株式会社ポーラ様は「Science. Art. Love.」を企業理念に、化粧品の製造・販売を通じて、創業以来お客様1人ひとりに寄り添った美しさを提案されています。今回は、化粧品のパッケージデザインを担当されるブランドデザイン部で、デスクトップ光造形3DプリンターForm 3+を導入されました。導入の経緯や効果を、ブランドデザイン部 アートディレクター 渡辺有史様、デザイナー 重田くるみ様、梶谷文雄様に伺いました。
3Dプリンターの活用でアイデアをスピーディーに形にする
渡辺様(以下、敬称略):
私たちは、ポーラが開発する化粧品などのメインパッケージのデザイン全般を担当しています。近年はサステナブルやエコなどの環境に配慮した企画が増え、会社としても特に意識しています。
10年ほど前からデザインに3Dデジタルを活用し始め、3Dプリンターは主にアイデアをモックアップにする段階で使用しています。アイデアを形にする作業はスケッチから始めるのが一般的でしたが、最近はスケッチせずにモックアップを作って考えを具現化していく人も増えています。
重田様(以下、敬称略):
短い期間でアイデアを形にしなければいけないので、アナログな手法だけではさまざまなパターンを作るのは難しくなってきています。そこを3Dプリンターが補うことによって、開発のスピードがだいぶ上がりました。
化粧品のパッケージ特有の繊細な表現を実現したかった
梶谷様(以下、敬称略):
以前は石膏を材料とする3Dプリンターを主に使っていました。出力の速さは魅力でしたが、化粧品のパッケージ特有の繊細な表現や色のバリエーション、透明感や耐久性は求めている精度で出力できませんでした。新たな機種を検討する中で、Form 3+はレジンが材料のため、細かい造形やある程度の耐久性を実現できると期待できました。
導入後、Form 3+は質感などの表現を解像度高く見たい時に活用しています。出力スピードの速い石膏プリンターでたくさんのアイデアを出力して、その中でいいなと思ったものをForm 3+でも出力するなど、それぞれの機種のメリットをかけ合わせて併用しています。
開発の初期段階から手触りや機構の見え方を確認できるようになった
重田:
化粧品のパッケージは手触りの良さや開けやすさなど、使いやすさを求められます。Form 3+で出力したモックアップは、ディテールが表現できて強度もあるため、開発の段階で実際に触ってもらうテストを実施できるようになりました。
梶谷:
透明なパーツを出力できるようになった点もかなり大きいです。機構の見え方を初期段階からモックアップで確認できるようになったので、イメージを具体的に伝えられるようになりました。
重田:
これまで透明を表現するにはアクリルを切削する方法しかなく、複数作るとコストも時間もかかっていました。小回りの利く使い方ができる点もメリットだと思います。
細部の表現を満足できる強度で出力可能
重田:
例えば「V リゾネイティッククリーム」は、クリームをすくうスパチュラ(ヘラ)をパッケージ上にオブジェのように飾ることができます。デザインの考案時は石膏プリンターしかなかったため、スパチュラを出力するたびに割れてしまい、部屋中に石膏が散らばっていました。
試しにForm 3+で出力してみたスパチュラは、薄さやエッジの細かさなどをかなり精巧に再現できました。石膏とレジンで見え方がかなり変わってくるので、当時Form 3+を使っていたら今とは異なった形になっていたかもしれない、と考えると面白いです。
新たなアイデアを生み出すツールとしても期待
梶谷:
私たちが知らない3Dプリンターの情報をTooさんから提供してもらい、たくさんの選択肢の中から選定できたのがありがたかったです。Form 3+はこれからさらに活用していきたいですが、ブランドごとに調整された色合いの表現にもモックアップの段階から取り組みたいです。
重田: Form 3+が対応している素材は、柔らかさの種類がいくつかあります。例えば、コンパクトの留め具のような硬い部分や、中身を押し出すための柔らかい部分なども、Form 3+で表現してみたいです。アイデアを実現するために形を作っていくだけではなく、形にしたものから新しい発想が生まれるような使い方ができるといいなと思います。
渡辺:
Tooさんには長年Macやサーバーなどの機材関係でもお世話になっており、これまでの信頼があったからこそ3Dプリンターについても相談しました。Form 3+に慣れてきたら、化粧品のパッケージ以外にもいろいろと試作してみたいです。新しい道具は使っていくからこそ新たなアイデアが生まれていくと思うので、この先どのように活用されるのかがとても楽しみです。
※記載の内容は2023年7月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。