- 生徒が能動的に授業に参加できる環境を作るためiPadを導入。
- 突出したアクセシビリティの高さでiPad一択となった
- 新製品の名前を決める授業では、アイデアが50種類以上も出され、自分自身も驚いた。
- iPadの自発的な活用を浸透させるためにも、各家庭への持ち帰りを推奨。
- Tooに一貫したサポートで、一番負担がかかるシステムの維持の課題を解決。
北海道札幌高等養護学校様は、手稲山を見上げる自然豊かな場所に位置し、知的障がいのある生徒の職業自立と社会自立に必要な力を日々の授業で育まれています。3年間を通じて自学科の作業に継続的、発展的に取り組み、繰り返しと積み重ねの指導を重視した学習を展開されています。今回は、生徒が能動的に参加できる授業を実現するために、1人1台のiPadを導入されました。導入の経緯や効果を、齋藤誠士先生に伺いました。
iPadの1人1台導入で視覚情報を有効に活用する
知的高等部の生徒の指導の他、校内ネットワークや、ICT機器の導入・運用を担当しています。生徒1人1台のiPad導入の目的は、生徒が能動的に授業に参加できる環境を作るためでした。知的障害や発達障害のある生徒にとって、目から入る情報の活用は非常に有効な手段です。例えば、授業で必要な作業の工程を動画で届けることによって、つまずいたところを生徒のタイミングで再生・停止して重点的に確認でき、質問することに抵抗がある生徒も、まずは自分で調べるという選択肢が生まれます。
アクセシビリティの高さからiPad一択
iPadを選んだ理由の1つは特別支援教育との親和性が高い点で、アクセシビリティの面で他社製のデバイスを圧倒していると思います。私の担当クラスでは、読み上げ機能がよく活用されています。今まではわからない漢字を読み飛ばす生徒もいましたが、音声でその場で確認できるようになりました。また、縦書きも簡単に設定が可能なので、さまざまな授業でスムーズに使うことができます。さらに教育アプリも充実しているのがありがたいです。
Apple製品はハードウェアとOSを自社開発しているため安定性も非常に優れており、動作も速く操作において余計な迷いが生じません。また、特別支援学校で学んでいる生徒向けの就学奨励費の範囲に収まる価格帯でありながら、性能も十分なため非常に満足しています。これらの理由から、iPadの導入となりました。
iPadを文房具と同じように当たり前のツールとして活用
生徒たちには、iPadは文房具だと伝えています。芸術や作業学習など、活用が進んでいる授業が増えています。導入当初は「iPadを忘れずに持ってきてください」とアナウンスが必要でしたが、最近では授業で使うことが当たり前になったことで、都度連絡する必要もなくなりました。
先日の授業では、生徒たちが授業で作った新製品の名前決めをiPad上でおこないました。オンライン模造紙のようなアプリを使い、それぞれの意見を書き込んでもらいました。挙手して発言できない生徒も、iPadなら自分のペースで意見を書き込むことができます。コロナウイルスの影響で、対面での意見交換が難しいタイミングでしたが、iPad上なら感染リスクも気になりません。アイデアが50種類以上も出され、私自身も驚きました。
全校集会や学園祭にもiPadを活用しています。全校集会では、感染対策のため一部の学生は体育館で、その他は教室からオンラインで参加してもらいます。映像配信スイッチャーのATEMも導入し、配信する映像を切り替えながら、よりリアルな情報を伝える工夫もしています。学校祭では、ステージ演目とiPadで作った動画を切り替え、保護者にオンラインで見てもらいました。
家庭への持ち帰りを推進。万が一の故障も「Tooあんしんパック」でサポート
最近は授業以外での活用も増え、お絵描きアプリで描いた絵をイラストコンテストに応募している生徒もいます。運動部では、プレーの様子を映像で録画することもあります。口頭で説明するよりもイメージを掴みやすいですし、気軽にプロと同じようなトレーニングができます。また、Adobe Illustratorの使い方をYouTubeの動画で勉強している生徒もいます。
iPadの自発的な活用を浸透させるためにも、本校では各家庭への持ち帰りを推奨しています。その分壊れる可能性も上がりますが、iPadが故障した際は、デバイスが手元にない状態が続くため授業が成り立たなくなったり、修理費が高額になることが心配でした。その対策として、保証サービス「Tooあんしんパック」を付帯しました。今年度すでに複数台のiPadを修理に出していますが、画面割れなどの物損故障も保証内な上、専用窓口やピック&デリバリーで対応してもらう体制がとてもわかりやすいです。学びを止めないためにも、加入すべきサービスだと思います。
属人化から脱却し持続可能な校内のICT環境を構築
本校にはICT専門の支援員は所属していません。モノが買えたとしても、一番負担がかかるシステムの維持に課題がありました。また、デバイスの購入を各家庭に任せてしまうと、学習環境を揃えることは難しくなります。他社製のタブレットが混在したり、同じiPadでもOSやバージョンが異なれば、授業を円滑に進めることはできません。授業のインフラ部分の課題を解決しながら、一貫でサポートしてもらえる会社を探していたところ、Tooさんを知りました。
iPad 137台の運用に関しては、Apple専用のデバイス管理サービスである「Jamf Pro」での管理を提案してもらいました。Jamf Proの導入後は、アプリのインストールやOSのアップデートを1台ずつ対応する必要もなくなり、セットアップにかかる時間をかなり削減できました。また、iPad導入やJamf Proの環境構築だけでなく、最適な周辺機器やアクセサリについてもTooさんに相談できたので大変助かりました。ICTに関する業務を属人化させることなく、持続可能な運用を目指してさらに体制を強化していきたいです。
ICTの活用で生徒が主体的に授業に参加できる体制をつくる
今後は、iPadの家庭の持ち帰りをさらに推進したいです。学校を休みがちな生徒もいますが、朝と帰りのホームルームにビデオ通話をするだけでも、学校とのつながりを感じられます。こうした積み重ねで教室に入れるようになり、クラスで打ち解けられるようになった生徒もいます。また、保護者に生徒の学校の様子を伝える機会も増やせると思います。例えば、芸術の時間に作った作品を家に持って帰るときに、他の生徒からの感想やコメントをiPad上に集めておくことで、「うちの子は周りからこんな評価をされていたのか」と新たな側面を見てもらえます。
また、Apple TVの導入も検討しています。iPadの画面をシームレスにモニターに映すことができるので、生徒の意見にリアクションしやすくなり、考えを引出しやすくなるのではないかと期待しています。ツールを活用して、教員が生徒に教え込むのではなく、生徒が主体的に学ぶ環境を作っていきたいです。
※記載の内容は2022年10月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。