教員交流会で聞くiPad・Mac活用の実践例「Teacher's Summit 2024イベントレポート」

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    ICT教育に先進的に取り組まれている教員同士の情報交換イベント開催!

    「1人1台のiPadやMacを活用できる授業を増やしたい」「校内のICT環境をさらにステップアップしたい」
    そんな教員の皆様が集まり、情報を共有いただけるリアルイベント「Teacher's Summit 2024」が開催されました!

    2024年8月5日 株式会社TooのThe Gallery Tooにお集まりいただき、3校の学校のトークセッション・生成AI画像に触れるワークショップを実施いたしました。
    参加者が共感でうなずく場面が見られたトークセッションや、興味のある方も多い生成AIの活用の仕方など、当日の様子をレポートいたします!

    ゲスト登壇①:公立高校におけるICT教育の展開について【神奈川県立生田東高等学校】

    神奈川県立生田東高等学校 秋山 紀将先生より、幅広い教科で実践しているiPadの活用例やICT利活用を進めるポイントについてご紹介いただきました。

    ICT技術を用いて効率化を図る事業が始まり、今年で3年目。
    生田東高等学校では、現在はほぼ全ての先生がICTを活用し、全ての授業で生徒がiPadを使うようになっています。
    iPadと合わせてApple Pencil・キーボードを導入されています。
    iPadを使うことで、キーボード入力が不向きな教科の授業もカバーできるようになり、また壊れにくいため持ち運びの不安もなく、いつでもどこでも学習できる環境が整いました。

    神奈川県立生田東高等学校 秋山紀将先生

    ICT利活用を進めるポイント

    ビジョン+環境+委ねる

    生田東高等学校で大切にされている3つのキーワードです。

    ①ビジョン:何のためにICTを活用するのか

    どんな授業を実現するためにICTを活用するのかビジョンを明確にして、全校でICTを使えるようにされています。
    探究する姿」「自ら学びを調整する姿」「協働する姿」の3つの姿勢が生徒たちに見られるような授業作りを目指しているとのことです。

    ②環境:言い訳できない環境整備

    いつでもストレスフリーにICTを使えるような環境作りをされています。「人が環境を作り、環境が人を作る」と秋山先生は語ります。
    いつでも使える環境の一例として、ロイロノートを活用しています。ノートやプリント代わりに使用でき、その場で提出したり、匿名コメントを募ってシャイな生徒も発言しやすくしたりと日常的に活躍しているそうです。

    ③委ねる:専任チームによる組織作りと、ワクワクする研修作り

    今までの校内のICTの進め方において、ICT推進担当を決めても他の業務と兼任しているため忙しくてなかなか取り組めない、他の先生に活動が広まらないといった課題がありました。
    そこで生田東高等学校ではICT専任チームを作り、主体となる教科担当者・学年担当者をサポートする体制を作りました。また、ICTチームと教科・学年担当間でお互いにサポートやフィードバックしやすい体制を整え、学校全体を巻き込む工夫をしています。
    校内研修を行う際は、機能や使い方を教えるだけにとどまらず、探求する姿・自ら学びを調整する姿・協働する姿を引き出せる授業を作れるようにサポートすることを心がけているとのことです。

    学びを調整する力を育むモデル授業の紹介

    探求する姿・自ら学びを調整する姿・協働する姿を作る授業例として、ChatGPTを使った授業をご紹介いただきました。
    既習内容についての問題をChatGPTに投げかけ、得た情報に対して資料集などでファクトチェックを行い、正しい内容をロイロノートにまとめて図解する、といった授業です。
    こうすることで、単純な振り返りに終わらず、知識を自ら取りに行く=自ら学びを調整する力を育むことができます。

    今後の展開

    生田東高等学校は2024年度DXハイスクールに採択され、iMac 21台を新たに導入したPC教室を整備し、より高度な情報の授業の実現を目指していくとのことです。
    どんな授業作りを目指していくのか、学校全体で明文化し共通認識を持つことによって、指針に沿って新しい取り組みを考えたり、お互いにサポートしたりしやすくなることが分かるセッションでした。

    ゲスト登壇②:「つくることで学ぶ」学習環境【湘南学園中学校高等学校】

    湘南学園中学校高等学校 小林 勇輔先生には、クリエイティブな授業とは?というテーマで、アドビ製品や3Dプリンター・レーザーカッターなどの出力機器と、iPad・Macを組み合わせた作品例も交えながらお話いただきました。

    湘南学園中学校高等学校 小林 勇輔先生

    デバイス配備の変遷

    一人一台端末の整備に加え、PC教室もアップデートしています。2018年当時はWindows PCを導入していましたが、生徒のiPadとの相性を考えMacを導入し、メディア室が整備されました。

    湘南学園では、2018年よりテスト的に生徒用iPadの導入を始めました。当初は、いわゆるガチガチに厳しく機能制限を行っていたため、生徒が次第に利用しなくなり定着しなかったそうです。
    そこで、2019年からはBYOD(Bring Your Own Device)方針で自由にデバイスを持ち込む形式に変更しました。制限も一転して、ゆるやかな管理に方針転換しました。デバイスは自由でしたが、7~8割の生徒がiPadを使用していたそうです。
    現在は、中高生全員が一人一台端末配備となっています。

    クリエイティブな授業とは?

