日本体育大学柏高等学校様は、ICT教育の一環として、2012年から一部のコースでiPadの導入を進められました。
2017年4月をむかえ全校生徒と教職員全員に1人1台のiPadが実現されました。
また新校舎建設の際に全館Wi-Fi完備、教室へのApple TVの設置も完了。ICT教育への取り組みや、授業でのiPad活用、約1500台もの端末管理についてお話を伺いました。
各教科でのiPad 活用方法は?
熊井先生(物理):
全員の意見を集めることができるので、机間巡視の補助として使っています。
また発問に対して「わかったらiPadで回答して」と指示することで、挙手よりも全員が考えざるを得ない環境がつくれます。これを、授業態度を評価する際の参考にしています。
実験では、生徒たちに動画を撮らせます。その場で考えることも大切ですが、自分がやった実験の動画を見返すことは復習に役立ちます。友達同士で動画を見ながら議論ができるのも、iPadの良い点です。
福田先生(国語):
現代文では、題材を取り扱う前に関連テーマの調べ学習をして、題材に親しみを持てるような工夫をしています。古文や漢文では、作品の歴史的な背景を調べます。iPadによって、画像や映像の情報も得られますし、調べ学習をして内容を発表することが気軽になったと感じています。
酒巻先生(数学、情報):
数学では、黒板をiPad で撮影し、手元のメモと合わせて後で内容をまとめる学習方法を勧めています。問題を解くこと、解説を聴くことに集中してもらうためです。ただ板書を写すよりも理解が深まり、記述問題にもよく対応できるようになりました。
情報の授業では、iPadを使って生徒が表現する機会を増やしています。アプリケーションは指定せず、自由にプレゼン資料を作成しています。
2015年に新設した校舎は明るく開放的で、教室の大きなガラス窓から光が差し込む。各教室にApple TVとスクリーン、アクセスポイントが設置され、iPad利用を前提としたICT仕様となっている。
iPad導入による変化、生徒が発信する機会の増加
酒巻先生:
導入の効果として、教員側の作業時間のカットが挙げられます。2クラス分だと80 枚、3クラス分だと120枚の印刷物を出力して、持ち運んで、配布する手間が減りました。
私は、宿題も写真データで提出させています。提出期限後に解答データを渡せば、生徒がそのまま答え合わせや復習に使用できるからです。
紙を提出させると、その日に採点して返却しないとなりませんが、データ提出なら、すぐに復習したい生徒と時間の融通が難しい教員の双方の希望を叶えられます。
熊井先生:
iPad導入によってプレゼンテーションの機会が増えました。
人前に自分が作成したものを出す、その恐怖心を超えたとき生徒がすごく成長することを実感します。抽象的な正解のない質問を投げかけて、考えて、発表する、そういった機会が格段に増え、その効果には手応えがあります。
福田先生:
インプットだけの授業ではなく、創造的にアクティブに情報を発信していく人材の育成を目指したとき、iPad は非常に有用なツールだと思います。プレゼンテーションひとつをとっても、音声や映像が使えて、加工もできる。机上に置いて使えるサイズがちょうど良くて、パソコンとも違うのですが、コミュニケーションによって新しいものが生まれます。まさに創発ですよね。自分自身iPadを使ってみて、率直に「これ、すごいな。」と感じました。今後、学びのスタイルも変化する中で、自分の授業も変わっていくのだと思います。
iPad配布風景。MDMにより事前に設定された内容がインストールされる。生徒自らiPadセットアップを実施しており、ここにDEPが一役買っている。
授業のアクセントとなるiPad
酒巻先生:
iPad の利用に悩んでいる先生には、iPadを50分の授業内で常に使わなければと考えている方が多い印象です。折角iPadを導入したので、沢山使いたいという気持ちはわかりますが、タブレット端末を“使用すること” が先行するのは本来の目的と違います。
授業中に1分の作業が4~5回積み重なるだけで良いと思います。その5分によって授業の質が高まったり、作業時間が短縮できることで、これまで時間切れだった内容に踏み込めたりします。
