働き方の多様性を重んじるサイボウズ株式会社様ではパソコンの「従業員選択制」を導入し、標準機として採用する最新世代の「M1 Mac」をApple専用の端末管理サービスJamf Proによって管理しています。企業における効率的なMac管理の手法と情報システム部門の新しいカタチを、代表取締役社長 青野慶久様、情報システム部 青木哲朗様、ビジネスマーケティング本部 プロダクトブランディングチーム 吉原寿樹様に伺いました。
従業員選択制のメリットとM1 Macが企業に最適な理由
情シスのミッションと従業員選択制
「kintone」や「サイボウズ Office」、「Garoon」といったクラウドベースのグループウェアや業務改善サービスを提供し、会社そして社会のチームワーク向上を支援するサイボウズは、従業員の多様な働き方をサポートする先進的な人事制度を採用することでも広く知られています。
離職率が28%と過去最高を記録した2005年以降、組織のさまざまな制度を見直すことでワークスタイルの変革を図り、2018年からは従業員一人ひとりが働き方を自由に決定できる「働き方宣言制度」を導入。「100人いたら100通りの働き方」を実践しています。
また、多様な働き方を支援する取り組みの1つとして、サイボウズではパソコンや、マウス・キーボードなどの周辺機器を従業員が選択できる「従業員選択制」(Employee Choice)も採用しています。一般的な日本の企業ではWindows PCが標準端末として用いられる中、サイボウズでは従業員の望む環境を整えることが、生産性や幸福度、ロイヤリティ、企業の成長などにつながると考え、Macも選択肢の1つとして採り入れています。
Macも加えることはプラットフォームがもう1つ増えることになり、企業によっては特に端末管理やセキュリティの面から導入に二の足を踏みがちです。しかし、サイボウズの情報システム部では従業員選択制を歓迎しています。同社情報システム部で業務用クライアントデバイスやアカウント管理、ヘルプデスクを担当する青木哲朗様は次のように語ります。
「Macがいい人もいれば、Windows PCがいい人もいるでしょうし、軽いパソコンやタッチパネルPCを好む人もいるでしょう。業務内容や働き方、好みによってチョイスは変わると思うので、従業員が使いやすいパソコンを選べるのは素晴らしい制度だと思います。仕事で使うパソコンは私たちが選ぶのではなく、社員の方が選ぶべきです」
M1 Macは業務マシンに最適
現在、サイボウズ国内で導入している業務用パソコンは全2,500台で、そのうちMacは約700台。今年の新入社員30人のうち29名がMacを選択し、既存社員も年20~30人ほどMacへ切り替えるなど、年々Macの利用者は増えています。また、2021年3月からはAppleが自社開発したSoC(システムオンチップ)「M1」を搭載した最新世代のMac(以下、M1 Mac)のMacBook Pro 13インチを標準端末として採用しています。
青木様:
「Macがビジネスに使えないと思ったことはありません。最近はクラウドサービスを使うことが多いでしょうから、デバイスは何でもいいと思います。中にはWindows PCでないと動かないアプリもあるのでしょうが、当社ではごく一部です。また、M1 Macは同じ値段のWindowsマシンと比べてもサクサク動き、バッテリーの持ちもよいので、非常にコスパに優れたデバイスだと思います。」
しかも、サイボウズではM1 Macのメモリを標準の8GBから16GBへとアップグレード。従業員に最高の環境で仕事をしてもらえるようスペックの高いマシンを使ってもらいたいという思いからです。また、エンジニアなどより画面の大きなMacを好む場合は16インチのIntel MacBook Pro(メモリ32GB、ストレージ512GB)を、デスクトップマシンを好む場合はiMacも配付しています。そのほか、Windows PCとしてはパナソニックの「Let's Note」やマイクロソフトの「Surface」、Dellの「Latitude」&「Optiplex」なども用意。実に幅広いラインアップを揃えます。ここまで従業員に対して、手厚くサポートするのはなぜなのでしょうか?
