あにつく2022レポート | 『GUILTY GEAR™ -STRIVE-』オリジナルMVメイキング(サンジゲン)

9月23日(木)から9月25日(日)で開催された「あにつく2022オンライン」より、Day1の「『GUILTY GEAR™ -STRIVE-』オリジナルMVメイキング」のイベント内容をご紹介します。


ウェビナー概要

アクション!バトル!CGアニメーションの秘訣

MV案出し・字コンテ・Vコンテの資料を公開。一部カットを抜粋しての解説もあります。
監督の石川真平、コンテ協力の森川滋、制作プロデューサーの保住昇汰との対談を交えながら、制作秘話を語ります。

 主催 :株式会社Too
 協賛 :オートデスク株式会社
 講師 :株式会社サンジゲン 石川 真平 氏
     株式会社サンジゲン 森川 滋 氏
     株式会社サンジゲン 保住 昇汰 氏


登壇者紹介

まずは、『GUILTY GEAR STRIVE “Find Your One Way” 』のMV演出陣である登壇者を紹介します。

監督とコンテを務めた石川 真平、コンテ協力や演出監修を務めた森川 滋、そして制作プロデューサーの保住 昇汰です。

メイキングに関して説明する前に、まずはMVをご覧ください。

オファー経緯・内容

本案件は、2022年の4月頃にアークシステムワークス株式会社様(以下アーク様)からオファーをいただきました。ソルのテーマ曲を使ったMV作成ということで、公開時期の2022年8月を目指して制作を開始しました。

アーク様からの要望は、

・楽曲をフックにキャラクターと世界観の魅力を伝え、ギルティギアの魅力を伝える
・ギルティギアを知らなくてもカッコ良いと思える映像に

の2つでした。

ギルティギアのファンが喜ぶ映像であることはもちろん、ギルティギアを知らない層も「なんかカッコ良い」と思える映像作りを心掛けました。

ソルの生きざまや半生を描き、ソルのヒーロー性も出すイメージで制作しました。ロケーションを巻き込む破壊表現など、一撃が重いアクションに力を入れて作ってほしいというオファーをもとに進めていきました。

今回のセミナーでは、メイキングと言っておきながらCGの画像はあまり出てきません。その前段階であるプリプロ(プリプロダクション)の話や、CGアニメーターが監督を務める上での苦労話などとあわせて説明していきます。

製作工程

MV案出し1

MVの案出しについて説明していきます。

画像の右側にあるグラフは簡単なメモで、下には楽曲のタイムラインが書いてあります。上にある折れ線グラフは、楽曲で盛り上がる箇所を把握するために書いたバロメーターです。

最初の案出しの段階で、ソルの半生を描くために時間をかけて作品の歴史について調べていきました。この段階で、グラフに沿ったかたちで全体の骨格は作れました。歴史を調べていく上で、ソルの人生の壮絶さを再認識しました。その上で、ソルの「逆境を行動で乗り越えていくカッコ良さ」を表現することを念頭に制作していきました。

MV案出し2

さきほどのメモ書きのグラフを分かりやすくしたものがこちらです。横軸の表に画像を付けて、アーク様へのプレゼン用に作った資料です。画像にもあるように、最初は「ソル、バイク走行中の回想」として進めていく予定でした。しかしMVを観てもらえれば分かりますが、ここは当初の案出しから変更したポイントです。

字コンテ

続いて字コンテです。字コンテとは、詳しい描写を表す絵コンテに対して、字でどのような映像を撮影するかを表現する方法です。本作でも案出しの後すぐに絵コンテに入りたいところでしたが、その前に全カットで行われてることを字コンテで一回洗い出しました。ここでは、CGと作画の使い分けや美術の背景を使うロケーションなども含めて整理していきました。

