昨今は、個人だけではなく法人もクラウドストレージを活用しているところが増えています。自社が中小規模であることから、導入にコストがかからなそうな、無料のクラウドストレージに関心がある人もいるでしょう。今回は、ビジネスにおけるクラウドストレージのメリットを確認するとともに、無料のクラウドストレージのサービスをいくつかご紹介します。
クラウドストレージとは?
日本大百科全書によれば、クラウドストレージとは以下のように説明されています。
インターネットなどのネットワーク上に置かれたサーバーにデータを保管する、オンラインストレージサービスの一種。クラウドサービスを通じて提供される場合の呼称である
また「クラウドストレージ」のほか、「オンラインストレージ」という言葉も使われますが、両者の意味するところに違いはありません。
クラウドストレージのメリット
まず、ビジネスにおいて、クラウドストレージを活用するメリットについて確認しておきましょう。
必要な情報へ、いつでも、どこでも、デバイスを問わずアクセス可能
社内はもちろん、移動中、取引先、自宅からなど、インターネット環境があればどこからでも、24時間いつでもアクセスできるのは、スピードがカギとなるビジネスにおいて特筆すべきメリットです。アクセスするデバイスも問わないため、利用しやすく、個々の社員の業務効率化にも貢献します。
情報の共有が容易
社員間で、あるいは取引先とファイルを共有することが簡単にできます。また、eメールでは添付できない大きなファイルも、迅速かつ容易に共有することができます。
複数の社員での共同作業も、メンバー全員が集合する必要がなく、速やかに進めることができるでしょう。報告書の受け渡しなども時間と場所にしばられません。
情報共有のための手間が省けると同時に、社員それぞれのスケジュールに沿って効率的に業務を進行させることができるため、生産性があがることが期待できます。
バックアップの心配が不要
自動的にバックアップをとるサービスがほとんどであるため、自社でのバックアップを省略できるのも大きなメリットのひとつです。
サーバーの管理が不要
サーバーの管理と運用はサービス提供事業者がおこなうため、サーバソフトウェアのバージョンアップなどの作業が不要です。随時機能が追加されたりセキュリティが強化されるなど、最新の環境で業務を遂行できます。管理にかけていた労力をIT戦略などへ投資できるのは大きなメリットです。
導入コストが安価
クラウトストレージの導入コストは、サーバーの購入などと比較して、非常に安価なのも大きな魅力です。
また、自社の状況に合わせて、ストレージの容量を増減させることも容易であり、投資対効果を高く維持することができるでしょう。
クラウトストレージのデメリット
クラウトストレージにはデメリットもあります。
自社の状況に合わせてのカスタマイズは難しい
パッケージ化されたサービスが多いため、自社に必要な機能だけを効率よくそろえることは難しいでしょう。したがって、サービスを選択する際には、機能、オプション、サポートなどをよく調べるようにしましょう。
サーバーに障害が生じた場合にできることがない
サーバーの管理はサービス提供事業者任せであるということは、障害が生じてサービスがストップした場合、自社で復旧のためにできることがないため、歯がゆく思うかもしれません。現在は、不慮の事故や障害の際に、サービス提供を継続できるようにシステム構築(冗長化)していることが多いようですが、導入前に確かめておくのもよいでしょう。
セキュリティ対策は必要である
自社のサーバーにデータを保管していても、紙ベースで保管していてもセキュリティリスクはあります。同様に、サーバーの管理はサービス提供事業者任せであっても、無料のサービスを利用する場合には特に、クラウトストレージ導入に合わせたセキュリティ対策が必要です。
例えばアクセスの管理をおこなうことです。クラウドストレージへのアクセスが可能になるIDとパスワードの管理体制を見直しましょう。また、社員のセキュリティ意識を高めるとともに、退職者や異動者のIDとパスワードを放置しないような仕組みづくりも検討しましょう。また、アクセスできる端末やネットワークを制限する方法もあります。
無料で使えるクラウドストレージ
現在、クラウドストレージのサービスには、有料のものも無料のものも数多くあります。コストをかけずに、クラウドストレージを利用してみたい場合には、無料のクラウドストレージを試してみる手があります。以下に、いくつかご紹介しましょう。(情報は2019年10月現在)Dropbox
創始者のドリュー・ヒューストン氏の、重要なデータをいれたUSBメモリが壊れたのがきっかけで設立されたサービスです。当時のクラウドストレージでは、操作や手順が複雑であったことから、シンプルな操作でファイルをすぐに取り出せるようなサービスを自分で立ち上げることにしたのだとか。
