クラーク記念国際高等学校様では、ICT教育の一環として2018年より全国で1人1台のiPadを使った学習を実践されています。生徒が利用するiPadは各家庭で購入してもらいますが、特定のキャンパスでは、端末管理ソフトウェアJamf ProとAppleのDEP※によって、iPadの端末設定や授業で使用するアプリのインストールなどを、学校側でコントロールできるように環境構築しました。ICT教育への取り組みを推進した、大阪梅田キャンパス長の阿部先生にお話を伺いました。
※ Device Enrollment Program(DEP):Apple が提供するデバイス管理システムへの登録サービス。
なぜiPad か? 生徒が気軽に触れることが最重要
ICT教育の目的は、生徒が主体的に学習に取り組むこと。まず生徒が興味を持ち触りたいと思うようなツールであることが重要です。
2016年に300〜400台のタブレットPCを導入しました。いずれは全国展開することを見越して試験的に特定のキャンパスに振り分けました。しかし上がってくる事例は動画を見せるなどの、ツールを使うことが目的になり、本来のICT教育とは違うものとなっていました。生徒にとっての課題も次第に見えてきており、タブレットPCはあくまでPCと認識していて、気軽に使いこなすにはハードルが高いものでした。
まず、そこからツールを見直しました。高校生にとって気軽なものならiPhoneです。iPadはその延長線上なので説明不要で使えます。一方で「iPadではWordやExcelが使えないじゃないか」といった声もありました。確かに情報活用スキルも大切ですが、それは学校所有のノートPCでやればいい。どんなにいいアプリを導入しても生徒が触らない限り意味のないものになってしまう。
何より入り口を整えることが重要だと考えました。我々視点で考えてはいけない、生徒の視点にならないとICT教育は成功しないと考えました。
学校側で端末を一括購入するリスク
いざ1人1台iPadを導入すると決定したのが2016年9月頃。当初は、学校が一括購入したものを生徒に購入してもらう形を考えていました。ただ弊校は通信制という特色もあり、年度途中からの転入生もいます。すると、ある程度の在庫を抱える必要が出てきます。さらに代金の回収や在庫管理等のリスクを計算すると一人あたりの負担額が大きくなり、一括購入は現実的ではないという結論になりました。まず1年目は首都圏先行で、生徒に端末を指定して各自で購入してもらうことになりました。
自由度の高いiPad 活用のためにJamf Pro を導入
2018年4月のiPad導入に向けて、いよいよ大阪梅田キャンパスではどうしようか本格的に検討をはじめました。その際に、アプリやツール活用も含めて、こんな使い方をしたいと活発に議論されている様子を見て、導入後には「100円のアプリを一斉に入れたいんですけど」「生徒のiPadにインストールされた状態で授業したいのですが、どうすれば?」といった相談がくるだろうと想定しました。iTunesカードを配って、全生徒同時にアプリをインストールするのが現実的なのか、と考えたときに難しいと。環境を整える先生方の「これを使いたい」という声や発想を形にすることが先だと考え、それがJamf Pro(MDM)を導入するきっかけになりました。
忙しい合間に、アプリのインストールに労力がかかったら誰もが敬遠してしまいます。管理ツールは必要ないという声もありましたが、私も制御するつもりはなく、もっと自由にアプリをインストールし、iPadを気軽に活用するために導入を進めました。
端末導入の煩わしさをToo のワンストップ体制で解消
Jamf Proの導入とあわせて学生向けの販売窓口をTooに依頼しました。我々は案内カタログを渡して、そこから購入するよう案内するだけです。以前は保護者の方が、アップルストアから学校に電話で問い合わせてくることもありました。購入するモデルは最低限のスペックだけ学校からTooに指定し、他はご家庭の判断にお任せして自由に選択してもらうようにしています。実際iPad Air2やiPadProを使っている生徒もいます。ご家庭には、学校の授業で使うだけなら高スペックでなくても問題ありません、と説明しています。
年度始めの忙しい中、DEPのおかげで、iPadが設定された状態で手元に納品されたのは本当にスムーズでした。必要なアプリはインストール済み、初期化してもその状態に戻ります。無線LAN設定も完了していて、生徒たちにパスワードを知らせることなく学校のWi-Fiに繋げられます。すでに何件か「Apple IDがわかりません」「パスワードがわからず初期化します」という話があり、Jamf Proがなければ対応も大変だったろうと実感しています。
より柔軟にiPad を使える環境にしていきたい
導入時は、まず形がないと始めづらいので指定アプリを決めました。「Brushup(ブラッシュアップ)」「Evernote(エバーノート)」「schoolTakt(スクールタクト)」の3つです。新しいアプリ、便利なツールは次々生まれてくるので、現在使っているものに固執する必要はありません。今後はもっと、各キャンパスで使いたいアプリを導入してほしいし、先生も含めて柔軟にiPadを使えるといいと考えています。
