2023年7月21日、企業課題別のIT戦略事例を知るオンラインセミナー「IT surf seminar 2023」を開催しました。
各セッションの簡易レポートを公開します!
IT surf seminarは、株式会社Tooが情報システム部門や経営層の方向けに開催する【IT戦略で組織がもっと強くなるには?】を考えていくセミナーイベントです。「人々がクリエイティブになれる環境をクリエイトする」をコーポレートミッションとするTooから、ITを活かしたクリエイティブな組織作りについて、企業を超えて考えるきっかけをご提供することが目的となっています。
第三回となる今回は、さまざまな事業に取り組む中で、急成長し続けるスタートアップ企業の情シス経験者に「急成長企業における情シス担当者の挑戦とは」という観点からお話をしていただきました。
コーポレートエンジニアのキャリアについて
株式会社10X
ファイナンス&コーポレート本部マネージャー
佐藤 亮太 様
株式会社10X様は、「10xを創る」をミッションに、小売チェーン向けECプラットフォーム「Stailer」を提供しています。
今年で設立6年目となり、現在は「10Xワークスタイル」という、全国どこからでも業務可能なワークスタイルを取り入れています。
登壇者の佐藤様は、大企業からスタートアップまで幅広いキャリアのご経験があります。今回は、スタートアップ情シスとして心がけていること、キャリア経験をもとにした大企業とスタートアップの違いなどをご紹介していただきました。
まず、スタートアップ情シスとして心がけていることとして、「事業に関心を持つ」「SaaS導入は慌てない」「自分しか知らないは作らない」「ボールを拾いすぎない」という点を挙げられました。
スタートアップの方は、サポートをするのが好きという人が多いと思いますが、あまり拾いすぎると同僚や後輩が育たないので、マネジメント業務になってからは最低限のサポートに徹するようになったそうです。
次に大企業とスタートアップ、それぞれのメリットについて説明していただきました。
大企業のメリットは安定性や専門性が身に付くこと、スタートアップのメリットは幅広いツールを触ることができることや、経営層と副業などのパラレルワークが可能な点をご説明されました。
セッションを通して、佐藤様が情シス担当者として業務中意識していることや、キャリア経験をもとにした大企業とスタートアップそれぞれのメリットについて教えていただきました。
スタートアップ企業、大企業どちらも経験した佐藤様ならではのお話であったように思われます。
急成長企業を支えるためのクラウドコスト最適化大作戦
Sumi 様
登壇者のSumi様は、Webエンジニア・情シス・CSIRTを経て、スタートアップの情シス立ち上げ・広報業務など幅広くご経験をされています。
今回はクラウド時代における、FinOpsを使ったコスト最適化の方法についてお話をしていただきました。
まず大前提として、ビジネスとコストの両立をするためにはクラウドに適したオペレーティングモデルが必要になることを述べられました。そのため、企業が使っているクラウドサービス数に比例して、クラウド支出は年々増加傾向にあるそうです。
しかし、クラウド支出の約3分の1は無駄になってしまっているのが現状となっています。
そういった無駄をFinOpsという考え方で削減していく方法を今回ご紹介していただきました。
FinOpsとは、Financial(ビジネス/財務)とOperation(技術/運用)の組織が、密に連携することで、財務健全化と運用の効率化を進めていく活動です。
FinOpsは可視化、最適化、運用という3つの取り組みを繰り返すもので、小規模な改善から始めて反復的に拡張していきます。
組織の壁を越えた全社横断的なチームが一般的で、特に財務担当者との連携が重要となってくるそうです。
FinOpsを実践する場合、可視化→最適化→運用→予測・計画といったフェーズで進めていく必要があります。具体的に説明すると、現状の把握のための可視化、そこから見えてきた課題に対する最適化へのアクションを起こし、運用を自動化したら可視化したデータをもとに最適化を繰り返し継続していく。そしてカルチャーとしての成熟度を高めて、組織として取り組む動きを作っていくというものになります。
このことから、コスト最適化にはFinOpsの実践が理想的であり、そのためには財務や経営層と手を取り合ってチームを結成する必要があるとのことです。
最後に、クラウド利用を抑制して成長を遅らせてしまうのではなく、最適なクラウド投資でビジネス価値を最大化するというFinOpsの考え方が今の時代に求められているという言葉で締められました。
セッションを通して、FinOpsの実践方法についてSumi様の経験をもとに教えていただきました。
クラウドコストについて課題感を感じている方は、ぜひFinOpsを実践してみてはいかがでしょうか。
情シス未経験から組織成長への挑戦
株式会社ROXX
コーポレートIT
木下 らら 様
株式会社ROXX様は、「時代の転換点を創る」というミッションを掲げており、HR Tech領域のSaaSサービスである「agent bank」「back check」を軸に展開しながら、新規事業にも取り組んでいます。
2013年に設立し、今年で10周年を迎えました。
