2021年7月16日、企業のIT戦略を考えるセミナーイベント 「IT surf seminar」をオンラインで開催しました。 各セッションの簡易レポートを公開します!
IT surf seminarは、情報システム部門や経営層の方に向けた、IT戦略で組織がもっと強くなるには?を考えていくセミナーです。
これから先の企業の在り方を考えた時、情報システム部門は経営層と同じ目線でビジネス環境全体を眺めることが求められます。
それに対して経営層は、IT投資は生産性を向上させ、ビジネスを広げるための重要な要素だという理解が必要になります。
「クリエイティブな組織とは」を、情報システム部門と経営層が目線を合わせて考える、きっかけ作りを目指すイベントです。
業種・規模感の異なる豪華な登壇者様に、これまでの情報システム部門の取り組みや経営部門との関わり方、組織としてのIT投資の考え方などをお話いただきました。
複数職種の経験から考える情報システム部門の取組
株式会社サイカ
開発本部 情報システム マネージャー
長谷川 真 様
エンジニア、人事、情報システム部(情シス)と複数の職種を経験してきた長谷川真さんは、現在社員100名以下のベンチャー企業で情報システム部門の立ち上げをおこなっています。
社外でいくつものコミュニティを立ち上げるなど個人での活動にも精力的で、Twitterでは「なーねこ(@na2neko)」のアカウント名で積極的に情報発信しています。
立ち上げた「情シスSlack」は参加者が4000人を超える人気のコミュニティに育っています。
スペシャリストではなくゼネラリスト寄りで、必要な部分では色々なプロフェッショナルに協力してもらうスタンスの長谷川さんに、ビジネス環境の変化や企業の「情シス」としての自らの取り組みについて話していただきました。
サラリーマンと副業とで様々な経営者と出会ってきた経験を元にした、経営者のタイプ別紹介は鋭い視点とユーモアのある内容で興味を惹かれました。そして「正解はなくても、合意はある」など、経営層との向き合い方のヒントを優しい視点で語りました。
ビジネスを取り巻く環境の変化として、テクノロジーの進化により各領域が細分化されていく中、プロフェッショナルが足りていない現状があるようです。「情シス」をとりまく環境ももちろん変わってきており、効率の良いシステムを使うなどの工夫や、各種プロフェッショナルとの協力が必要不可欠になっています。
その上で、変化に対応できるよう、経営層に寄り添っていく必要もあるとのことでした。
変化に対応していくには情シスの領域にも投資が必要ということで、予算承認について経営層と交渉したときの考え方や取り組んだ内容について紹介しました。関係している人たちの目線、立場を理解しつつ、情シスのスタンスや明確な予算の内訳を丁寧に説明していったエピソードは、とても参考になると思います。
ゼネラリスト、スペシャリストそれぞれの今後のキャリアの変化も紹介するなど、組織やキャリアのあり方が変化していく中で、どう働いていくかのヒントをたくさん得られるセッションでした。
非IT企業の情報システム部門が目指すべき姿とは
日光ケミカルズ株式会社
情報セキュリティ&IT管理部 セキュリティグループ チーフ
東原 雄一 様
日光ケミカルズ株式会社の情報システム部門で働く東原雄一さんからは、非IT企業の情報システム部門が何を目指すべきか、どう取り組んできたかを話していただきました。
日光ケミカルズは、創業75年の化粧品原料を中心とした化学品製造メーカー兼商社です。東原さんは情報システム部門で、経営層から求められるキーワードを元にシステム構築をしています。
まず、現在導入しているシステムや仕組みの全体像を紹介しました。AWSからスタートして多くのものをクラウド化しており、Box、Google Workspace(旧称GSuite)など多数のSaaSを導入しています。セキュリティの面ではOkta、Netskopeなどを導入しています。
その全体像を元に、Too R&D事業部・福田弘徳の質問に答える形式で、システム構築にあたっての進め方・考え方などについて解説していただきました。
