Too主催の特別セミナー「.design surf seminar 2017 - デザインの向こう側にあるもの - 」が、2017年10月13日(金)に虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区虎ノ門、虎ノ門ヒルズ森タワー4F)で開催されました
昨年に続き第2回目となる今回も、デザインをビジネスの側面から捉えた9本のセミナーを行いました。
本レポートでは、元日産自動車専務執行役員チーフクリエイティブオフィサーの中村史郎さんによる講演「ニホンのクルマのデザインのココロ」について紹介します。
スピーカー紹介
中村史郎氏
株式会社 SHIRO NAKAMURA DESIGN ASSOCIATES 代表 1950年大阪府生まれ。1974年武蔵野美術大学卒業後、いすゞ自動車入社。米国Art Center College of Designに留学、1981年首席で卒業。その後GMデザイン勤務、いすゞ欧州スタジオデザインマネージャー、アメリカいすゞ商品企画副社長を経て、デザインセンター部長に就任。1999年10月カルロスゴーンのリクエストで日産自動車に入社。 2000年デザイン本部長に就任、2001年より常務執行役員。2014年にチーフクリエイティブオフィサー専務執行役員に就任。グローバル日産デザインの総責任者として日産のリバイバルと成長に貢献。欧米のデザイン団体やメディアなどで、その業績と影響力を評価され数多くのアワードを受賞。2017年3月日産退任後、株式会社 SHIRO NAKAMURA DESIGN ASSOCIATESを設立し、デザインコンサルタントとして活動。
今年のdesign surf seminarのオープニングを飾ったのは、その道を極めた人の話を聞く特別セッション「ニホンのクルマのデザインのココロ」でした。スピーカーは日産でデザインの総責任者を務めていたカーデザイナーの中村史郎さん。中村さんの日産退職後初の講演ということもあり、業界関係者が集まり業界誌の取材も来るなど注目度の高いセッションでした。
43年間のデザイナー人生を60分で紹介
今月67歳を迎える中村さんが自らデザイナー人生を振り返るということで、本人曰く「ヘタでしょ」という昔描いたデッサンなど貴重な資料がいきなり登場し、会場の期待は高まります。
43年間のデザイナー人生の中で転機となったのは、いすゞ自動車から日産自動車への転職。日本のデザイン界を変えるチャンスと思い決意したそうで、常に日本のデザイン界全体を意識して活動していたことがうかがえました。
日産ではデザインのマネジメント組織を作るという大仕事も果たした
日産に入ってからは、これまでの日産のデザインを研究し、その「DNA」を分析することが重要だったと振り返ります。Heritage(遺産、伝統)を大事にして新しいものを作ることを意識して、GT-Rなどのデザインは生まれたそうです。
穏やかな語り口で過去のプロダクトを振り返る
フェアレディZから始まり、GT-R、INFINITIなど自らが関わり印象に残ったプロダクトを紹介していく中村さんの解説に、身を乗り出して聞き入る人も多く、唸り声や笑いが各所で起きていました。
日本のデザインは二次元の表現力が高い
日本のデザインの特徴として「二次元の表現力が高い」という点を挙げていた中村さん。2002年のCUBEは「止まっているように見える」がコンセプトの、日本ならではの二次元的なデザインなのだそうです。左右非対称で後ろから見ると窓が片側に寄っており、右ハンドルと左ハンドルでデザインが違うという珍しい試みの紹介もありました。
手掛けたプロダクトの数々の紹介は聴き応えがありました
2007年のGT-Rはガンダムっぽいデザインで作られ、デザインをジャッジする立場の中村さんはそれをポジティブにとらえるように意識したとのこと。世代によって価値観やカッコイイと思うものは違って当然なので、若い世代の価値観を頭で理解する柔軟性が必要という考え方は、デザインに限らず様々なケースで応用できるはずです。
最後に若いデザイナーへのメッセージも
中村さんのデザインに向ける真摯な姿勢を感じ取ることができたこのセッション。アメリカのアーティスト/音楽プロデューサーのハービー・ハンコックの「創造するのにいちばん大事なのは誠実なこと」というフレーズの紹介や、「作る側の思いがないと伝わらない」という経験に裏付けられた言葉も印象深く感じました。
「デザイナーはアーティストでもビジネスマンでもある」など、印象に残る言葉が次々と発せられました
最後に若い人へのメッセージとして、「早くロールモデルを見つけること」「会社は自己実現のプラットフォーム」という言葉もいただき、会場にいた学生や若手デザイナーにはとても参考になったのではないかと思います。
その道を極めた人の話を楽しく聞けた貴重なセッションでした
デザイナーには直感力と論理力が必要という言葉に続き、「論理力があれば、わたしのように才能がなくてもカバーできる」と発言し笑いを取るなど、終始やさしい語り口で笑いの絶えないセッションでした。
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