登壇者の木下様は、社員数100人弱のフェーズで情シス未経験者としてジョインし、社員数が200人を超える頃には1人で情シス部門を担当されるようになりました。
今回は、ジョインしてから会社が200人超の規模に拡大するまでの取り組みについて、実際に起こった問題点と解決方法を4つ教えていただきました。
まず、1つ目の問題が、規程類の煩雑化です。
以前は、社内のクラウドサービスに正式な規程文書から個人のメモまですべてまとめており、欲しい情報がどこにあるのかわからない状況となっていました。
そこで、ポータルサイトの構築をし、最新の社内規程は最新ポータルサイトに、過去の情報や部署、個人の業務マニュアルは社内クラウドサービスにまとめることで業務効率化を目指したそうです。
人数が増える上で、規程類をわかりやすい所に置くことは重要であると述べられました。
2つ目の問題は、アカウント管理の問い合わせ数です。
情シスへのヘルプデスクにおける問い合わせが多いときで1日30件近くあり、業務が滞っていたそうです。
そこで、情シスを介さず、部署内で完結させられる運用方法へと見直しました。情シスは問い合わせ数が減り、社員はスムーズに業務ができるようになったそうです。
3つ目の問題は、セキュリティリテラシーが追いつかないという点です。
約2年で100人強の入社があったり、大幅な組織体制の変更があったりなど、全員に対してセキュリティについて説明するのは難しいという問題がありました。
そこで、全部署にヒアリングし、新しい情報資産区分は「漏洩情報価値」を基準に明確に定義しました。
今は部署ごとの対応も別途進めているそうです。
そして4つ目は、上場に向けての費用面での問題です。
こちらは、どこを目指しているのか、何のためにやっているのかの認識を経営層とすり合わせることで、より適切な選択肢を提案することが可能となりました。
値下げ交渉、棚卸しは成功しましたが、端末機種見直しに関してはまだ模索中とのことです。
最後に、情シスに求められることについて説明していただきました。
根底には果たしたい使命があり、「柔軟性」「頼る」「頑張る」の3点のバランスをとりながら目的のためにやりくりをすることが、多種多様な対応が求められる情シスに必要となってくるのではないかと投げかけました。
セッションを通して、規模拡大への取り組みについてのエピソードや、働く上での意識についてお話をしていただきました。
コーポレートIT部門に限らず、全ビジネスパーソンの方々が自身の業務に置き換えられるようなお話であったように思えます。
情報システム部門がビジネス戦略に与える価値
株式会社Gunosy様は、「情報を世界中の人に最適に届ける」をミッションに掲げ、情報発信アプリの開発運営・広告配信をおこなっています。この他、お茶の D2C ブランドとなるムードペアリングブランド「YOU IN」の開発・販売をしています。
2022年11月で設立10周年となるため、本イベントでは10周年記念Tシャツを着用してのご登壇となりました。200名前後の社員の方が在籍しており、安間様を含めて2名で情報システム部門を担当しています。
今回は部門を横断した全社DX推進に情報システム部門が新しい技術や発想を活かしながら、いかにビジネス価値の最大化に貢献できるかについてお話しいただきました。また、本セッションはToo Apple事業開発部・福田弘徳との対談形式となっており、福田からの質問にも答える形式で具体的な施策やエピソードもご紹介していただきました。
まず初めに、安間様から情シス環境を取り巻く課題とそれに対する解決策について具体例を挙げながらご説明していただきました。テレワーク環境下におけるセキュリティの課題についてはJamf Pro / Jamf Connectを導入、情シスチームの人手不足については昨今話題のLLM(GPT)を自社オリジナルにカスタマイズして活用することで業務効率化と生産性向上が実現したそうです。
次に、情シスの成長戦略について、澁川様から経営者の観点でお話ししていただきました。まず大前提として、日々多忙な業務に追われている中でも”仕事を楽しむこと”を思考の軸にしていて、個々の持つ知見や自由なアイディアを生み出せる環境づくりに取り組んでいると述べられました。
最終的な判断や新規事業の企画は人間が担当し、その他のあらゆる定型業務やルール化が可能な業務を洗い出してオートメーション化を進めていく。そして、DXという手段を使ってBusinessTransformationを実現するには「事業を理解する」「全体最適の視点を持つ」ことが重要だと話されました。
最後に新規サービス開発について、澁川様からご説明していただきました。「Gunosy AI(仮称)」は、LLMの技術を活用して社内ヘルプデスク業務を自動化したもので、規程や社内のマニュアルを学習させながら質問内容を理解していくことが可能となっています。今後は社内ヘルプデスクとしての活用に留まらず「サイエンスで機会をつくる」という行動指針のもと、新規ビジネスとして事業展開していきたいとのことです。
情シス、経営層どちらの意見も聞けた貴重なセッションとなりました。
企業の成長を止めないための取り組みは、どんな企業にも通じるお話であったように思います。
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株式会社Too
IT surf seminar 事務局