- 医療機関でもモバイル機器の利活用が急速に広まり、その目的は多岐にわたる。
- 明確な利用目的があるニーズに対して、まずはiPad100台を運用。
- 院内/外部ネットワークの切り替えは、都度、対応する構成プロファイルの適用でセキュリティを確保。
- 問診の電子化としてiPadを外来化学療法センターと脳神経外科で活用し情報共有。
- カルテ記載の時間を半分以下に短縮できたという声も挙がっている。
- iPadでオンライン・オフライン問わず、職員全員が利用できる会議システムを提供。
- ゼロタッチ導入の実現で管理者・ユーザー共にキッティングの工数を大幅に削減。
持続可能な高品質の医療サービス実現に向けて、次世代に向けた取り組みをおこなう公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院様。問診のデジタル化やペーパーレスの院内会議を目指し、iPadとApple専用のデバイス管理サービスJamf Proを導入されました。情報システム部門が主体となってゼロタッチ導入を成功され、安定稼働を実現された背景や効果を伺いました。
※その他事例取材にご協力をいただいた皆様
【記事】化学療法センター:看護師 主任 牧瀬様、薬剤師 主任 近藤様/脳神経外科:医師 部長 戸田様/システム管理課:部長 平木様、課長 北山様、井戸様
【撮影】カメラ:経営企画 広報室 主任 今口様/患者役:(脳神経)総務課 市川様、(化学療法)システム課 主任 玉井様
さまざまな職種が連携する医療機関での効率的なiPadの活用方法を模索していた
井戸様:
医療機関は機器産業といっても過言でないほど機器設備が多く、「モノとつながる」時代を迎える中で、モバイルデバイスの利活用が急速に進みました。医師・看護師・放射線技師・薬剤師など、専門性の高いさまざまな職種が互いに協力し合いチームで患者さんの治療に取り組むため、モバイルデバイスの利用方法は多岐に渡ります。
また、昨今の新型コロナウイルスによる感染対策に伴い、会議システムをはじめ院内におけるコミュニケーションも変化せざるを得ない状況となりました。当初は家電量販店で購入した数台のiPadを、MDMなどを使ったシステムによるデバイス管理をせずに使用していましたが、効率的な活用をどう実践するかが課題となりました。
Jamf Proの導入で業務に応じたiPadの管理が叶う
当院には約1,500人の職員が所属していますが、全員にiPadを配布することは経営の観点からも予算上困難でした。また、活用用途が明確でないデバイスは利用頻度が著しく低下してしまいます。コストと必要性を鑑みてまずはiPad 100台を導入し、Jamf Proで用途に応じて設定を切り替えながら職員に貸し出すことになりました。限られた台数のiPadを効率的に活用するために、システムを柔軟に管理できるJamf Proは有効でしたし、Apple製品と親和性が高い点も導入を決めた理由の一つです。
インターネット環境の使い分けでセキュリティ対策も万全
iPadの主な活用方法は「患者さん問診用」「会議用」の2パターンです。医療機関内に存在する医療情報システムは、個人の持ち込みデバイス(Bring Your Own Device)とは明確に切り分けることが厚生労働省のガイドラインで明記されています。外部インターネット通信ができない院内限定のシステムが数多く存在するため、「患者さん問診用」は院内サーバへの接続が、「会議用」は外部インターネット接続可の設定がそれぞれ必要です。
これらの設定のために、Jamf Proで、院内専用ネットワークと職員用外部ネットワークの構成プロファイルを作成しました。また、Jamf Setupを使うことで、職員がどのような目的で使いたいのかを明確に意思表示することで環境を切り替えることができます。例えば、院内アプリを使いたい時はJamf Setupでその用途を選択することで、必要な院内ネットワークにすぐにアクセスすることができます。このように、Jamf ProとJamf Setupによって必要に応じた環境を素早く提供することができました。
また、iPadを貸し出した際に万が一紛失してしまったり、こちらが想定しない利用方法がとられてしまった場合は、Jamf Proからの制限が可能です。iPadのデバイス情報をApple Business Managerに登録しておけば、アプリからデバイス情報まで連携できます。
問診の電子化で多職種への情報共有もスムーズ
患者さんに対する問診への活用は、現時点では外来化学療法センターと脳神経外科でおこなわれています。外来化学療法センターで看護師が問診した結果は、iPadに入力され問診システムを利用して電子カルテへ送信されて、職員に情報が共有されます。iPadデバイス内には患者データは保存しない仕様のため、セキュリティの観点でも安心です。現場の看護師からは、リアルタイムに記録できるようになったことで、カルテ記載にかかっていた時間を半分以下に短縮できたという声も挙がっています。
これらの部署では、薬剤師が薬剤をチェックする際にもiPadを活用しています。携帯性が良くベッドサイドに持ち込めるため、より患者参画型で副作用をモニタリングできます。将来的には患者さんによる操作も検討しています。
また、当院の脳神経外科は「ふるえ」に対する治療を得意としていますが、Apple Pencilを使ってiPadに絵を描いてもらうことで、手のふるえに関する臨床的評価尺度を電子カルテに記録することもできます。
会議でのiPad活用で資料のペーパーレス化を実現
会議での活用に関して、当院ではさまざまな院内会議がおこなわれています。iPadを導入することで、職種を問わず職員全員が利用できる会議システムの環境を提供することができています。例えばオンライン開催の場合は、iPadを配布してZoomで会議を実施しています。リアル開催の場合は参加者にiPadを配布し、クラウドストレージにアップロードした会議資料をQRコードを通じてダウンロードしてもらうことで、資料のペーパーレス化も実現できました。
Jamf Proによるゼロタッチ導入の実現で管理者・ユーザー共にキッティングの工数を大幅に削減
Jamf Proの導入で、職員それぞれの用途に応じた環境を迅速に提供することが可能となり、デバイスの利用率を最大限に向上させることができました。さらに、従来は各部署が個別購入していたiPadをTooさんから一括導入することで、デバイス導入管理画面のApple Business Managerへの登録を自動でおこなうゼロタッチ導入を実現しました。これによって、管理者とユーザーがセットアップにかける工数を大幅に軽減できました。
現場で実際にiPadを使う医師や看護師からも、ポジティブな意見が出ています。従来はすべてノートパソコンやデスクトップPCでしたが、iPadで電子カルテの入力ができるようになったことで、場所にとらわれず作業が可能になりました。
iPadのさらなる活用で院内コミュニケーションを促進したい
平木様:
医療機関においても情報端末を活用した顧客サービスの向上と業務効率化への取り組みが進んでいますが、当院では各部署が個別にデバイスを調達することが増えていました。そのような中で、Apple製品の取り扱いに慣れているTooさんから一括して調達することで、管理工数の削減が実現できました。院内ではまだまだ紙による運用が残っていますが、今後はiPadの良さを活かして情報入力の支援を図るとともに、院内のコミュニケーション促進などにも活用していきたいと考えています。
TEL:06-6312-1221(代表) ウェブサイト
※記載の内容は2022年5月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。