青木様:
「当社の情報システム部では『誰でも、いつでも、どこでも、最高の仕事ができる情報システムを作る』をミッションに掲げています。一人ひとりが最高の仕事のパフォーマンスを発揮できるように支えることが私達の仕事なのです。」
企業におけるMac管理とJamf Pro導入の効果
ゼロタッチ導入の破壊力
Macを企業導入するうえでは「管理が難しそう」というイメージが今でもつきまといます。また、Macに不慣れな企業であれば管理・運用スキルの習得や、慣れない管理ゆえのセキュリティリスクなども不安材料に挙がるでしょう。そこでサイボウズの情報システム部にMacの管理は大変なのか?と尋ねてみたところ意外な答えが返ってきました。
青木様:
「もちろん、Mac導入当初はいろいろと勉強しましたが、私個人の見解では、Windows PC同等またはそれ以上にMacの管理は楽だと思っています。特に昨年からMac用のMDMとしてJamf Proを使い始めてからは管理が大変楽になりました。」
特に効果的だったと語るのは、Jamf Proによる「ゼロタッチ導入」の実現です。企業において大量のパソコンを導入する際は会社のポリシーに準じてそれぞれの端末に必要な設定やアプリのインストールなどをおこなう必要がありますが、端末が多くなればなるほど、開封作業や設定には時間がかかり、情報システム部の大きな負担となります。そうした初期設定の手間を大幅に軽減してくれるのがゼロタッチ導入という仕組みです。
青木様:
「あらかじめJamf Proで構成プロファイルなどの設定を作成しておくだけで済むので非常に簡単です。あとは、パッケージを開封していないMacを箱のまま従業員に渡すだけ。従業員が開封してネットワークに接続された瞬間に必要な設定が自動で端末に適用されてJamf Proの管理化に入るので本当に手間いらずです。」
また、同社代表取締役社長の青野慶久様は経営者の立場からゼロタッチ導入に関して次のように語ります。
青野様:
「私もMacを使っていますが、これまでは情報システム部に迷惑をかけているかもしれないという後ろめたさのようなものがありました。ビジネスではWindows PCが標準なので、Windowsのほうが管理ツールも揃っているだろうから申し訳ないと。ところが、Jamf Proを使い始めたことで、Appleデバイスでも普通に端末のキッティングや日々の運用管理をおこなえることがわかり、とても安心しました。」
サイボウズでは、以前はMDMを使って構成プロファイルの自動化はおこなっていたものの、ディスクの暗号化やアプリのインストールは手動でおこなっていたため、Jamf Proを使ってそこも自動化できたことで圧倒的に便利になったと言います。構成プロファイルの作成に関しては、ディスクの暗号化やネットワークの制限、パスコードの設定など最低限の設定をおこなうだけで、従業員の自由度を妨げるような厳しい設定はしていません。また、アプリの配付に関しては、Micirosoft OfficeやZoom、セキュリティソフトなどの全社共通のアプリはJamf Proで一括インストールし、パスワード管理ソフトやVPNソフトなどの社で認めたアプリに関しては、企業専用のApp Storeを作成できるJamf Proの「Self Service」を使って必要に応じて従業員にダウンロードして使ってもらっています。
MacはApple専用のMDMで
現在、サイボウズではMacはJamf Proで、Windows PCは「Microsoft Intune」で、プラットフォームごとに別々のMDMを使って端末管理をおこなっています。従来はWindows PCもMacも、iPhoneも、Androidも管理できる統合型のMDMを使っていたそうですが、それぞれのプラットフォーム専用のMDMで別々に管理したほうが楽だと言います。
青木様:
「1つのMDMで管理したとしても、結局はWindows PC用、Mac用と2つの設定を作らないといけませんので、管理工数や手間はそれぞれ別々のMDMで管理していても変わりません。よって、それぞれよりスムースに使える最適なMDMを選んだほうがいいと思います。」
Macの場合はOSのアップデートが頻繁にあるため、以前のMDMだとアップデート後に期待した動作をしないことがあったそうです。その点、Jamf ProはAppleデバイス専用のMDMとして高いシェアを誇り、OSアップデート時に同日サポートするため安心して使えます。また、Jamf Proは独自の「Jamfエージェント」と呼ばれる機能によって、一般的なMDMでは対応していないシステムレベルのタスクを実行できるなど、きめ細かな管理ができることも強みだと語ります。