Tooには状況に応じて対応してもらい、率直にやりやすいです。ひとつの話だけでなく広範囲に取り組んでくれるのが、長くお付き合いしたいと感じる点です。MacBookやAdobeソフトウェアの活用など、我々がこれから展開したい分野にも相談できる要素が多いと感じています。
iPad をあたり前に使う感覚が大切
新入生がiPadを使うとき「あたり前」という感覚が一番大切だと思います。教科書や制服をなぜ購入するのか、とはあまり言いません。iPadも何年かすればそうなると思います。教科書と一緒にiPadは持っていくものであると。はじめは強制力が必要かもしれませんが、そこから徐々に生み出していくのだと思います。新しいことだと捉えると手間に感じます。そうではなく、あたり前の習慣になることがICT教育を進める上で必要だと思います。
生徒のiPad活用
- 学校では周りの子の見よう見まねで触るうちに操作に慣れました。高校までApple製品に触れたことがなく、ちゃんと学校で活用できるのかなという不安がありましたが、いまはスマホより使っています。
- 触っていたら自然といじれるようになりました。特にAirDropを知ったときは、すごく便利だなぁと感動しました。
- 親と相談しながら決めました。すごく悩みましたがベーシックなやつがいいかなと思って、それを選びました。
- 親任せにして、いま少し後悔しています(笑)。ボディの色が本当はグレーがよかったのと、iPad Proにしてタッチペンが使えるようにすればよかったなぁ、と。購入時にしっかり考えておけば良かったと思いました。
- 「使いやすいように選んでいいよ」と親に言ってもらったので、写真や動画、音楽データが増えることを見越して大容量のものにしました。実際、飼い犬の写真を撮ったり、楽器練習を動画で撮影するのに利用しています。自分の演奏した動画は、GarageBand(ガレージバンド)※で簡単な編集をしています。
※macOS/iOS用の初心者向けの音楽制作ソフトウェア。
- iPadがあると荷物を軽くできるのが嬉しいです。覚えたい参考書のページは撮影していて、デジタルで暗記用マーカーのように緑色をつけて電車などで復習しています。以前は荷物が重かったのですが、iPadがあれば全部のものを集約できるので荷物が軽くなりました。
- アプリを入れれば自分のやりたいことができるのがiPadの良いところです。アプリはApp Storeで探して、友達と教え合ったりしています。
- iPadはスマホと比べて、画面の大きさも2倍、2画面に分けられて作業効率も2倍です。持ち運びも便利でタッチ操作できる分、自宅で使っているMacBookより楽だと感じます。
- プレゼンの授業でiPadを使ったときに「こんな使い方があるんだ」と驚きました。いままでiPadはゲーム用だったので新鮮でした。
- 英語のリスニング問題対策では、1人1台iPadを持っているので、イヤホンを使って自分のレベルに挑戦できるのが面白いと思いました。聞き取れなかったところを、自分のペースで繰り返し再生できるのが便利でした。
- 今度、英語を喋っている動画をBrushup(ブラッシュアップ)にアップすると、ネイティブの先生が添削してくれる、という授業がはじまるのが楽しみです。
- schoolTakt(スクールタクト)ではクラスの皆の意見が共有されるので、自分とは違う意見がバッとでてきて世界が広がる感じがします。普段はあまり喋らない友達の意見に「この子こんなこと考えてたんだ」と驚きます。返信機能があり、友達同士のやりとりが見えるのも面白いです。
- 数学では授業内容を写真に撮って、タグ付けで「わかる」か「わからない」をわけてEvernote(エバーノート)に蓄積しています。先生と共有してコメントをもらったり、自宅で勉強するときは「わからない」タグのページから復習して勉強を効率化しています。
- 英単語を覚えたいときはiPadのメモにバーっと手書きして消すということをやります。2画面操作ができるので、iPadだけで教科書にもノートにもなります。iPadは紙のノートよりも気軽に書き込んだり消したりできます。
- オープンキャンパスの運営スタッフで記録をとるのに使っています。その日は何があったか、来校した中学校三年生はどうだったかなど、振り返りや学んだことを書き込んでいて、次のオープンキャンパスに生かすようにしています。
- 軽音部の皆とスタジオで演奏するときには、iPadで毎回録画しています。帰り道にはAirDropで共有して、各自の練習の参考にするためです。
近畿地区……京都/ 大阪天王寺/ 大阪梅田/ 芦屋/ 姫路
中部・東海地区……静岡/ 浜松/ 岐阜駅前/ 名古屋
※記載の内容は2018年10月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。