多様化する働き⽅と企業や情シスのあり⽅を考えるリアルセミナー 「IT surf seminar 2024」レポート
2024 年7⽉12⽇(⾦)、多様化する働き⽅と企業や情シスのあり⽅を考えるリアルセミナー「IT surf seminar 2024」を開催しました。各セッションの簡易レポートを公開します!
IT surf seminarは、株式会社Tooが情報システム部⾨や経営層の⽅向けに開催する【IT戦略で組織がもっと強くなるには?】を考えていくセミナーイベントです。「⼈々がクリエイティブになれる環境をクリエイトする」をコーポレートミッションとするTooから、ITを活かしたクリエイティブな組織作りについて、企業を超えて考えるきっかけを提供することが⽬的となっています。
今回は4度⽬にして初めてのリアル開催となり、会場である「コモレ四⾕ タワーコンファレンス」では⼤いに盛り上がりを⾒せました。4つのセッションはいずれもテーマが異なり、とても貴重なお話を聞けるイベントとなりました。セッション中に登壇者が参加者の⽅に問いかけたり、笑いが起きたりとリアル開催だからこそ⾒られるシーンもありました。
目次
Session1:企業規模に合わせた適切なIT投資戦略を経営目線で考える
グリー株式会社 開発本部 情報システム部 部長
鈴木 敏之 様
グリー株式会社様は、世界初のモバイルソーシャルゲーム「釣り★スタ」のリリース以降、モバイルソーシャルメディア界を代表する企業として知られています。現在ではゲーム・アニメ事業を中心に複数の事業を展開しています。
バリュエンステクノロジーズ株式会社 執行役員CIO/CISO
木戸 啓太 様
バリュエンステクノロジーズ株式会社様は、「提案力とテクノロジーで、あるがままに生きられる世界を創る」をテーマに、AIチャットボットの提供やAIの導入支援、システム開発事業やコンサルティング事業などをおこなっています。
近年IT投資がビジネスに与える影響が大きくなっており、ITツールの導入を進めている企業も増加傾向にあります。このセッションでは、IT部門に長年関わっている鈴木様、木戸様のエピソードトークを交え、IT投資の課題への対策や今後の向き合い方をテーマに、株式会社Tooの福田との3人による鼎談形式で進行しました。
はじめに、IT投資に対する情シスと経営の理解にギャップが生まれてしまっている課題が挙げられました。
生産性を考えずコスト上の問題だけで却下されてしまったり、情シスのマネージャーに情シス経験者がおらず、IT投資の話が足踏みしてしまったり、と情シスと経営間の課題はさまざまです。この話には会場の反応も大きく、同じ課題を抱えている企業も多いように見受けられました。このギャップを埋めるには、IT投資の意味合いを相手に正しく理解してもらうことが大事であると言います。登壇者のお二人には、IT投資をおこなう際の説明について「人によって価値観が異なるため、全体の7割の人が同意するものを選び、 相手が納得してくれるまで説明する」「リソースの話は端的にする」などの工夫点をお話しいただきました。
続いて、ITツールの選定方法における問題点についても話がありました。
一部企業では、ITツールを導入したものの運用方法がわからず、放置してしまっている現状があるようです。お二人のツール選定の基準も「自社運用ができるもの」であり、ツール導入後の運用を意識することが大切であると説明いただきました。運用がイメージできない高性能なツールをただ選ぶのではなく、企業の規模や事業のステージに応じて、柔軟な選択をすることが必要であるとのことです。
また、情報セキュリティに迫っている脅威や、トレンドを例に挙げてセキュリティへの投資の重要性についても述べられました。
その中でも、投資に対する考えとして「投資し出すとキリがないので、ここまでやっておけばセキュリティ対策をした、と言える状態を目指している」との鈴木様のお話に、木戸様も深く頷かれていました。その上で、お二人から「攻撃テストをおこなうセキュリティ会社のサービスの利用」「入社時の徹底的なオンボーディングや、独自に作成した研修資料をもとにした定期的なe-learning」など企業独自の取り組みが紹介されました。
会場内で、独自の研修資料を用意してセキュリティ研修をおこなっている方に手を挙げてもらったところ、会場全体のおよそ2割の方の手が挙がりました。
また、近年話題となっている生成AIを使った取り組みについてもお二人から意見をいただきました。生成AIの危険性だけを見て利用を控えるのではなく、どの場面で活かせるか考えることが重要だと言います。