日光ケミカルズは「創造性の涵養(かんよう)」を基本理念として掲げています。
人間にしかできないこと、人が人としてやるべきことにフォーカスするため、情報システムがやるべきことと社員がやるべきこととの二軸で考えることが必要と東原さんは考えています。
フォーカスする上で、情報システム部門に時間が必要という話題では、SIerの提案を鵜呑みにせず自分で時間をかけて調べることが、結果として時間短縮につながるという深い話も聞くことができました。
テクノロジーの進化による変化が激しく、非IT企業の経営層が将来を予測して情報システム部門を定義するのは難しい時代です。そこで東原さんは、自分たちが何をできるかを主体的に定義して、先回りで行動することを提案します。「待ってる時間がもったいない」と、ここでも時間の話に繋がりました。
最後に、非IT企業が情報システム部門に求めることとして、「既存システムの安定運用」「働き方改革への貢献」「ITを活用したビジネスへの貢献」の3項目を挙げて解説しました。それらを推進していくには、その会社のビジネスを知っていて、ITがわかる人が必要だと強調していたのも印象的でした。
経営層が率先してZoomとSlackでのコミュニケーションを推進した話など、興味深いエピソードもいくつか聞くことができ、盛りだくさんの内容でした。非IT企業の情報システム部門が、会社に貢献するための考え方や取り組み、限られた時間を有効に使う姿勢など、たくさんのヒントを与えられるセッションになったと思います。
100人100通りの働き方を支えるサイボウズ流情報システム部門の在り方
サイボウズ株式会社
情報システム部
青木 哲朗 様
サイボウズ株式会社は、グループウェアを通じて「チームワークあふれる社会を創る」ことをミッションとしており、働き方が多様な企業としても有名です。情報システム部では、海外拠点も含めた全社向け情報システムを企画・構築・運用しており、100人いたら100通りの働き方があるサイボウズ社員をシステム面から支えています。
多様な働き方を支える例として特に印象に残ったのが、業務で使うPCの機種やスペックを従業員が自分で選択できること、そして各人のPC環境が社長から新入社員まで全社員にオープンになっていることです。
ハイスペックなPCや希望するキーボード、マウスなどを貸与することで従業員のモチベーションを上げつつ、情報をオープンにすることが無駄な投資の抑止力に繋がっているとのことでした。
情報システムにお金をかけず離職率も高かった10数年前から、戦略的投資を進めたことで生産性が上がり、離職率も減っていったエピソードも示唆に富んでいると感じました。
ハイスペックなPCの貸与のほか、使いやすいビデオ会議システムやフルリモートでも安心できるセキュリティシステムも導入しています。快適なIT環境がSNSでシェアされ、企業イメージ向上とともに採用にも貢献しているそうです。
情報システム/バックオフィス部門は利益を生まないコストセンターと呼ばれることがありますが、会社・組織はチームであり、同じチームの中にプロフィットセンターもコストセンターもないという考え方の紹介もありました。
お互いの役割を理解しリスペクトし合えるチームにすべきと、チームワークを大切にする会社らしい提案でした。
情報システム部の取り組みや考え方について一通り紹介いただいたあと、Too R&D事業部・福田弘徳の質問に答える形式で、具体的な取り組みやエピソードなどを紹介しました。
情報をオープンにすることに社内からの反発がなかったか、コロナ禍での新人に貸与するPCのセットアップについてなど、興味深い話を聞くことができました。
多様な働き方を支える情報システム部門の取り組みを、具体例を交えてたくさん聞くことができたセッションでした。情報システムへの積極的な投資が、多様な働き方を推進し業績アップにも繋がったエピソードは、多くの情報システム担当者に刺激を与えたと思います。
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少し先をゆく各社の取り組みから、今よりもっとクリエイティブな情報システム部門のあり方を一緒に考えてみませんか?