10件"もありません。もちろん、落下や水没などによる物理的な破損・故障は発生するのですが、それ以外のシステム的なトラブルや処理性能、バッテリの持ちなどへの問い合わせはほぼ皆無です。年間10件弱の問い合わせも、耐用年数が限界に来ている古いMacに関するものがほとんどです。
塩野:
Windows端末の場合は何らかのトラブルが生じて新しい端末に切り替えても「また動かなくなりました」ということが普通に起こりえます。一方で、Macではそうしたユーザ体験は発生しません。また、Macはトラブルの発生が少ないため、私たちコーポレートITのヘルプデスク対応がとても楽なのも大きなメリットです。
芦辺:
Windows端末はヘルプデスク対応がとても大変です。たとえば、業務用パソコンが故障したときは私たちのほうで代替機の手配を行いますが、当社ではリモートワークを許可しているため、会社へ出社するのが週2日くらいの人がほとんどです。 そうなるとセールスなど出張が高頻度で発生する社員の場合は、郵送対応が必要になります。この場合、宅急便の集荷時間に間に合わず翌日発送となってしまう場合もあり、従業員としては「仕事ができない! 何とかしてくれ」ということになります。こうしたやりとりは従業員の生産性の面からも、私たちの手間の面からも、できることなら減らしたいものです。
塩野:
ユーザ側も管理者側も業務を行うにあたり、常にトラブルが起こる可能性を意識してしまうのがWindows端末です。Macを標準機として採用したことの効果を数字では表すのは難しいですが、このように業務用パソコンを"空気のように""何も心配せずに"使えることがMacの一番良いところだと感じています。
芦辺:
従業員から問い合わせがあるのは、本当に困ったときです。たまに従業員と雑談していると「今のWindows端末は辛い」と嘆く人もいます。つまり、1日1件届く問い合わせは氷山の一角に過ぎず、もしかしたら潜在的に不満を抱えている従業員はもっといて、多くの生産性が犠牲になっているのかもしれません。そのように考えると、Macを使いたい人が普通にMacを選べるようにするのは当然のことですし、また組織としてもMacを標準機として推奨するほうがメリットが大きいと思います。
ちなみに、これまでWindows端末を使っていて「ちょっとMacを触ってみたい」という人に貸与すると、しばらくして「もうMac以外触りたくない!」となるケースがほとんどです。かくいう私もその一人で、以前は開発チームで部材のコストモデルの算出を行う計算機を開発していたのですが、Macに切り替えると開発環境を整えやすくなり、重たいスプレッドシートなどもすぐに開けるので業務効率が爆上がりしました。感覚的には生産性が10倍くらいアップした感じです。ですから、そんな自分自身の経験も踏まえて、Windows端末を使っていて苦しく感じている人には「Macを1回試してみて使いやすかったら使い続ければいいし、使いにくかったらWindows端末に戻せばいいし、何ならWindows端末とMacを2台持っていてもいいですよ」とMacをおすすめしています。
コストメリットにつながるMacのリセールバリューの高さ
芦辺:
生産性の向上やヘルプデスクチケットの削減などを含めて、Macはコストメリットが高いのも魅力です。業務に必要なマシンスペックを揃えて比較しても、MacとWindows端末で端末自体のコストは変わりません。実際に弊社で導入している端末の価格は本当にほぼ同じで、「Macが高い」というイメージは、端末価格に限っていえば幻想でしかありません。
ただ、別の意味で「Macが高い」のは本当です。Macはリセールバリュー(買取価格)に優れていて、たとえば約4年前の型落ちのMacを売却しても5~6万円ほどの値段がつきます。一方、2年前に購入したWindows端末(ThinkPad)は3万円ほどです。同じ価格で購入しているので、トータルで見ればMacのほうが明らかに安くなります。そのため当社では、経理部門からの評価もとても高いです。
塩野:
当社ではMacのMDMとしてJamf Proを導入していますが、Windowsと同じように業務に必要なアプリを自動で一括配布できるなど、管理・運用の手間もWindowsと変わりません。しかも、従業員からの問い合わせの少なさを加味すれば、明らかにMacのほうが管理コストは低いと言えます。今後すべての端末がMacになれば管理面はもっと楽になるとは思いますが、私たちコーポレートIT側でそれを強制して従業員の生産性を犠牲にすることは願っていません。あくまでも従業員各々が一番生産性の高い環境で仕事をしてもらうことがベストだと思っています。