セッション全体を通して、情シスと経営でIT投資に対する目線を合わせた上で導入を検討し、企業規模に合わせたITツールの選定をおこなうことが重要であると伝えられました。また、情報セキュリティなど、時代の流れである脅威に対策を講じていく必要性が感じられました。
Session2:システムやるなら先に組織カルチャー?!両方に向き合ってわかったこと
株式会社アトラエ Security Project
小倉 勇人 様
株式会社アトラエ様は、「テクノロジーによって人々の可能性を拡げる事業を創造する」というミッションのもと、「Green」「Wevox」「Yenta」など、人や組織とテクノロジーが強く関連するメディアやプラットフォームの提供をおこなっています。
このセッションでは「組織カルチャー」という観点から、情シスとの関係性についてお話しいただきました。
組織カルチャーとは「組織内に共有された”行動様式”」であり、行動によって良くなったり悪くなったりするものとのこと。情シスはコストや生産性を考えて仕事をしますが、組織カルチャーという視点をふまえると、根本的な課題を解決することで大きな成果が得られたり、仕事の力点が変わることで仕事が楽になったりする、と小倉様は語ります。
そして近年、情シスの観点から、必要なものはコストや生産性だけでなく組織カルチャーなのではないのかとお話しいただきました。
組織カルチャーと情シスは、どう関係するのでしょうか?セッション内では、情報漏洩とITツール選択の例が挙げられました。
例えば、不正持ち出しが起きた際、人的管理策や技術的管理策、組織的管理策だけでは、一時的に解決しても中長期的な解決に至らない可能性があります。そこで、組織カルチャー的管理策により、不正持ち出しに対して「なぜ起きたのか、会社側にも問題があるのではないか」という考えを持つことで、根本から問題を捉えることの大切さを強調されました。
また、ITツールの選択が組織カルチャーに影響を与える可能性もあるため、ITツールの導入に丁寧に取り組むことが必要であるそうです。今後の行動様式に合わせたツールを選択することや、ツール導入の理由や望ましい使われ方をガイドラインとして明記することが大切であるとお話しされました。
組織内では不幸なすれ違いも発生するため、今後組織カルチャーを強化するにあたり、以下の3つのことが大切であると述べられました。
- 可視化によってすれ違いの理由を明確にする
- 自社の組織カルチャーに合致するツールを選定し、ガイドラインや環境整備によって「ガードレールを敷く」
- 現在の組織カルチャーに執着せず、常に行動様式を疑いながら周囲の変化に対応する
最後に小倉様はこのように問いかけました。
- ご所属の組織カルチャーは何ですか?どんな行動ですか?
- ご所属の組織カルチャーにフィットしたITシステムとはどのようなものですか?
- どのようなガードレールを敷きますか?
組織カルチャーへの理解とそれに対する行動の大切さがわかるセッションでした。
Session3:急拡大するグループでの、選択の自由と統制
株式会社GENDA IT戦略部 CorpIT
鈴木 啓太 様
株式会社GENDA様は、「スピードある成⻑」を⽬指して急速に事業を拡⼤している企業です。アミューズメント施設「GiGO」の運営やGiGOアプリなどのシステム開発、そのほか幅広いエンタメ事業をグループで展開しています。
株式会社GENDA IT戦略部 CorpIT
田中 謙志郎 様
また、事業拡⼤に合わせて、テクノロジー⾯のサポートとしてGENDA Technologyという組織を⽴ち上げました。テックメンバーがGENDAグループ各社に所属することなく、横断的に参加する形をとっています。
このセッションでは、鈴⽊様、⽥中様によるコーポレートITの⽴ち上げの話と、現在までおこなってきた取り組みについてお話しいただきました。ラジオのような雰囲気で、登壇者お⼆⼈によるテンポのいい掛け合いで進⾏していきました。
⽥中様と鈴⽊様が所属されている、コーポレートITの⽴ち上げが⾏われたのは2023年の10⽉。当時はGENDA GiGO Entertainment(以後 GiGO)のシステムやデバイス、ネットワークの環境下で事業が進められていました。そこで、コーポレートITはGiGO中⼼のシステムからGENDAを基盤にしたシステムへの移⾏を検討しました。⽴ち上げ前の当初は、genda.jpのドメイン名をグループの全社員に配布し、システムを 1 つに統合する予定で考えていたそうです。しかし、システム環境についてブレインストーミングをおこなったところ、システムの統合におけるコストなどを考え、システムを共通化する部分と残す部分を必要に応じて分けることにしました。
