「企業におけるApple Vision Proの可能性とユースケースのご紹介」イベントレポート

2025年2月21日(金)に、セミナー「企業におけるApple Vision Proの可能性とユースケースのご紹介」が開催されました。Apple初の空間コンピューティングであるApple Vision Proの登場によって、仕事はどう変わるのでしょうか。本セミナーでは、Apple Vision Proによるビジネス変革の可能性や企業での活用事例を、株式会社ホロラボ様と一緒にご紹介しました。
当記事は、2025年2月に開催されたイベントで話された内容のレポートです。
情報はイベント時点の最新のものです。
株式会社Tooは2025年現在、法人向けにApple Vision Proをご提案・販売可能な唯一の正規取扱店です。
企業への導入はぜひTooまでご相談下さい。
Apple Vision Pro in Enterprise
デジタルと現実をシームレスに融合する、まったく新しいデバイスであるApple Vision Pro。
その概要と特徴を、株式会社Tooより紹介しました。

Apple Vision Proは視線や手指の動き、音声によって自然に操作できることから、両手を自由に使った作業を可能にします。また、ディスプレイは片目2,300万以上のピクセル数を誇る高解像度のため、細かな文字や精細な画像も鮮明に表示され、視界に広がる世界を没入型の空間に変えることができます。
こうしたパフォーマンスを支えているのが、M2チップと新開発のR1チップです。R1チップは複数のカメラ、センサー、マイクから収集されたデータをリアルタイム処理し、タイムラグを極限まで減らしています。
Apple Vision Proには、空間コンピューティング向けに設計された「visionOS」が搭載されています。ワークスペースを無制限に広げられるため、さまざまなアプリやタスクを同じ空間に表示させることが可能で、リモートでの共同作業にも大いに役立ちます。
世界各地にいるメンバーがApple Vision Proを使うと、共同作業をしているスペースに自分そっくりの「空間Persona 」を表示できたりと、同じ部屋にいるかのようにコミュニケーションを取ることができます。
プライバシーやセキュリティも重視されており、生体認証である「Optic ID」によって個人データが暗号化されています。また、頭部への装着型のデバイスのため、ワークスペースがプライベートな空間になり、オフィスの外でも情報を漏らすことなく業務に取り組むこともできます。
続いて、企業におけるApple Vision Proの活用例が紹介されました。SAP Analytics Cloudのアプリでは、3Dグラフで表現される空間ダッシュボードを用いて各地域ごとの売上を可視化できます。より直感的に数字を把握できることで、ディスカッションや最適な意思決定に役立ちます。
そのほかにも、パイロットの教育用にバーチャルコックピットシミュレーターを開発した例や、プロダクトデザインでの3Dモックアップへの活用や、作業現場に作業指示をガイド表示される活用方法など、これまでとは異なる新しい方法で業務を効率化させる例が紹介されました。
国内のユースケースのご紹介:株式会社ホロラボ様より
株式会社ホロラボの中村様からは、Apple Vision Proの国内での活用例を具体的にお話しいただきました。
ホロラボは「フィジカルとデジタルをつなげ、新たな世界を創造する」をミッションに、XRや空間コンピューティング技術を活用したアプリ開発やサービス提供をしています。また、Apple Consultants Networkに認定され、Apple Vision Proを使ったコンテンツ開発やサービスパッケージの提供などを手掛けています。
Apple Vision Proが米国で販売開始された時にはハワイまで購入しに駆けつけ、ワイキキビーチそっちのけで日本に蜻蛉返りしたというエピソードに、会場からは笑い声が聞こえました。
まずはApple Vision Proが得意とする領域についてです。
一つは、モノを作るときの設計・試作です。これまでにない新しい製品を作る際に、3Dのデータの設計図をApple Vision Proに入れることで、高精細なディスプレイによって実物に近い状態でフィードバックを得ながら、設計・試作を繰り返すことができます。
もう一つは、販売支援での活用です。こちらも高精細なディスプレイを活かし、実物に近い体験を顧客に提供できるのではないかと話されました。

続いてホロラボが携わったユースケースの紹介に移ります。
株式会社日建設計の「Whitemodel」では、物理模型に代わるデジタル模型にApple Vision Proが活用されました。細かな線も鮮明に描画されることから、デジタル模型の品質はデザインチームからも好評だったとのこと。また、模型の縮尺を自在に変更できるため、施主とのイメージ共有がよりスムーズになったそうです。
細部へのこだわりをもつデザイナーの間で高い評価を得られたことから、建築だけでなくプロダクトデザインにも応用が効くのではないかと期待が述べられました。

ソフトバンク株式会社によって北海道に建設が予定されているデータセンター「Spatial Presentation(仮称)」の例では、建設に伴う近隣住民へのプレゼンテーションや広報活動で活用しています。
データセンターの完成予定図を3DでApple Vision Proに読み込ませることで、施設の壮大な構想から詳細な内部構造まで、ストーリー性を持たせて効果的に伝えることができたと話します。