Macの環境構築をトータルにサポートしてくれるのがTooの魅力
芦辺:
当社ではMacをTooさんから購入していますが、Slackで色々相談しながら調達できることにメリットを感じています。また、端末の調達や配備から、MDMによる管理・運用、修理・保守までトータルにサポートしてくれる点も魅力です。また、サポート面では特にMacの修理保証サービス「Tooあんしんパック」が役立っています。Appleの通常の保守サービスでは及ばない物理修理も保証してくれるので安心できますし、実際の修理の際も従業員側からの問い合わせに対応してくれるのでコーポレートIT側に負担がかかりません。
「初めてのMac」をサポートするNotionヘルプページ、選択制は人材確保の面でも有効
塩野:
Macを初めて使う従業員の多くは、Windows端末との違いなどに戸惑うことがあると思います。以前は「はい、どうぞ」とMacを手渡すだけだったのですが、それだと従業員がうまく使いこなせていないと感じることもありました。そのため、Macを標準機として採用するにあたり、Macに関するさまざまな情報をまとめたヘルプページをNotionで作成して改善を図りました。基本的なMacの使い方や初期設定の方法、Macのショートカットキーの使い方やウインドウの整理方法などのTips、困ったときの参照ページなどを記載し、このNotionページを参照すれば快適に業務が行えるようにしています。新入社員のオンボーディングのときにも、もちろんこのNotionページを読んでもらうようにしています。
当社のようなスタートアップ企業とMacは、人材確保の面でも相性が良いと思います。というのも、当社ではベンチャー企業やスタートアップ、外資系企業など、前の会社でMacを使っていたという方が多くジョインされます。そのため、従業員選択制を採用してMacを使える環境を整えておけば、これまでの環境と同じように当社でも業務を行ってもらえます。Window端末だけしか貸与していないと人材の流入経路が限られますが、WindowsもMacもどちらでも使えるようにしておけば、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を確保でき、かつ会社に入ってからも使い慣れたデバイスで100%のパフォーマンスを発揮してもらうことができます。
芦辺:
余談ですが、管理者視点で言うと、コーポレートITとして「イケイケ感」を出せるところもMacを標準機として採用することのメリットかもしれません笑。
ハードワークに耐えるMacこそがビジネスにインパクトをもたらす
芦辺:
業務用パソコンの性能をどこまで重視するかは、企業によって異なります。私はもともと化学メーカーの研究者だったのですが、そのときはパソコンのスペックなど意識したことがありませんでした。主な業務はフラスコを振ったり、ドラフトチャンバーの前に行って水を入れたり、工場に言って プラントが動いているのを確認したりすることだったからです。そうした業務においてはMacは必要ないでしょう。5万円くらいの価格の端末で、環境を統一することできるWindowsで十分だと思います。製造業においても同様の理由でWindows端末が主流になっていると思いますが、当社の場合は、すべての従業員の仕事がパソコンの中にあります。だからこそ、業務用パソコンの性能は非常に重要なのです。
塩野:
当社では、非常に高いパフォーマンスが従業員個々に求められます。セールス1人あたりの売上目標はほかのスタートアップと比べても桁違いに高いこともあり、一人一人の1分1秒がとても貴重なのです。業務用パソコンが壊れたり、スプレッドシートがなかなか開かなかったりして生産性が落ちる環境は望ましくありません。ですから、私たちコーポレートITとしては従業員の作業を止めないことが重要なのです。なぜなら、それがお客様の顧客体験につながり、当社のビジネスの成果にも直結してくるからです。そうした意味においては、当社の業務に最適なパソコンとして、スペック上の数字だけでは表せない、真のハードワークに耐えられるマシンであるMacを選択するのは必然かつ当然なことです。あくまでも従業員一人一人の生産性やユーザビリティにフォーカスしてきた結果が、現在のMacの増加につながっています。
※記載の内容は2024年9月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。