東京都立板橋特別支援学校様は、「生徒一人一人の人権を尊重し、生徒の心のよりどころとなり、保護者・地域に信頼される学校」を目指し、生徒の発達段階や課題に応じた教育課程を編成されています。今回は、生徒1人に1台導入したiPadを授業で有効活用するために、「教員向けiPad活用研修」を採用いただきました。採用の経緯や効果を、学部主任の菊地哲也様と、教務主任の吉田圭吾様に伺いました。
タブレット端末として一番馴染みのあるiPadを生徒1人1台導入
吉田様(以下、敬称略):
私は主幹教論として、教務部と研究部を統括しています。研究部は教員の研修を担当しているため、今回の研修の窓口を担当しています。また、学年としては高校2年生を受け持っています。
菊地様(以下、敬称略):
私も主幹教諭として、学校全体を統括する学部主任、高校1年生の学年主任を担当し、教科は保健体育を持っています。
本校では2022年から生徒1人に1台iPadが導入されました。iPhoneがこれだけ普及している日本では、タブレット端末と聞いたときに一番馴染みがあると思います。操作のレクチャーをしなくても、生徒は自然にスワイプやフリック入力をして、必要な情報を入手していました。
授業の中で有効活用していく方法を模索していた
菊地:導入当初に課題として感じていたのは、教員がデバイスを有効活用できていなかった点です。モノは配備されても、特別支援学校の中で果たして本当に活用できるのか、不安を抱えていました。加えて、教員は基本的に業務で他社製のデバイスを使用しているため、操作の戸惑いもあったと思います。導入当初は、YouTubeを見たり、ネット検索で調べ物学習をしたりという使い方に留まっていました。
小学校・中学校、特別支援学校(小学部・中学部)と、せっかくGIGAスクール構想によってデバイスを活かした授業をしているのに、本校に来てこれまでの教育が止まってしまうのはあまりにももったいないと考えていました。その中で、Tooのサービスを知りました。
他社のサービスも調べていましたが、教員向けのiPadの研修は少ない上に、特別支援学校の対応経験がある企業はほぼありませんでした。当時Tooの講師の方も特別支援学校研修の経験はありませんでしたが、相談を聞いてくれる姿勢がありがたく、一緒に研修を作り上げていくことになりました。
授業内容に沿った研修内容を柔軟に組み立て
吉田:研修内容はかなり柔軟に組み立ててもらいました。本校の場合は、毎月開催される「iPad利活用サポート」と、夏と冬に1回ずつ開催される「活用研修」の2種類があります。「iPad利活用サポート」については、月に1回授業の様子を見学してもらい、活用できそうなシーンや、授業に合ったアプリの紹介を、教員にテキストとオンラインでフィードバックしてもらいます。
「活用研修」では各教科で共通する課題を解決するために、すべての教員に向けた研修をしてもらいます。例えば、動画編集が簡単にできるアプリClipsの基本操作のレクチャーをしてもらい、デジタル教材への動画活用のイメージを掴むことができました。
研修は、標準でインストールされている無料のアプリを中心に組み立ててもらうなど、本校の実情に合わせてプログラムを作ってもらっています。
研修を活かしたアクションで効果を実感
吉田:研修後、教員からは「固定観念が覆された」という声が多く挙がりました。今まで難しいと感じていた動画編集などのハードルが低くなり、デジタル教材に活用できそうだとポジティブな感想をよく聞きます。
研修で紹介された内容を活かして、作業学習の手順書を動画で作成している教員がいました。手元のデバイスで動きがある資料を見せられるので、静止画よりも圧倒的に分かりやすい手順書に仕上がっていました。研修が始まってまだ半年ですが、すでに効果を実感しています。
菊地:デジタル教材の良さは、紙の教材では得られない臨場感を生徒に与えられる点です。使い方次第で、紙の教材よりも生徒の食いつきが良いときもあります。また、授業にオンラインを活用できる環境ができたことで、長期間お休みしている生徒ともオンラインで顔を合わせて会話ができるようになりました。
吉田:学校に通えない生徒も授業に参加できる体制作りに、学校として取り組んでいる最中です。昨年度、大学と提携して人型の分身ロボットを試験的にレンタルした経緯もあり、今後もICT機器は積極的に活用していきたいと考えています。
教材の準備時間削減も期待
菊地:本校では教員の研究会を開催していますが、今年は1人1つのデジタル教材の作成がテーマです。デジタル教材は1度作成すればシンクタンク的に貯めて教員全員で共有できます。今後研修を継続してノウハウが蓄積されてきたときに、ものすごい力を発揮すると期待しています。
吉田:研究会の総まとめとして、各グループで作成したデジタル教材を持ち寄って発表し合う実践報告会の開催を予定しています。来年度も同じように教材研究を続けたいと考えているので、それが実現して教材が溜まっていけば、教材の準備時間が確実に短縮されます。
研修の知識を蓄積させる手法を構築したい
吉田:直近の課題は、生徒のデバイス環境をいかに統一するかです。中学部までは、自治体から借りたデバイスを生徒に貸し出して卒業の時に返してもらっています。Apple IDも自治体管理なので、授業で必要なアプリを学校側からインストールできます。しかし、高等部になると各ご家庭で購入してもらうため、各ご家庭での管理下で学習環境を統一する方法を検討しています。こういった運用面も今後Tooに相談したいと思っています。
菊地:教員は5〜6年で異動してしまうことから、研修で教わった内容を本人だけが持っていると蓄積されません。確実に学校の力にしていくためには、Tooの講師からもらう毎月のフィードバックや研修内容を、全教員に伝えられるシステムを構築したいと考えています。
※記載の内容は2024年1月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。