iPadをアクセント的に使うことで、これまで培ってきた授業が一層引き立つ、そんな使い方ができると思います。
生徒のiPad活用
- 授業でわからない言葉があったときに、調べるのに使っています。中学校では紙の辞書を使っていましたが、iPadはすぐに調べられるので授業のスピードについていけるのが良いです。何冊も辞書を持ち歩かなくて済むのも嬉しい です。
- ちょっとした単語を調べるときは、iOS標準で付いている辞書機能もよく活用しています。
- 理科部では、実験の際にはカメラ機能で動画を撮影しています。後でモニターに接続して、みんなで動画を見ながら、どこが良かったのか、悪かったのかを考察します。動画を見ても原因がわからなかったら、その場でインターネットを使って調べるときもあります。みんなで撮った動画を1つの iPadに集約して、パワーポイントに動画をつけて、 活動発表にも使いました。
- テスト対策などのプリントは、アプリを通じて各自に送られてきます。紙のプリントが配布されることもありますが、カメラで写真を撮って保存しているので、プリントを持ち歩かなくて良いのが軽くて便利です。
- これまで最新機器に触れることがなくて、最初はどうすれば良いのか戸惑うこともありましたが、自然と覚えました。前と比べて、やりたいことが思い通りに操作できるようになりました。
- スクリーンショットの撮り方など、わからない操作方法は友達に教えてもらいました。
- タイピングが速くなりました!先生に「キーボード入力に慣れておいたほうがよいよ」と言われたので、携帯で手慣れたフリック入力ではなく、キーボード入力を選択しています。
興味を持つきっかけに
- 授業中、先生の画面が配信されることがあるのですが、「集中せざるをえない」と感じます。それに手元の iPadは黒板よりも近くて見やすいので、授業に集中できます。
- 生物学に苦手意識があったのですが、「ミトコンドリア」の画像を検索したことがきっかけで、他にもいろいろ画像検索してみたくなり、苦手意識がなくなりました。
- 画面共有で、クラスのみんなの考えを知ることができるのが良いです。
- 英作文の課題が出たとき、先生がクラス全員の答えを共有してくれます。クラスメイトが自分の知らなかった表現を使っているのを見ると、次は自分も使ってみようと思い、勉強になります。
導入後の管理・運用
酒巻先生:
教育関連の展示会でTooと出会ったのは、1学年分460台のiPadの導入後でした。当時、学校としては2年間で保証が切れてしまうのは困ると感じていたので、Too独自の3年間の修理保証サービスに強く惹かれました。
最初は保証対応だけ依頼するつもりでしたが、最終的には2年目以降の機材導入もすべてお任せすることにしました。AppleのDEPへの対応がどこよりも早かったこと、MDM製品のJamf Proが魅力的だったこと、さらに一社完結で導入から運用、保守まで対応してもらえることも決め手になりました。複数の企業とやりとりしていると、後々、業務の引継ぎが煩雑になることを見越してです。
今後は、ICT 運用にも生徒の声を反映
酒巻先生:
生徒が使用するアプリはJamf Proで制限しています。最初はこちらで指定したアプリだけが端末に入っている、スモールスタートとなりました。ただ「使いたいアプリが使えないこともある」のが、生徒たちにとっては、現状ストレスかと思います。
「生徒がどう使っていきたいのか」、その声を吸い上げ機会を設けるべく、生徒たちの委員会活動として「ICT委員会」を立ち上げました。各クラス1人位ずつ集まって、学年ごとの運用を考えます。学年ごとにを運用を変えたいので、教員側は大変ですが、その方が生徒たちの意見が踏襲されて形になるならば良いかと考えています。
日本体育大学柏高等学校
日本体育大学柏高等学校は、2016年4月より校名を刷新。「健康と信用は最高の宝」を掲げ、グローバルに活躍する人材、また、未来の日本代表選手の育成に取り組まれています。全国レベルでの部活動の活躍に加えて、文武両道を掲げ、ICTを駆使した最先端の教育を行っています。
※記載の内容は2017年4月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。