    「Creative Confidence」という言葉を知人から教わったとのこと。
    「やりたいと思った時にやれる」「自分には達成する力がある」と思える感覚のことです。この感覚がないと主体性は生まれません。
    生徒が何かが挑戦したいと思った時に、それを形に出来るような学習環境を整備されています。

    例えば、生徒が自ら作りたいと思ったものを実現した例として、文化祭の準備風景を紹介いただきました。
    お化け屋敷を行うクラスの生徒から、3Dプリンターで小道具を作りたいという相談があり、ろうそくや襖の取っ手などを自分たちで設計図を書いて作っていたそうです。

    また、小学生対象の学童でもメディア室を開放し、放課後の自主制作も可能にしています。
    言葉遊びから生まれたオリジナルの商品名とイラストを、レーザー加工機で刻印した作品を見せていただきました。
    たとえ遊びの延長であっても、作りたいものを作れるという成功体験が大切。その体験を作れるのがICT機器である、と小林先生は語ります。

    自主性・主体性を伸ばす授業例

    ラスターデータ・ベクターデータの違いを学ぶ情報の授業のなかで、IllustratorとPhotoshopが使用されています。
    先生がひとつひとつ手順を教えて一斉に操作するのではなく、Google Classroomで共有された参考動画を見ながら生徒たちが各自作業を進め、分からない箇所を先生がフォローする授業形式をとっています。

    生徒たちが自分の力で自分のペースで取り組むため、自主性を伸ばすことができるとのことです。
    実際見せていただいた作品例は、同じお手本動画を見ながら作った図形のイラストにもかかわらず、形や色などのアレンジが加わり個性豊かなものとなっていました。

    このように授業や課外活動の時間を通して、「つくることで学ぶ」ことを大事にされています。
    自主性を伸ばすことで「自分にできる」感覚が身につき、その成功体験が積み重なり「つかう側からつくる側」になることで、主体性を持って物事に取り組めるようにになります。

    生徒がやってみよう!と思える授業の仕方、そしてやりたい気持ちを支えるICT環境作りの重要性が伝わるお話でした。

    ゲスト登壇③:郁⽂館夢学園独⾃の教育DX 〜デジタルキャンパス化構想/現場の実践例〜【郁文館夢学園】

    郁文館夢学園では、「⼦どもたちに夢を持たせ 夢を追わせ夢を叶えさせる」というビジョンのもと、生徒の将来なりたい⾃分の姿から逆算し指導を行う「夢教育」を教育の軸にされています。
    そんな郁文館夢学園で、夢教育を実現させるためにどのようにデジタルキャンパス化を進めているのかを人材開発室 主任 榊原賞 様から、現場でどのように授業をデジタル化しているのかを同部署 専任講師(理科)の井内かおり先生からお話いただきました。

    デジタルキャンパス化構想

    榊原様から、生徒一人ひとりに合わせた夢教育を実現するための4つのステップをご紹介いただきました。

    郁文館夢学園 榊原 賞様

    STEP1 学習環境の構築
    STEP2 教員の教える効率と働き⽅の効率を最⼤化
    STEP3 データベースの構築と活⽤
    STEP4 夢教育DB×AI×匠教員による教育⾰新

    STEP1 学習環境の構築

    2015年より1人1台端末を導入。
    スムーズに個別に合わせた学習サポートができるように、大容量通信ネットワークの環境も整備されています。

    STEP2 教員の教える効率と働き⽅の効率を最⼤化

    学校専用のポータルシステムに全ての入り口・情報を集約し、データを効率的に活用できる仕組み作りをされています。
    先生と保護者のやりとりから、生徒の課題提出、出欠管理や人事・会計などの公務まで、ひとつのポータルで完結出来るようになっているそうです。

    STEP3 データベースの構築と活⽤

    データの管理をポータルで一本化できるようになりましたが、今後の構想としてさらなるデータ連携や、ビッグデータの分析と活用などに繋げていきたいとのことです。

    STEP4 夢教育DB×AI×匠教員による教育⾰新

    データベースやAIを活用して先生の指導の量・質を向上し、「夢教育」を日本に広めていきたいと将来の構想を語っていただきました。

    ⼦どもたちの幸せのためになる授業作りをしてもらうため、先生の業務効率化のため、人材開発室では毎年内容を見直しながら教職員に必要な研修を企画・実施されています。
    ICTデバイスありきに研修を行うのではなく、先生の働き方を効率化し指導の効果を高めるために研修を行なっているというお話が印象的でした。

