株式会社光文社様は1945年の創業以来、多くのベストセラーを手掛けてきた総合出版社です。出版物制作に関わる膨大なデータの保管・共有と、コロナ禍でのリモートワークのためにクラウドコンテンツマネジメントの「Box」を全社導入されました。Boxの導入背景や具体的な利用方法について、情報システム部の渡部優美様にお話を伺いました。
Box全社導入の背景
出版物にまつわるデータを、社外の人と安全にやり取りできる場を設けたいというのが導入のきっかけでした。フリーランスのデザイナーやライター、記者など、出版物の制作は会社に所属していない関係者とおこなうことが非常に多いためです。
また、弊社ではコロナ禍以前から、働き方改革の一環でリモートワークができる環境を整え始めていました。自宅でも仕事ができる環境を提供するため、データを保管し自由にアクセスできる場が求められていました。 4月に緊急事態宣言が発令されたこともあり、2015年頃から一部の部門で運用していたBoxを、全社的に導入することを検討しました。容量無制限で使用できることや、セキュリティ面でも細かく権限設定ができる点が情報システム部にとっては大きなメリットであり、他社製品と迷うことなくBox一択での採用となりました。
データのやり取りも容量を気にせず安全におこなえる
Box導入後は、各部署で工夫を凝らして活用しています。大きな効果を発揮したのは、社外の方とのデータのやりとりです。以前は個人向けのファイル共有サービスや、メール添付でデータを共有している社員が大半を占めていました。情報漏洩のリスクもありますし、容量が重いデータを頻繁に共有するためメールサーバーを圧迫する原因になっていました。
Boxは容量無制限で使用することができ、「共有リンク」機能を活用することで大容量のファイル、複数ファイルの受け渡しが可能なため、容量を気にする必要がありません。会社で推奨していないツールの使用制限の案内を、解決策と一緒に提示することもできました。
膨大な写真や素材などのデジタル資産管理に活用
週刊誌を担当する部署では、写真や素材のアーカイブ場所としても活用しています。週刊誌は発行のスピードが勝負です。急なスケジュールで特集を組むことが頻繁に起こるので、以前使用した写真を再び掲載することがあります。また、写真データは会社の資産でもあるので、不用意に削除することはできません。従来は社内のファイルサーバーにデータを貯めていたため、容量が増えては削除のいたちごっこでした。これらの問題を、容量無制限であるBoxでカバーできるようになりました。
外出先でもスマートフォンからの作業が可能に
編集者は取材や撮影があるので、外出先での業務が多くあります。従来は社内のデータを持ち出すことができなかったため、紙に印刷していました。情報漏洩のリスクもありますし、何より非効率的です。Box導入後は、社外からスマホでもデータを参照できるようになったため、必要な情報に安全にアクセスできるようになりました。
また、最近は紙の出版物だけではなくアプリやウェブサイト、SNSでのコンテンツ運営もおこなっています。その過程で、著者から写真を提供してもらうときに役立っているのがモバイルアプリケーションの「Box Capture」です。スマホで撮影した写真や動画がBoxに直接保存されるので、後からアップロード作業をする必要がありません。編集側はリアルタイムでデータを確認することができます。
リモートでの校正作業や自宅からのFAXの受け取りにも活用
校閲・校正作業は基本的に印刷した紙にペンで書き込み赤入れをしていますが、コロナウイルス感染拡大後はBoxを活用しリモートで作業できる環境をつくりました。チェック対象の原稿をpdfで用意した上でBoxに置き、赤入れはiPadの書き込みアプリでおこなうようにしました。iPadアプリはBoxのフォルダを直接呼び出すことができ、作業した後Boxに自動で保存されるため、校正作業をしたデータの共有やさらなる修正もスムーズにおこなうことができます。非常に便利な使い方だと評判がよく、最近は校閲部員たちが他部署にユースケースの共有を積極的におこなっています。
そのほかには、 FAXの受け取りに活用しています。在宅勤務の社員は、会社に届くFAX を確認できない状態でした。しかし、届いたFAXを複合機から直接Boxに保存する環境を整えたことで、自宅からでも確認できるようになりました。内勤の事務担当に負担がかかっていた業務を改善できた部分でもあります。
編集者の手を離れ、不特定多数の読者とデータ共有が可能に
不特定多数の読者とのやり取りも可能になりました。美容商品の付録で、読者から顔写真を一人につき複数枚送ってもらい、その写真をもとに人相占いをするという企画がありました。メール添付だと安全性に不安があるため、さまざま々なサービスと比較検討し、 Boxアカウントを持たないユーザーからも安全にファイルとメタデータを入手できる「ファイルリクエスト」機能を使うことになりました。
ファイルリクエスト用のQRコードを読者に配布し、読者は自分の顔写真とメールアドレスなどの情報もあわせて入力し送信すると、メールアドレス等がメタデータとして付与された写真データがBoxフォルダにアップロードされます。アップロードのタイミングで関係者にメールが届くよう通知設定を入れたことによって、鑑定士の先生もリアルタイムに写真を確認できます。 社内担当者の手が離れたところでも、写真の受け取りから鑑定士へのファイル共有が、安全性を保ちながらおこなえるようになりました。社外の不特定多数の人とやり取りする手法が確立されたので、他の企画での応用も考えています。
今後の展望
ユーザーの利便性を高めたいというのが第一です。例えば、SaaSやSSO認証サービスとの連携や、ファイルの作成から承認、保管や破棄といったデータのライフサイクルの管理をよりスムーズにおこないたいです。また、Boxに入っていないものを移行し、検索すればすぐに情報が引き出せる環境を整えることで、ファイル保存場所を完全にクラウド化する際の足がかりにもなります。ほかにも、弊社はリモートワークを全社に浸透させている過渡期です。働く環境を整備する手段のひとつとして、Boxを積極的に活用していきたいです。
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※記載の内容は2021年3月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。