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大垣女子短期大学様は、日本列島のほぼ真ん中に位置し、「水都」と呼ばれるほど綺麗な湧水の街としても有名な岐阜県大垣市にあり、4つの学科を擁しています。今回、さまざまな分野のクリエイターを目指す学生たちが学ぶデザイン美術学科にて、授業で活用するAdobe Expressが導入されました。デザイン美術学科 教授 日原広一様に導入の経緯や効果をうかがいました。
デザインプロセスの中で最も難しいのが「抽象化」や「視覚化」
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デザイン美術学科には、「マンガコース」「コミックイラストレーションコース」「ゲーム・CGコース」「メディアデザインコース」の4つのコースが設置されています。2023年に着任した日原様は、メディアデザインコースの強化を模索する中で、生成AIが一つの突破口になるのではないかと思い至り、Adobe Fireflyが搭載されているAdobe Expressの導入を決めました。
日原様の研究分野は、デザインを段階的かつ効率的に進めていくために有効な「デザインプロセス」。アイデアを次の段階に進めるための「抽象化」や「視覚化」という作業には高度な能力が必要で、初心者の学生には難しいため、以前から課題を感じていました。
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日原様が考える「デザインプロセス」の図
日原様が考える「デザインプロセス」は4段階。コンセプトから順に段階的に作業することで、学生は「デザイン全体の構造」を理解しやすくなるといいます。このプロセスで最も大切になってくるのが、各設計段階を移行するところ。これがまさに「抽象化」「視覚化」で、ここに生成AIを活用することにしました。
「AIを使えば『ことば』を『機能』に、『機能』を『イメージ』に置き換えられる。『イメージ』を『デザイン』にするところでは、デザインそのものに置き換えるというより、デザインをつくるうえでのガイドライン(指標)になるものをAIで提案してもらったらいいんじゃないか?デザイナーは、その指標に基づいて自分のセンスで創作していけばいい、そういうプランをたてたわけです」
デザインをすべてAIに頼るのではなく、プロセスの各ポイントでAIを使う
学生たちはプロセスに沿ってポイントで生成AIを活用しながら課題に取り組んでいます。
プロンプトで細かくイメージを指定すると「なかなかいい絵が返ってくるんです」と日原様。たとえば「“高級感がありながらも牧歌的”など、相容れないような言葉を使った複雑なイメージを素人が絵にするのは難しいですよね。でもExpressの画像生成AIだとそれがパッと出てくる」。生成された画像をAdobe Illustratorでトレースし、アウトラインをとってデザインに利用していきます。
選択の決め手は他のアドビ製品との連携のしやすさ
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授業での生成AI導入にあたってはTooから「(教育機関向けCreative Cloud共有デバイスライセンスをご利用いただいている環境で)Adobe Fireflyを使うならAdobe Expressを併用するのが良い」と案内されたことがきっかけだといいます。「Adobe Expressだとベクター形式の画像にできないのがネックだと思っていましたが、Illustratorに連携してトレースアップすれば解決できるとわかったので、Expressに決めました」
Adobe Expressの使い勝手の良さも好印象だったと話す日原様。学生たちもとくに操作に戸惑うことなく、すんなりと使い始めることができたそうです。
必修科目で取り組んだシンボルマーク制作は予想以上の出来栄え
Adobe Express導入後に初めて学生たちが取り組んだのは、大垣市のこども居場所シンボルマークの制作です。大垣市から提示されたコンセプトや、「こどもんち」という愛称などをキーワードに、各自でプロンプトを考えてデザインのプロセスを進行。与えられた情報をどう解釈するかは学生たちにまかされ、自由に制作が進みました。完成した約40作品の中から、日原様の監修のもと4つの候補を市長に提出。
候補作品の1つを制作したデザイン美術学科メディアデザインコース1年の山田美憂さんは「大垣は綺麗な水が有名で水都と呼ばれているので、その水からモチーフを発想し、Expressに短いプロンプトを次々と入力して生成しました。当時は入学したばかりでデザインの進め方がわからなかったのですが、Expressを使用することで、こういう発想の仕方もあるんだとか、こうやって配置したらデザインが綺麗に見えるなとか、デザインのプロセスを知ることができたので、とても面白いと思いました」と語ってくれました。
Adobe Expressを活用した学びの手応え
メディアデザインコースのほかの学生の皆さんも、Adobe Expressで取り組むデザインは「楽しい」と一様に口を揃えます。お話からは、楽しみながら効果的に活用して学びを深めている様子が伝わってきました。
「Expressを使うと、AIから自分にない発想や面白い形・色が出てきます。自分が与えたい印象のデザインがどうすれば実現できるかの勉強にもなるのが、Expressのいいところだと思います。 Expressでは文字を入力するだけで自分の頭の中にあるイメージのデザインが出てくるので、うまく課題につなげられます」(2年 奥田咲空さん)
「はじめのうちはイメージとは違う画像になってしまうことも多かったのですが、言葉を工夫しながら使っていくことで、思い通りの画像が生成されるようになったときは嬉しかったです」(2年 吉田佐羽さん)
「プレゼン資料を作るときにも使っています。こういうデザインにしたいというのをExpressが表現してくれるのでとても助けられています。」(2年 林あいらさん)
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デザイン美術学科の先生方とメディアデザインコースの学生の皆さん。Adobe Expressでデザインしたペーパープランツを手に
アドビツールが一般化し、社会人のインフラ的な存在となることを期待
目下の同学科の悩みは、学生たちの就職に関すること。「一般的な仕事でもデザインのスキルや知見を活かせる作業はたくさんあるんですよね。営業の商材を作るとか、プレゼン用の資料を作るとか。そういう意識が企業などにも広がり、Expressのようなツールが一般化してくると、我々が教えている学生の就職先にも一層広がりが出てくるのではないかと思っています」。デザインやクリエイティブなスキルの重要性が広く認識され、誰もがアドビのデジタルクリエイティブツールを使いこなすような社会になってほしい、と日原様は期待を寄せています。
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Adobe Expressを使いこなす学生の皆さん
生成AIに頼り切るのではなく、思考を深めていくための手段として適切なタイミング、適切な使い方で、生成AIを授業に組み込んでいる大垣女子短期大学 デザイン美術学科。デザインやクリエイティブな分野はもちろん、それ以外の分野でも大学における創造的な学びにAdobe Expressの生成AIをうまく取り入れていくための1つのヒントとなりそうです。
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※記載の内容は2025年2月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。