Apple Intelligenceの安全性と企業における向き合い方

Apple Intelligenceによって生成AIを活かした多数の機能が利用可能に!
2024年10月、Appleが提供するAIプラットフォーム「Apple Intelligence」がついにリリースされました。
当機能によって、macOSの標準機能に今話題の生成AIが追加され、業務のさらなる効率化が図れそうですよね!
ただ、企業の管理者としては、ふとしたきっかけで機密情報が漏れてしまい、AIに学習されるのではないかと心配になる方もいらっしゃるかと思います。
本ブログでは、
・Apple Intelligenceって本当に安全なの?
・ChatGPTとの統合機能で社外秘の情報が漏れる可能性は?
・結局どう管理すればいいの?
…といったよく頂く疑問にお答えします!
Apple Intelligenceの仕組みを正しく理解して、企業でどのように利活用していくかの判断材料にしていただけますと幸いです。
目次
Apple Intelligenceとは
Apple Intelligenceとは、Mac、iPhone、iPadといったデバイスの中核にパワフルな生成モデルをもたらすパーソナルインテリジェンスシステムです。
ユーザのプライバシーを保護しつつ、生成AIモデルとユーザのコンテクスト情報を組み合わせて全く新しい独自のAIプラットフォームを提供します。
具体的には、文章の要約や校正を手助けしてくれるWriting Tools、画像の生成を手助けしてくれるImage Playground、オリジナルの絵文字を生成してくれるGenmojiといった機能に加えて、Siriもより自然な処理を行うよう強化されました。
また、外部サービスである「ChatGPT」とシームレスに連係することができ、リクエストに対してSiriがChatGPTを活用してくれたり、文章や画像の生成もChatGPTで行ってくれたりと、活用の幅が広がります。
※Apple Intelligenceは現在、一部言語のみの対応となっております。日本語には対応しておりません。(2025年4月対応予定)

企業における生成AIやApple Intelligenceとの向き合い方と課題
生成AIは業務効率化を図る上で便利な反面、企業としては「社員が誤って機密情報を入力することでAIに学習され、社外秘の情報が漏れてしまうのではないか?」といった不安もあります。
それが今回、Apple IntelligenceによってOSにAIの機能が備わり、これまで以上に気軽にAIを活用できるようになったことで、そこに対する不安も加速しているのではないかと思います。