また、弊社の役員から「字コンテだけじゃわかりづらいから映像にしよう。」という意見が出たため、イメージで伝わるように字コンテムービーを作りました。

その後森川さんと相談して、変更点に挙げられたのが画像の赤丸です。冒頭のバイクで走行しつつ回送するカットは、この段階で変えようという話になりました。この変更に限った話ではなく、本作では「とにかくカッコ良いシーンを作る」ということを常に意識していました。

字コンテムービー

さきほど説明した字コンテムービーです。画像のようにタイミングも含めて字でカット割りしていき、イメージを固める作業です。伝わりやすくするために、文字だけではなくフリー素材を集めて作ることもあります。

字コンテムービーを出した後、「早く絵が見たい」という声が上がったこともあり、次のビデオコンテの段階に進みました。

ビデオコンテ

さきほどの字コンテをベースにして作成したビデオコンテのスクリーンショットです。ここでは最終形のカッティングもしていて、作業者にお願いするために1つずつ定尺出しもしました。

画像にありますが、ここで森川さんから2つのアドバイスをもらいました。

・ソルの再生能力を生かした演出を!
・表現をもっと極端に!

最初に決めた「ソルの壮絶な人生を表現する」ために足りなかったところを指摘してもらいました。その後に森川さんに書いてもらった絵コンテは、血がすごく流れている絵力のあるものでした。血を流すカット1つから、「ここまでやっていいんだよ」というメッセージ性を感じました。演出する上で、勝手に自制していた部分を改めて見直すいい機会になりました。

Before & After

ケース1

コンテの段階で中身を変更をしたケースをBefore & Afterで紹介していきます。

Beforeのカットでは、地面を削ってソルを足止めする程度でした。しかし、森川さんのアドバイスをもとに「もっと凄みを足す」ため、腹を切られた上に吐血するカットに変更しました。この変更によって、ソルが逆境を乗り越えていく様をより表現することができました。

ケース2

次に、巨大な敵『ジャスティス』との戦闘シーンです。

Beforeでは、捕まえられそうになりながら敵の肩付近を走ってジャンプしているソルを描いていました。しかし、もう少しダメージを受けるところを見せたかったため、殴られて背ビレに激突するカットに変更しました。

こういった変更で大事なのは、「誰に向けて作っているのか」を考えることです。アニメーション制作はスタッフ全員でやっているがゆえに、作業量の増加を懸念して変更・修正をためらってしまうこともあります。

しかし、極論を言ってしまうとそれは視聴するお客様には関係ありません。スタッフに向けて作るのではなく、お客様に向けて作るのはエンタメの基本です。これからCG業界やアニメ業界に関わりたい人は、このことをぜひ頭に置いておいてください。

ケース3

次にこちらのBefore & Afterの画像を紹介します。

上の画像のBeforeでは、崖から落ちながら持っている剣でスピードを落とすだけでした。このカットでもアドバイスをもとにソルを火だるまにして、その火を崖でこすりつけて消すというカットに変更しました。それにより、映像に凄みを加えることができました。

下の画像は、『ラムレザル』という敵と戦っているカットです。ソルが腹を切られた後にビームを受けて、それでもさらに突っ込んでいくというカットでした。このカットも、より苦しそうに見せるために血を流しながらも突き進んで攻撃するというカットに変更しました。

ケース4

こちらが今回紹介する最後のBefore & Afterです。

上の画像は、『アリエルス』という敵と対峙した時の顔の寄りのカットです。より極端に表現するために、ショッキングな色にした上でさらにベロを出すカットに変更しました。それによって、アリエルスが持つ「本当は狂っているキャラクター性」を表現することができました。

次は下の画像についてです。Beforeでは、MVが終わった後にゲームに繋げる意図も込めて「Will continue on the main story.(続きは本編で)」と書いていました。しかし、しっくり来なかったため「もっとファンの方に伝わる表現は何だろう」ととにかく考えました。

