一昔前まではオフィスで働くのが普通でしたが、現在は働き方改革の推進やワークライフバランスの充実などを背景に、日本企業でもリモートワークの導入が進んでいます。今回は、リモートワークの概要を説明するとともに、メリット・デメリットや導入事例についてもご紹介いたします。

通勤不要?リモートワークという新しい働き方

リモートワークとは、従業員が会社に出社することなく自宅やカフェ、コワーキングスペースなど遠隔地で働くことです。リモートワークはその形態から次にご紹介する4種類に分類されています。

ハイブリッド・リモートワーク

正規雇用として企業に所属しながら、会社への出社日は限定し、普段は在宅などをメインに遠隔で働く形態です。全体ミーティングがある日のみ出社し、それ以外は自宅で仕事をするというような働き方が可能です。

フルタイム・リモートワーク

正規雇用として企業に所属する点はハイブリッド・リモートワークと同じですが、勤務形態に違いがあります。フルタイム・リモートワークは勤務時間全てを遠隔で働く形態になります。ハイブリッド・リモートワークと違い、ミーティングのときもスカイプのようなインターネット電話やチャットアプリ、Web会議システムを使うことにより在宅で参加します。

リモート・アウトソース

勤務時間はフルタイム・リモートワークと同様に勤務時間全てを遠隔で行いますが、雇用形態に違いがあります。リモート・アウトソースは、ハイブリッド・リモートワークやフルタイム・リモートワークと違い、正規雇用ではない外部契約の形態になります。そのため企業とワーカーの間で業務委託契約を結ぶ必要があります。

テンポラリー・リモートワーク

上記3つは全て勤務時間が固定された形態でしたが、テンポラリー・リモートワークは異なります。オンラインミーティングに出席する場合のように、短い時間のみ一時的に遠隔で業務を行う形態を指します。子育てや親の介護/看病などをしつつ業務ができる働き方です。プライベートで突発的な事態が起きたときでも、柔軟に対応できます。

企業としてもメリットがあるリモートワーク

リモートワークは働く側だけでなく、雇用主である企業側にとってもメリットがあります。ここでは企業側にどのようなメリットがあるかをご紹介します。

業務生産性の向上

会社内で業務を行っていると、不要な会議や電話対応などにより仕事に集中できないことが多々あります。リモートワークにより在宅で仕事をすれば、周囲からの雑音や割り込みなどがなく仕事に集中でき、業務の生産性向上につながります。

コスト削減

リモートワークにより従業員の出社回数が減るので、会社で準備すべき備品や光熱費の企業負担が減ります。また従業員が出社する場合に発生する交通費も、リモートワークを導入すれば削減することができます。
出社する従業員が少ない場合、執務スペースとして広い場所を準備する必要がなく、一時的に人を集める場所を確保すればよくなります。これは会社を維持するためにかかる家賃や固定資産税のような費用の削減につながります。

従業員の健康管理

通勤時間の削減や効率的な業務進行による労働時間の短縮は、従業員のプライベートな時間の確保へとつながるでしょう。趣味の時間や家族との時間の増加は、従業員の健康維持の面でも効果があります。従業員の健康管理が徹底されることで、生産性や効率性が向上し、企業全体の成長にも寄与します。

優秀な人材の採用

出社の必要がある場合、当然通勤できる範囲に住んでいる人材しか採用できません。リモートワークを導入すれば、遠方に住んでいる人も採用できるため、より多くの人材にリーチできます。また、リモートワークを採用していることで働き方の多様性が広がり、介護や病気など個人的な事情がある人にも就業の機会が生まれます。つまり企業として優秀な人材を採用できるチャンスが増えることになります。同時に既存従業員の定着にもつながります。

リモートワークによるデメリットと改善策

ここまではリモートワークによるメリットをご紹介してきましたが、当然デメリットもあります。改善策とともに見ていきましょう。

コミュニケーションの取りにくさ

普段顔を合わすことがなくなることから、どうしても従業員同士のコミュニケーションは取りにくくなります。しかし、近年はWeb会議システムやチャットツールなどの利活用が進んでおり、直接顔を合わせなくても簡単にタイムリーなコミュニケーションを取ることができるようになっています。

次に考えられるデメリットは環境整備

会社であれば必要書類が紙であったとしてもその場で簡単に見ることができます。しかし、リモートワークではそうはいきません。そこで書類のペーパーレス化がポイントとなります。その他にもWeb会議システムやチャットツールの整備、会社用パソコンの準備やそのセキュリティ設定、クラウドサービスの導入など、ITツールを中心とした環境準備が必要になります。リモートワークのための環境整備にはコストがかかるものの、結果として業務のスリム化にもつながるので、生産性向上や働き方改革の推進などの観点からも実施するメリットは多いでしょう。

勤怠管理の難しさ

リモートワークでは勤務の確認がしにくいため、どうしても勤怠管理が難しくなってしまいます。こうした課題はクラウド型の勤怠管理ツールなどで対応が可能です。

導入が進む日本企業のリモートワーク事例

近年、働き方改革の推進などによって、日本でもリモートワークを導入する企業が増えており、いくつかの成功事例も生まれています。

日産自動車株式会社

2014年に生産工程を除く全従業員を対象とする、リモートワークに対応した制度を導入しました。一人ひとりのライフステージに応じて、能力を最大限に発揮できるような制度やシステムを構築しています。IT面では、チャットや音声テレビ会議システムなどの整備によって、生産性や労務管理、コミュニケーションの強化を図っています。テレワークの導入で、従業員のマネジメントスキル向上にもつながっているといいます。

東急リバブル株式会社

2016年からリモートワークに対応した制度を導入しています。週に1~2回、月6回を上限として、テレワークに適した業務を自宅で行うことによって作業効率を高める狙いがあります。クラウドの仕組みを使ったパソコンを新たに導入することで情報漏えい対策も講じています。

TOHOマーケティング株式会社

TOHOマーケティングでは、柔軟に働くための情報共有基盤として、クラウドストレージのBoxを導入しています。Boxによってペーパーレス化が進み、働く場所が自由になったことで移動コストの削減も実現しました。ITツールの活用によって従業員が主体的かつ効率よく働けるようになったといいます。

ユーザー事例:TOHOマーケティング株式会社 様

リモートワークは企業・従業員双方にメリットあり

日本の企業ではまだ一部でしか導入が進んでいないリモートワークですが、導入することで多くの効果が得られる可能性があります。よりよい業務や生活を築く手段として、リモートワークは有効な手段と考えられます。リモートワーク導入のためには、社内ツールの構築や環境整備など取り組むべき課題もありますが、生産性向上や働き方改革を実現させるためにも検討する価値は十分にあるでしょう。


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