続いて紹介されたのは、Apple が企画から策定を進めている、没入可能な3Dビデオの「Apple Immersive Video」です。
映像に没入する新しい体験を提供できることから、映像制作の分野での活用が期待されています。現在、Blackmagic Design社によって専用カメラの開発が進められており、映像を見るというよりも入り込むような新しい体験になると語られました。
最後に、エンタープライズ向けに登場している機能「Enterprise APIs」が、さまざまな角度から紹介されました。
本来はアクセスできない前面カメラの情報が取得可能になり画像処理や機械学習に利用できる点や、バーコード認識による物流への活用、外部のUSBカメラを接続してApple Vision Proに映像を取り込んで遠隔操作できるUVC(USB Video Class)デバイスアクセスなど、このような機能を活用することで、企業で必要とするより高度なユースケースにも対応できるようになるとのことです。
Apple Vision Proの活用事例は増え続けており、向こう1年で多くのユースケースが生まれるのではないかと話す中村様。
ホロラボではApple Vision Proの導入に関する問い合わせがあった際に、まずは体験会を開催することが多いと言います。
Apple Vision Proの情報を聞くのと実際に体験するのでは、まったくと言っていいほど受ける印象が異なるため、「少しでも興味がある方はぜひ体験を」という言葉が繰り返し強調して語られました。
Apple Vision Proの導入と管理
続いてTooの福田から、企業でApple Vision Proを導入するとなった際に押さえておきたいポイントが紹介されました。
Apple Vision Proは法人企業にも対応しているデバイスであることから、業務で使用しているiPhoneやiPad、Macと同様にMDM(モバイルデバイス管理)での管理が可能です。
まず知っておきたい点は、Apple Business ManagerとMDMを連携させることで、IT管理担当者とユーザー双方にメリットがある環境が整うことです。
具体的には、ゼロタッチ導入による一括セットアップ、デバイスの資産管理、万が一デバイスを紛失した際のロックやワイプの実行、業務で使うサービスへのシングルサインオンの実現など、効率的な管理とセキュリティの担保を両立させることができます。
また、企業向けの高度な管理についても紹介されました。中村様のセッションで登場したEnterprise APIsについても、MDMによってカスタム範囲の制限が可能です。
また、MDMとID管理システムを連携させることで、シングルサインオンを活用して業務で必要な情報に安全にアクセスできます。
このようなユースケースは、visionOS 2.0から実行が可能になりました。

visionOSをサポートできるMDMは現時点ではJamf ProとKandjiのみですが、対応製品は順次増えていくだろうと予想されます。
Apple Vision Proは企業独自の情報を活用することで新しい働き方への挑戦を加速させるため、導入台数が少ない検証段階から管理やセキュリティ対策を進めていくことが重要です。
パネルディスカッション
最後は中村様と福田によるパネルディスカッションが行われ、それぞれの立場からApple Vision Proのビジネスでの可能性を探っていきました。
Apple Vision Proが日本で発売開始されて約半年が経過しました。日本市場での受け入れられ方について中村様は、「以前からVRゴーグルを使ってきた人ほど、その品質の高さに興奮している」と述べました。
iPhoneやAirPodsなどと連係ができる点もこれまでの常識とは異なり、大きなインパクトを与えているようです。また、初めて触れる人にとっては「高い技術力が魔法のように感じられて、自然に受け入れられている」と話しました。
続いて福田から、Apple Vision ProとAIの関わりについて投げかけられました。
ホロラボ内ではすでに生成AIがパートナーのような立ち位置になっていると述べた上で、従来の音声コマンドは正確な音声入力が求められますが、生成AIは指示が多少曖昧でも答えが返ってくるため、扱いやすそうだと言います。頭部に装着するウェアラブルデバイスという観点からも、デバイスと人との距離はどんどん縮まり混ざっていくのではないかと話しました。
最後にIT管理の面で企業が課題に感じる点について、Apple Vision Proでの解決策が述べられました。
中村様は、Apple Vision Proは他のAppleデバイスと同じ管理下に置くことができるため、導入に前向きなお客様が比較的多い印象を受けているそうです。
ホロラボでも MDM の管理下に置いたところ、Apple Account とデバイス管理が切り離され、複数ユーザー間で共用しやすくなったと話します。パーソナルなデバイスという印象が払拭され、スモールスタートの導入にも適していると気づいたそうです。
そのほか、法人向けという観点からの受け入れられ方や、Apple Immersive Videoのスポーツや音楽分野での活用など、時間いっぱいまでディスカッションが続きました。
イベント終了後は中村様の実機を見せてくださりながら、参加者の皆様からの質問にお答えいただきました。
Apple Vision Proは仕事のあり方を大きく変える可能性を秘めています。
Tooからも引き続き最新情報をお届けしていきますので、ぜひご期待ください。
記事は2025年3月13日現在の内容です。
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