青木様:
「たとえば、設定やアプリを端末に送り込むときに、管理者が意図したタイミングや頻度で繰り返しできたり、『スマートグループ』という機能で端末を柔軟にグルーピングできたり、本当にかゆいところに手が届く設定が充実しています。」
サイボウズではMacやJamf ProをTooから導入しています。Apple正規取扱店(Apple Value Added Reseller)として、Apple製品の組織導入に対応した管理運用・修理保守に関する多彩なサービスプログラムを展開するTooを選定した理由をお答えいただきました。
「TooさんはApple製品に関する知識や情報に非常に長けていて、Macのみならず、Jamf Proなどのソリューションを一度に導入できるのでとても便利です。また、経験豊富なエンジニアの方と気軽に相談でき、たとえばMacの故障やトラブル時にもレスポンス早く対応してもらえます。特にToo独自の修理保証サービス『Tooあんしんパック』は助かっています。在宅ワークが増えたことで自宅でMacに水をこぼしてしまう従業員が増えたのですが、通常のAppleのサポートでは認められないユーザーによる過失にも修理保証してくれます。」
サイボウズの情シスが「愛されまくる」理由
ワガママを聞いてくれてありがとう
このようにしてMacの管理が楽になったことで新たに生まれた時間を、サイボウズの情報システム部では、パソコンのセットアップ以外の従業員からのリクエストに費すようにしています。なぜなら、情報システム部の役割はパソコンのセットアップではなく、従業員のパフォーマンスひいては企業の経営に大きな影響を与える重要な役割を担っていることを自覚しているからです。
青木様:
「バックオフィス部門にはお金をかけない企業も多いと思います。しかし、当社ではバックオフィス部門も会社を支える大事なビジネスインフラとして捉え、社長を含む経営陣と合意して戦略的に投資をおこなっています。情報システム部だけでなく、人事などのほかのバックオフィス部門が先進的な事例としてメディアで取り上げられることが多いのは、そうしたバックボーンがあるからこそなんです。」
青野様によると、サイボウズでは「情報システム部門の在り方」が一般的な企業とは大きく異なると言います。
青野様:
「一般的に情報システム部は、規制して統制することが仕事だと考えられていますよね。ITトラブルが生じるとリスクにつながるのでルールを策定して、従業員に与えて管理するといったように。犬を犬小屋に鎖でつないでおくようなイメージです。その一方で、当社の場合は『放牧』です。柵はとりあえず作ったので、あとはご自由にしてくださいというスタンスで、どんどんと柵は広がっていく。だから、従業員からの『愛され度』が違うんです。」
サイボウズでは毎年年末にその年にお世話になった人やチームを投票して上位者を表彰する「サイボウズオブザイヤー」を開催しています。このイベントで、情報システム部はほぼ毎年のように表彰されると言います。
情報システム部が愛される存在であることは、こんな従業員のコメントからも感じ取れます。
吉原様:
「情報システム部に対しては、そんなにワガママを聞いて大丈夫なのかとたまに心配になるくらいです(笑)。従業員選択制でパソコンを選べることだって、管理する立場としてはOSや機種が統一されていたほうが楽なはずなのに。また、パソコンのアダプタのようなアクセサリ類だって頼めば本当にすぐに貸してくれるなど、とにかくレスポンスが早いのです。情報システム部の在り方は、働き方に本当に直結していることがわかります。」
青木様によると、たとえば在宅勤務で利用するヘッドセットやイヤフォンが欲しいというリクエストがあれば、kintoneからリクエストを受けつけたあと2~3日ですぐに手配するようしているそうです。自ら掲げたミッションを忠実に遂行し、決して簡単ではない「100人いたら100通りの働き方」をサポートして従業員が働きやすい環境で働けているからこそ、年末には「自分の好き勝手をさせてくれてありがとう!」といった感謝が返ってくるのです。
現在の企業活動において、ITはどんな職場にでも必要不可欠なもの。従業員すべてがお世話になっているからこそ、「それはだめ、これもできない」が常套句となりがちな"嫌われもの"ではなく、サイボウズのように"愛されまくる"ことが、これからの情シスの新しいカタチと言えそうです。
※記載の内容は2021年9月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。