その中で、ギルティギアの格闘ゲームの対戦前の「Let’s Rock.」のワードが頭に浮かびました。シンプルですが、このワードがゲームに繋げるための要素を全て持っていると思い、大部分できている中で急遽変更することになりました。ギルティギアの世界観を伝えるのに分かりやすいワードで、かつカッコ良く仕上げることができました。

まとめ

今回はCGには触れず、製作工程に関してメインに話をしていきました。

CG制作をしている方でこれからコンテや演出も挑戦したい場合、これまでの決まった工程だけではなく、あくまでこんなパターンもあるということをお伝えできればと思い、お話させていただきました。絵を描かない人がどういう映像を作るか、イメージを伝える上でまず字コンテから始めるなど、様々なアプローチがあります。フリー素材を使うなど、進める際には絵で見せることは重要です。

本作の制作では製作時間も1つの課題でした。そのため、時間を短縮するという点でも、字コンテムービーを作成しました。変更したいカットが出た際に、既に絵を描いていたら直すのは大変ですが、字コンテであれば文字を変えるだけで済みます。こうして、作業時間を大幅に短縮することができました。

また、本作の制作においてもすぐにスタッフが集まれるようにリモートワークの環境をフル活用し、ズームでいつでも相談できるようにしていました。サンジゲンではコロナ前からリモートワークを導入していたため、コロナ渦においても特に影響なく制作を続けられました。今回の登壇者である3人もそれぞれ浅草橋と荻窪、京都のため、一緒のスタジオでは仕事をしていません。普段からズームなどを駆使して打合せをしています。

サンジゲンには複数のサテライトスタジオがありますが、スタジオごとに違う作品を作るのではなく、全スタジオで1つの作品に取り組んでいます。

Q&A

Q1.セルルック調のCGで作るにあたって、こだわっているところや気を付けているところはありますか?

本作の制作でこだわっているポイントは、動きのタメツメやコマの使い方、レイアウトなどです。アニメの画面の枠で、レイアウトをどうするか、映像としてアニメでどう見せるかを常に考えていました。

また、寄りのカットではAfter Effectsでディティールを足したりしています。ソルの寄りのカットでも、ハイライトや額当ての傷などを書き足しました。揺れものや質感などのディティールの調整や、レタッチは特に気を付けて作業していました。

Q2.結構レタッチをしているように見えるのですが、アニメーターの方が作業しているのでしょうか?また、ゲームもセル調のCGですが、違いを出す点やあえて寄せている点など、意識しているところがあれば教えてください。

レタッチに関しては、弊社ではプライマリとセカンダリの後にターシャリという工程を設けています。ターシャリでは、作画と3Dのアニメーターの両方が専門的に質感足しやディティール足しを行っています。ここでは、主にAfter EffectsやTVPaintを使って作業しています。

また、制作する中であえてゲームに合わせようとしたところもありました。アーク様の影付けの仕方が特徴的だったため、そこを意識しながら全カットで陰影を付けていきました。

Q3.今回はゲームのファンにも喜んでもらえるような演出もされたと思いますが、どのようにアイデア出しをしていたのでしょうか。

最初にとにかくギルティギアの設定を洗い出しました。洗い出していく中で、ソルの歴史や裏設定の情報を集めていきました。その1つの表現として、歴代のボスキャラたちを思い出すかたちでボスキャラを出すことになりました。

アイデア出しのために設定や歴史を追求したことが、有効的だったと思っています。細かい設定や歴史を知っていく中で自分自身もどんどん作品のファンになっていきました。もはや、「自分の見たいギルティギアのMVを作った」と言ってしまってもいいかもしれません。その結果納得のいくMVを制作することができました。

Q4.どのカットもとてもかっこいいですが、特に力を入れたところや見てほしいところはありますか。

今回は、ファンの方はもちろん知らない方にも伝わってほしいという思いがありました。ラムレザル戦とジャスティス戦、アリエルス戦の3つの戦闘シーンは長回しだったこともあり、特に力を入れて作業しました。

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