ご安心ください。
Writing ToolsやImage Playground、Genmoji、メール要約といったApple Intelligenceデフォルトの機能では「Private Cloud Compute(PCC)」という仕組みを使用しているため、ユーザが入力したデータがサーバに保存されることは一切ありません。
Apple Intelligenceに採用されている「Private Cloud Compute(PCC)」とは?
前述の通り、Apple IntelligenceはPrivate Cloud Compute(PCC)という仕組みで動いています。
PCCとは、AIを用いたデータ処理のセキュリティやプライバシーを保護する仕組みで、その特徴として以下が挙げられます。
- クライアントから送信されるデータをサーバに一切保存しない
- クライアントのリクエストのみに使用される
- 第三者によるPCCのプライバシー規定準拠の検証/証明が可能
PCCを用いた通信は暗号化され、サーバでデータの復号が行われています。
その際の暗号鍵は消去されるため、データの復元は不可能な他、Apple社もPCC内のデータにはアクセスできません。
ただ上記のように「安全だ」と言われても、それを立証することは通常難しいかと思います。
この懸念を払拭するため、AppleはPCCのVirtual Research Environment (VRE) を公開し、Macから直接PCCのセキュリティの分析を独自に実行できるようにしています。
さらに、「PCCの透明性ログ」という、原理上書き換え不可能なログ情報も公開しているため、独自に検証したPCCの環境と公開されているログを比較することで、PCCの安全性を検証することが可能となります。
また、PCCにてセキュリティやプライバシーの保証が侵害される脆弱性を発見した方には報奨金を授与する、とアナウンスされています。
ということで、そんなPCCを使用して動いているため、企業においても安心してApple Intelligenceを利用できるのではないかと思います。
外部サービス(ChatGPT)との統合の安全性について
PCCで動いているなら、ChatGPTとの統合も安心していいのか?という疑問も出てくるかと思います。
ここで注意すべきなのが、ChatGPT統合はPCCとは別枠で動いている機能ということです。
ChatGPTを利用するにあたって、Apple Intelligence上でChatGPTアカウントにサインインすることができます。
サインインすることで、アカウントに紐づいた情報(有料プラン等)がデバイス上でも利用できるようになったり、会話内容が履歴として保存され後からアクセス可能になったりします。
また、ChatGPTアカウントの設定とOpenAIのデータプライバシーポリシーが適用され、OpenAIのサービスを改善するために会話内容が使用されることもあるようです。
ChatGPTを提供するOpenAI社によると、ChatGPTアカウントにサインインせずApple Intelligenceを通してChatGPTを使用する場合、OpenAIはIPアドレスを受け取ったり、リクエストを保存したり、AIモデルのトレーニングに使用したりすることはないとのこと。
つまり、Apple Intelligence上でChatGPTにサインインしなければ学習されることはなく、サインインした場合はその限りではない、ということになります。
会話を学習に使用させるかどうかはChatGPT側の設定で変更可能ですが、企業でApple Intelligenceを利用する際には、あらかじめ方針を決めておくと良いでしょう。
ChatGPTとの統合における学習の有無まとめ
ChatGPT機能OFF | ChatGPT機能ON | |
サインインなし | サインインあり | |
学習されない | 学習されない | 学習される可能性あり |
MDMからできるApple Intelligenceの機能制限
Appleデバイスの管理に特化したMDM(モバイルデバイス管理)ツール、「Jamf Pro」を使用すれば、従業員に貸与したAppleデバイス上でのApple Intelligenceを機能ごとに制限することができます。
Jamf Pro 製品詳細|株式会社Too注意点は、Apple Intelligenceそのものの利用制限はできないということです。
あくまでMDMでは、Writing Tools、Image Playground、Genmoji、メール要約、外部サービス(ChatGPT)との統合など、機能ごとにユーザに使わせるかどうかをコントロールすることができます。
また、ChatGPTとの統合に関しては、機能の利用はもちろん、機能は使わせつつサインインはさせないようMDMで制限することが可能です。
ここまでの内容を表でまとめてみました。
機能 | 値 |
Writing Tools(Apple Intelligence) |
使用可能 / 使用不可 |
Image Playground(Apple Intelligence) |
使用可能 / 使用不可 |
Genmoji(Apple Intelligence) |
使用可能 / 使用不可 |
メール要約機能(Apple Intelligence) |
使用可能 / 使用不可 |
Apple Intelligenceの外部サービス統合(ChatGPT) |
使用可能 / 使用不可 |
外部サービス統合時のサインイン(ChatGPTのサインイン) |
サインイン可能 / サインイン不可 |
例えば、以下のように外部サービス統合時のサインインのみを制限することで、Apple Intelligenceは使いつつもAIによる学習を避ける、といった運用も可能となります。
機能 | 値 |
Apple Intelligenceの各機能 (Writing Tools / Image Playground / Genmoji / メール要約) |
使用可能 |
Apple Intelligenceの外部サービス統合(ChatGPT) | 使用可能 |
外部サービス統合時のサインイン | サインイン不可 |
まとめ:企業における向き合い方
Apple Intelligenceを使えば、Appleデバイス上での文章の要約や校正、画像生成などがより便利にできるようになります。
「企業の大事なデータがAI学習に使われるのではないか?」との心配があるかもしれません。企業利用においては、外部サービスとの統合時にサインインを許可するかどうかがポイントです。
Apple Intelligenceそのものの機能を利用するだけであれば、PCCという仕組みにより、送信されたデータはサーバに一切保存されません。PCCの安全性を第三者が検証することもできるため、企業においても安心して使うことができます。
Apple Intelligenceの機能を使わせるか、外部サービスとの統合時にサインインさせるかは、Jamf ProなどMDMによる制限が可能です。
「すべて制限して、Apple Intelligenceは基本使わせない」という方針ももちろん企業の選択肢としてはあるでしょう。
ただ、近年若い世代を中心に、ChatGPTをはじめAIを当たり前に使う人が増えてきています。そういった人が入社してから、「会社としては全面禁止だけれど、このくらいなら…」と隠れて使ってしまう、いわゆる”シャドーAI”につながる可能性も考えられます。
Appleデバイス搭載のApple Intelligenceであれば、データやプライバシー保護という観点で安心して使ってもらえるので、「企業におけるAI活用」を視野に入れたときに、MacやiPad、iPhoneを企業デバイスとして採用する、という選択肢もありそうです。
この機会に、企業におけるAI利用の方針を見直してみるのもよいかもしれません。
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