「いつでもどこでも簡単に」という創始者の思いを反映したDropboxは、ファイル共有性が優れており、直感的な操作が可能で、デバイスに関わらず速やかに同期できるという特長があります。また、業務上よく用いられているGmailなどの多くのアプリケーションと連動できるのもポイントです。
ただし、無料であるDropbox basicは、容量が2GBまで、リンクできるデバイスが3台までという制限があります。
有料プランには、容量が2TBまでのDropbox Plus、3TBまでのDropbox Professionalや、法人向けに管理者機能がついたDropbox Businessがあります。
Google Drive
Googleアカウントがあればすぐに始められるという手軽さが魅力的なのが、Googleのクラウトストレージサービスです。無料でも15GBまで使えるうえ、Googleドキュメントで作成した文書やスプレッドシート、スライドなどについては容量無制限なのは大きなメリットです。もちろん、デバイスを問わず、Googleのほかのサービスと連携しており、ファイルの共有も簡単です。Googleのサービスであるため、セキュリティも高いとされています。
有料プランには、容量を100GBや200GBにアップグレードできるGoogle Oneがあります。
ビジネス用としては、Google Cloud StorageとG SuiteのGoogle Driveが用意されており、Google Cloud StorageにはIT管理も含まれています。
Box
法人から人気があるといわれているのがBoxです。もともとが法人対象のサービスであるため、セキュリティ対策がしっかりしているとされ、無料プランであっても各種アクセスコントロールができるのは大きな魅力です。
無料プランは、容量が10GBまでとなっています。100GBまでの有料プランにアップグレードすることが可能です。
法人向け有料プランには、「Starter」「Business」「Business Plus」「Enterprise」の4つがあります。「Starter」は、容量が100GB、ユーザー数が3~10人。「Business」「Business Plus」「Enterprise」はストレージの容量が無制限であり、ユーザー数にも上限がありません。料金が高額になるほど、セキュリティや管理コントロール、コンテンツ管理機能が高度になっていき、法人に必要な機能をきめ細かく揃えています。
有料と無料の違いはセキュリティ
さて、無料と有料のサービスの違いについて気になる人もいるでしょう。
無料プランは、法人向けではなく、個人向けに設定されていると考えてよいかもしれません。容量が少なく設定されており、機能も限られています。有料プランに移行した場合は、容量が増えるとともに、機能が増えます。課金は月毎ですが、年払いができるサービスもあります。容量や機能が自社の要件を満たすのであれば、ビジネスで活用できるケースはあるでしょう。
ビジネス用の有料プランでは、1ユーザー当たりいくらという形での支払いになり、月払い、年払いになります。チームでの利用を前提とした管理機能が搭載されています。料金が高くなるほど、ユーザー数の上限や容量の上限が上がり、さまざまな機能が利用できるようになります。
セキュリティ面に大きな違いがある
セキュリティに関しては、無料プランと法人向け有料プランでは格段に差があるといっても過言ではありません。法人向け有料プランでは、自社データへのアクセス方法を細かく設定、会社内外からのアクセスを管理し、ビジネス活動を制限することなく情報の流出を防ぐなど、安全性を高める機能が各種盛り込まれています。自社の企業ポリシーに合わせたセキュリティ設定も可能です。暗号化方法や認証システム、管理機能の種類など、具体的な内容については、それぞれのサービスによって異なりますので、比較検討の際によく調べることをおすすめします。
自社の状況にあわせて選択
クラウドストレージのサービスはさまざまなものがあるため、選定に迷うかもしれません。その際、有料で支払額が高額なサービスを選択すればよいとは限りません。無料プランで十分な場合もあるでしょう。自社の規模やどのように利用していくかによって、適切なものを選ぶようにしてください。
はじめは無料プランからスタートし、機能や運用面で過不足が生じたら法人向けプランに移行する方法もあります。法人向けプランの多くは、無料のトライアル期間を設けているものが多いので、本格的導入の前にトライアルで使い勝手を試してみるのもよいでしょう。 また、クラウドストレージを導入するにあたり、自社内のネットワークやセキュリティなどのインフラに不安がある場合には、導入サポートがしっかりしているプロバイダー(販売代理店)を探してみてください。