海城中学高等学校様は2017年度より、コンピューター教室のPCをすべてWindowsからMacへと切り替えました。生徒が使用するiMac46台の導入に加え、端末の間にはモニターを多数設置し、必要に応じて各端末の画面が映し出せる仕様です。このMac教室の設備構築、および導入を株式会社Tooが担当いたしました。
教育現場でのMac導入とその効果について、ICT教育部 部長である平田先生(担当教科:理科)と藤井先生(担当教科:情報)にお話を伺いました。
今までできなかったことが難なく可能になるのが、Mac導入の決め手
中高生がより高度なことを習得できる授業を
進学校である同校では、すべての教室にホワイトボードとプロジェクタ、Apple TVを設置し、Wi-Fi環境を整備。また2017年度から試験的に、中学3年生向けにiPadを1人1台導入しています。
平田先生:
2017年夏、コンピューター教室のPCを入れ替えるタイミングで、WindowsからMacに切り替えました。Macに決めたのは今までできなかったことが、難なく可能になるからです。パワーポイントをはじめWordやExcelといった基本的なツールは、小学校で習得する低年齢化が起きています。アドビ社製ソフトウェアを使ってのポスター・チラシ制作や動画編集、Xcodeでのプログラミング学習といった、中高生がより高度なことを習得できる授業構想を元にMacの導入が決まりました。現在、本校では中学3年生がiPadを1人1台使用しており、その親和性も考慮しました。
「Macはカッコイイ」で、授業のモチベーションが上がる
藤井先生:
Macを導入したことで、通常の情報の授業でも生徒らの食いつきが良くなりました。Macに憧れがあり使ってみたくても、生徒自身ではそう簡単に購入できないものです。Mac導入が授業へのモチベーションアップにつながって『俺はMacのエキスパートになる』と話す生徒もいます。Macは操作性が良く、Windows端末からの変更に戸惑うこともなかったようです。ショートカットコマンドの操作など、“カッコイイ”使い方を調べて生徒同士で披露し合っています。高解像度のモニターのデスクトップ画像を変更してカスタマイズするのを楽しみに、定刻よりも早い時間に教室に集まるようになりました。
端末の環境を一元管理することで、自由度の高い操作環境を実現
藤井先生:
デスクトップ画像のカスタマイズなど、環境の変更は自由にさせています。環境復元の仕組みを導入しており、毎時間自動で授業開始前の環境に戻すように設定しているので、次の使用者が困ることはありません。また管理ツール『Jamf Pro』にて、根本の部分で操作制限をしているので、自由な操作環境にも不安がありません。
※Jamf Proによるデバイス管理を実行。(実際の画面とは異なります。)
プログラミング学習を通じて得られるものとは?
コンピューター教室のMacが活用される場面は、通常授業だけではありません。海城中学高等学校様では、2017年度から新たに「KSプロジェクト」という特別講座を開始しました。これは授業の枠に収まりきらない、生徒たちの“つき抜けた”学習意欲や、“とがった”興味や関心に応える場として立ち上げた、選択制の課外講座です。そのひとつとして4月から、通信教育などを展開するZ会の協力のもと「プログラミング講座」を実施しています。
「プログラミング講座」は1学期(4〜7月)に実施された「初心者編」と、2学期(9〜12月)に実施された「発展編」から構成されています。「初心者編」は、週に1回80分の講座を全7回にわたり実施。生徒たちはiPad用アプリ「Swift Playgrounds」を通じてパズル形式の課題を解き、アルゴリズムの基本構造であるForループやWhileループなどの考え方を身につけつつ、終盤にはSwift Playgroundsを使って自身の作品を作り発表しました。
初心者編修了者を対象にした「発展編」では、Appleのソフトウェア総合開発環境「Xcode」とSwiftを使い、iOSアプリ開発に臨みました。生徒たちは、アプリの仕様や画面の動きなどについて学び、最後の約2週間をかけてアプリを開発。成果発表会として、第8回目となる最終授業が11月28日に公開されました。
プログラミングをトライ&エラーで習得
公開授業のはじまる1時間前、授業を終えた生徒たちがiMacの並ぶコンピュータ教室に集まってきました。生徒たちは成果発表前にできる限り制作アプリの改良を進めるべく、慣れた様子でXcodeを操作し、エラーが生じるたびに原因を考え、検証するという工程を積み重ねていました。 分厚いプログラミング言語の教本を活用し、担当講師らから助言をもらいつつ、生徒同士で相談しながらアプリ制作を進める様子が見られました。
「Xcode」(無料のApple統合ソフトウェア開発環境)を使い、プログラミングを行う。
プログラミングへの不安と興味が参加動機に
平田先生:
『ゲームをつくってみたい』『将来に役立ちそう』といった動機で、生徒らは今回のプログラミング講座に応募してきました。中高生がプログラミングに触れる機会はそう多くなく、また自分たちよりも下の世代はプログラミングが必修になるのに、自分たちが知らなくて良いのだろうかという思いもあるようです。今後も生徒たちが新しい取り組みを続けられる機会を継続させたいと思います。
問題をいかに解決するか、プロセスに面白さを見出す生徒たち
生徒らは堂々とした口調で「なぜそのアプリを作ろうと考えたか」「制作のなかで難しかったポイント」「今後の構想」などを説明しつつ、制作したアプリの動きや実装した仕様を紹介しました。構想の豊かさが発揮され、個性あふれるアプリが数多く見られました。
一例として、オセロゲームを制作した生徒は、石(コマ)を裏返すアクションに苦労したと話してくれました。自宅でも制作する時間をとり、他のオセロゲームではどんなアルゴリズム(戦術や戦法を導き出す仕組み)を使っているのかを調べ、自作アプリにも実装したそうです。今後挑戦したいという1人対戦モードについても、「この方法では計算に時間がかかって駄目でした」「こうすれば実装できると思うんです」と構想とともに意気込みを語ってくれました。
プログラミング学習で、主体的に楽しみながら論理思考能力などを発揮
「短期間での生徒の成長に注目してほしい」と事前に話していた平田先生の言葉通り、アプリが完成していなくとも、生徒全員が現段階での仕様以上のことを説明してくれました。プログラミング学習を通じて、目的を明確にして正しい筋道を考える「論理思考能力」や、頭に描いたものを実現させる「創造力と自己実現能力」、さらには自分の頭で考えて試行錯誤し、原因と対応策を突き止める「問題解決能力」を生徒らが発揮している様子が見受けられました。
同校の内田教頭は、最後の講評のなかで、通常カリキュラムでは収まりきれない興味関心や能力を発揮するKSプロジェクトの成功を確信したことを伝え、「我々教員の想像をはるかに超えたことを君たちがやってくれた」と生徒らを讃えました。
成果発表会を見に来た同校の内田教頭にアプリを説明する生徒
海城中学高等学校
海城中学高等学校では、「国家・社会に有為な人材を育成する」という建学の精神のもと、時代に即して具現化したものを教育実践しています。グローバル化が進み価値観が多様化している現代社会、時代に求められる真のリーダーを育成するために、「新しい人間力」と「新しい学力」をバランスよく養う教育を実践しています。
※記載の内容は2017年2月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。