    ペーパーレス化で業務効率アップ

    井内先生からは、授業現場での業務効率化として、紙のプリントや板書などをデジタル化している取り組みをご紹介いただきました。

    郁文館夢学園 井内 かおり先生

    デジタル化のメリット

    「学校は紙社会!」というイメージは現在でも根強いのではないでしょうか。そんななか、紙から脱却することのメリットを語っていただきました。

    まず、紙の保管が不要になる点があげられました。スペースや印刷の時間が節約できるうえ、iPad上のデータはパスワードが必要となるため、紙で保管するよりも情報漏洩のリスクが低いことも魅力です。

    また、情報が一本化できることも大きなメリットです。データは検索もできるため、紙のプリントを探す手間が省け業務時間削減に繋がります。

    デジタル化の実践例

    ・授業のデジタル化(生徒に対して)
    ・授業のデジタル化(先生に対して)
    ・校務のデジタル化

    ・授業のデジタル化(生徒に対して)
    生徒への配布物や、生徒からの提出物のやりとりをデジタル化されています。
    授業プリントは学校のポータルを通じて配布、課題提出はロイロノート上で行われます。
    デジタル化した恩恵として、提出期限の通知ができるため紙で課題回収していた時よりも提出率が良くなったとお話されていました。

    ・授業のデジタル化(先生に対して)
    学内の教員研修を通じて他の先生方へも板書のデジタル化をひろめているとのことです。
    実際にGoodnotes 6を使ったデジタル板書の様子を見せていただきました。
    iPadの二画面表示機能(Split View)で、穴埋め問題の答えの書き込みあり/なしの2つのGoodnotesのノートを開きます。答えなしのものを教室のスクリーンでは投影しますが、先生の手元では2つのノートが見えたままの状態です。
    答えありのノートから、該当の答え部分を選択してSplit Viewの画面をまたいで移動すると、スクリーンではまるで画面外から答えが表れたように見えます。
    iPad本体の機能とGoodnotesの機能の合わせ技に、会場が盛り上がりました。

    ・校務のデジタル化
    教務手帳や会議資料など、授業外で使っていた紙もペーパーレス化を進められています。
    例えば、教務手帳はNumbersでテスト管理シートや提出物管理シートを作成し、成績を一覧で見られるように工夫されていらっしゃいました。
    会議資料はGoodnotesに集約し、手書きメモもデジタルでとれるようにされているとのことです。

    多数の実践例を交えてお話くださり、真似したくなるような内容が盛りだくさんのセッションでした。

    生成AIを使った自己紹介【iPadワークショップ】

    今年のiPadワークショップは、参加者アンケートでも関心度が高かった生成AIをテーマに行いました。
    Adobe Fileflyを使って、生成AIで自己紹介画像を作成していただきました。

    「カメラ」「コーヒー」「トイプードル」など、日本語でキーワードを入力するだけで画像生成ができる手軽さがAdobe Fileflyの魅力です。
    ポップなイラスト調やリアルな写真のような雰囲気など、画像のスタイルも選ぶことができます。

    自己紹介画像の作例

    自分の好きなものを盛り込んだ自己紹介画像を生成するため、プロンプトの書き方を何通りも試すなど、試行錯誤をしながら楽しく学んでいただける時間となりました。

    作品の共有

    Adobe Fireflyの安全性

    最近では、様々なクラウドツールやアプリケーションにAI機能が搭載され、知らないうちにAIを使っていることも増えてきました。
    しかし、授業で使ううえでは、信頼できる情報やツールを扱いたいものです。

    Adobe FireflyのAI学習モデルは、Adobe Stockの画像やパブリックライセンスコンテンツなど、安全なデータのみを使ってトレーニングされています。
    また、特定の有名なキャラクター名を入力しても、そのキャラクターが出力されないようになっていて、著作権侵害を防ぐ設計がされています。

    「Teacher's Summit」を通してTooが伝えたいこと

    ゲスト登壇・生成AIのワークショップ・その後の懇親会を通して、活発に新しいものを取り入れ、よりよい教育をしていきたいという先生方の想いが伝わってくる1日でした。

    先生方とお話をしていると、他校の取り組みを聞く機会は少ない、校内でICT担当者が他の先生方にICT活用をひろめるのに苦労している、といったお悩みをよく耳にします。
    クリエイティブな環境をつくるパートナーとして、そういった先生方に最新のICT情報交流の場をお届けし、各学校のICT環境をステップアップするお手伝いが出来ればと考えています。

    最後に、Facebookグループでも、学校様の取り組みやiPad・Macの活用アイデアを発信中です。ぜひそちらもチェックお願いいたします!

    Facebookグループ「Teacher's Summit」へのご参加はこちらから外部サイト

    記事は2024年9月 9日現在の内容です。

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