イベント開催時、GENDA様のコーポレートITは⽴ち上げからおよそ半年が経過したタイミングでした。その期間で取り組まれたことから2つ取り上げて紹介します。
1つはTooが提供している残価設定リースApple Financial Servicesの導⼊です。導⼊のきっかけは、エンジニアのMac使⽤率の⾼さによるものだったそうです。契約時の条件などいくつか苦労する点はありましたが、その分良い⾯が多いとの評価をいただきました。また、Too独⾃の保守サービスであるあんしんパックについても⾔及されました。もう1つはOktaへの移⾏です。以前まで違うIdPを利⽤していましたが、思うように活⽤できなかったため移⾏を決めたとのことです。移⾏の話には社内全体が協⼒的で、特に会⻑や社⻑の対応⼒の⾼さには驚いたとお⼆⼈が⼝を揃えてお話しされました。また、ITリテラシーの⾼い社内環境が移⾏のしやすさに繋がったと述べられました。
すべてをシステム統合することが正解ではないこと、また、事業や⽂化、現状を⾒つめながら企業としてどうやったら良くなるかを意識すること、チームとして利他的であることが⼤切であるとまとめられました。
(2024/08/08追記)
Session4:人材・モチベーション・情報システムの融合とエンゲージメント
株式会社ココナラ システムプラットフォーム部 部長 / Head of Information
川崎 雄太 様
株式会社ココナラ様は、マーケットプレイス、メディア、エージェントの3種に事業内容を分け、それぞれ目的に合わせてユーザの課題を解決させるサービスの提供をおこなっています。近年は、事業拡大に合わせて組織の規模も成長傾向にあります。特にエンジニアやリポジトリの数は2020年から2023年の3年間で約3倍に増加しました。
セッションでは、情報システム部門で抱えがちな採用、育成、評価といった人材に関する課題を紹介した上で、ココナラ様視点による解決方法をお話しいただきました。
まず情シスでの人材の課題として以下の事例が挙げられました。
- ⼈材採⽤のマッチング難易度の⾼さ、会社によって取扱ツール・機器が異なる
- セキュリティ専門組織やエンジニア不在による対応がその場しのぎである
- オンボーディングや育成のスキームが型化できず、中長期的に体系立てた人材育成が難しくなる
- 非エンジニアによって正しい評価がなされない
このような課題に対し、川崎様は「情シス部門が利益創出のために貢献する」というマインドの醸成が大切であるとお話しされました。情シスはヘルプデスクの対応など受け身になるシーンが多いですが、いかに効率的・効果的に対応すればいいのか自分で考え、積極的に動くことが重要と言います。
また、多様性のある組織には「個人や組織のゴールの共有」が必要であると述べられました。そこで「バリュー」という共通言語を持ち認識を揃えることで、型化できていない課題の解決につながるとのことでした。
続いて、ココナラの人事ポリシーに合わせた課題解決の紹介がなされました。川崎様は「会社と個人は対等でありたい」ことや、「お互いのWill(目指す姿)を実現させるために協業できる関係性」を強調し、エンジニア専用のグレード制度やキャリアパス、評価軸の設定など正しい評価に対する方法についてお話しされました。
また、川崎様は情シスの今後の取り組み⽅として、AIとの共存が大事と語りました。AIが得意なところはAIで、人が得意なところは人で対応をおこなうことで、全体最適を目指すことや、定期的なチェックの⼤切さを呼びかけました。
セッション全体を通して、情シスの人材課題の解決方法を紹介いただきました。
会社全体の共通認識である「バリュー」をもとに、必要とされる人材を探し、情シスが受け身にならず積極的に動いて成長する大切さを強調されました。その上で、専用の評価軸の作成やコミュニケーションで心理面からサポートすることがポイントとして挙げられました。
まとめ
4つのセッションを通して、紹介していただいた企業の特色がよくわかり、今後のIT投資への向き合い方や考えがより広がるイベントとなりました。
今回のセッションは、いずれもアーカイブにて視聴することができます。ご希望の方はこちらからお申し込みください!
https://www.too.com/fun/webinar/device/itsurfseminar2024.html記事は2024年7月29日現在の内容です。
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