株式会社ブシロードクリエイティブ様は、ブシロードグループの子会社として、キャラクターグッズやカプセルトイ、プライズ、物販催事企画等のマーチャンダイジング事業を展開されています。今回は、フィギュアの原型制作を効率化するために、デスクトップ光造形3DプリンターForm 3+を増設し、出力された造形品を自動的に取り外し連続出力を実現する、自動化ハードウェアForm Autoを導入されました。導入の背景や効果を、取締役 MD制作部 部長 江崎徹哉様と、MD制作部 デジタル制作チーム 近藤尚之様に伺いました。
フィギュアやカプセルトイの原型を作成
江崎様(以下、敬称略):
当社ではここ数年、フィギュアのブラインドボックスに力を入れており、国内外に展開しています。海外では立体物の人気が高いことから、社内に造形部隊を新設し、2023年にはデフォルメフィギュアブランドの『PalVerse(パルバース)』を立ち上げました。
ブシロードクリエイティブの中には企画部・営業部・制作部と3つの部隊があります。私たち制作部デジタル制作チームの主な業務は、フィギュアやカプセルトイの原型制作です。デザインをもとにイラストを描き、3Dプリンターで大量生産の元となる原型を作り、塗装までを担当しています。
出力の精度が高く機能も豊富なForm 3+を導入
江崎:
以前はフィギュアの原型をすべて外注していました。しかしPalVerseの立ち上げを機に、非常に多くの商品を手がけることになりました。これまで同様外注するとなると、仕上がりまでに時間がかかります。よりスピーディーに大量の原型を作成するために、内製化を進めることになりました。
私たち2人はフィギュアの原型を作る会社で働いていた経験があり、そこでForm 3+の前身であるForm 1を使っていました。さまざまな3Dプリンターを調べる中で、当時と比較するとForm 3+の機能は大幅に進化していることがわかりました。例えば、材料であるレジンは冬の寒い時期に硬くなり出力のミスが起こりやすくなるのですが、それを防止するためのヒーターが付いたり、Wi-Fiに対応するようになったりと、かゆいところに手が届く機能が追加されていました。そうした背景があり、当社で使用する3D プリンターとしてForm 3+を採用しました。
サテライトオフィス設立にあたりForm 3+を増設
近藤様(以下、敬称略):
Form 3+を使って一番驚いたのは、尋常ではない安定感があることです。割れやヒビ、バリが残ったり、出力されたものが落下してしまったりなどのミスが本当に少なく、ボタンを押したら何も考えずに出力できます。現在は年間400〜500点ほど原型を出力しており、今後その数はさらに増える予定です。さらにサイズの大きなフィギュアを作る計画もあるため、これまでの台数では出力が間に合いません。増産計画に耐えうる体制を構築するために、Form 3+を6台増設しました。
江崎:
導入台数が増えたことで、テスト出力も気軽にできるようになりました。急遽プレゼンが決まった時も、サンプルの出力が間に合うようになったのは大きな効果です。
また2024年4月、金沢にフィギュアの制作拠点となるサテライトオフィスを作り、そこにも3Dプリンターを設置する予定です。東京で作ったデータを金沢で出力したり、金沢で作ったデータを東京で出力するなど、お互いの空き時間をうまく使った運用ができればと考えています。
自動化ソリューション「Form Auto」の導入で土日でも出力が可能に
近藤:
増設以外の手法でも出力を効率化したいと考えていました。3Dプリンターには、データをセットする、出力される、出力されたものを取り外す、次に出力するデータをセットする、という工程があります。出力されたものを人の手で取り外さないと次のデータをセットできないため、人が不在になる土日は1回転の出力が限界でした。
江崎:
Form 3+の自動化を実現するForm Autoには、出力された造形物を自動で取り外す機能がついているため、データさえ入れておけば、人が取り外し作業をしなくても自動で次の出力が始まります。これにより人がいない土日でも、何回転も出力できるようになりました。1週間のうち5営業日だったものが7営業日になり、圧倒的に効率良く出力できるようになりました。
平日でもこれまで他の仕事をしていると、出力完了に気がつかないことがありましたが、取り外し作業の自動化によって意識しなくても次の出力が始まるのが助かります。体感ですが、以前は1日中出力して2回転だったのが3回転は回るようになり、作業効率は30%ほどアップしています。
3Dプリンターのさまざまな活用を試し、引き続き作業の効率化を進めたい
江崎:
Tooとは3Dプリンター以外に、モーションキャプチャー製品なども取引しています。そのときから丁寧に対応してもらっていて、3Dプリンターも購入できるならぜひお願いしたいと思いお声がけしました。
今後は、部品の固定や作業のガイドをする治具の制作に、Form 3+を活用してみたいです。例えば複数の部品のそれぞれ同じ位置に穴を開けたい場合、治具を使えば、穴を開ける際の位置を毎回調整する必要はありません。
近藤:
Form 3+の機能をいろいろと試して、作業の効率化を進めていくのが楽しいです。最近は、通常の樹脂と比べると2倍ほど出力が速いドラフトレジンをよく使うようになりました。表面がやや荒く仕上がりますが、まず形が見たいときには十分なクオリティです。
今後改善できると嬉しいのが、出力後の仕上げです。サポート材がさらに細く出力されるようになれば、磨き取る作業が軽減されます。Form 3+はこれまでさまざまな機能が追加されてきたので、サポート材の出力精度についてもさらなる向上を期待しています。
※記載の内容は2024年4月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。