企業端末の従業員選択制(Employee Choice):メリットや制度の狙いとは?
従業員選択制が増加している理由とは?
働く上で欠かせない存在であるPC。
ハードウェアのスペックやITインフラは、仕事の生産性に大きな影響を及ぼします。
社内で利用する端末に関して、従業員がある程度使いたい端末を選択できる制度(=Employee Choice)を取る企業が増えてきています。
この制度の狙いや、関連する調査、メリット・デメリットをご紹介します!
従業員選択制(Employee Choice)の概要
2010年代のクラウドツールの普及に伴い、OSプラットフォームを問わず使える、様々なSaaS(Software as a Service)製品が揃い始めました。
勤怠管理や経費精算・プロジェクト管理まで、業務上のワークフローはほとんどWebアプリで完結できる世の中になりました。
この変化を受けて改めて注目され始めているのが、日常生活で使い慣れた端末を業務利用することで、生産性向上を図る制度「Employee Choice」です。
これまで日本企業の業務システムはほとんどWindows PCを中心として構築されていましたので、「Employee Choice」というと
- Macを業務端末の選択肢に加えること
- モバイル端末をAndroid、iOSから選択できるようにすること
のいずれかを指すことがほとんどです。
この制度の前提として、「ビジネスにおいて、端末を使うこと自体が目的となる機会はほぼ無い」という考え方があります。
端末を利用する目的は、課題解決に向けた思考の整理やコラボレーション、より優れたアウトプットの作成、昨今ではオンラインコミュニケーション...…など、業務のミッションを前に進めること。
このプロセスが円滑に進む限り、従業員にとって提供された端末のOSやシステムがどんなものかは、大した問題でないことがほとんどです。
つまり、従業員が利用するITツールは、目的達成のために思考を止めることなく、業務に集中できる空気のようなものであることが第一と言えます。
入社時に社員に使いたいOS・スペックを選択させ、好きな環境で仕事ができる制度は、ITを空気のように使いこなす職場環境の構築にぴったりです。
また、Macの業務用端末としての発展も、この制度を支えています。
Microsoft Officeを始めとした業務アプリの動作安定、端末管理の発達、M1チップによる高速処理など、デザイン市場でメインに使われていたMacは一昔前のイメージからは大きくかけ離れた進化を遂げています。
こうした技術の進歩や、個人の多様性を重視する社会的背景を受けて、WEB系企業や日本を代表する大企業の中でも従業員選択制の検討が進み始めているのです。
調査レポート
日本ではまだ一般的とは言い難い制度ですが、海外では数年前から従業員選択制に取り組む企業が多くありました。
意識調査のレポートが上がっていますので見てみましょう。Jamf社による、2018年の調査結果です。
Jamf Survey:Employees Are More Productive and Happier When They Choose Their Work Device(英文)
調査対象:世界中の企業組織(小規模~大規模)の580人に及ぶ経営幹部、管理者、IT担当者
- 68%の社員が、従業員選択制によって生産性が向上すると回答
- 半数を超える52%の企業が、PCの選択制を導入している
- 49%の企業が、モバイル端末の選択制を導入している
- 端末選択できる企業の社員のうち、72%がMacを選択し、28%がWindowsを選択した
- 端末選択できる企業の社員のうち、75%がiPhoneまたはiPadを選択し、25%がAndroidを選択した
- 大企業(500人以上の社員)の86%は、選択制度が組織の幸福にとって重要であると述べた
先行してEmployee Choiceに取り組んでいる組織では、選択制プログラムに対して高い評価が上がっています。
また、Appleデバイスを選択した社員の割合が多いこともポイントです。
続いて、StatCounter Global Statsによる国内OSシェアデータを見てみましょう。
iOSは、国内約66%のユーザーが利用しています。(2021年1月-2021年5月)
Source: StatCounter Global Stats - OS Market Share
日本はiPhoneのシェア率が非常に高く、幅広い世代で感覚的に利用されています。
MacとiPhoneの強固な連携機能を活用することで、データの共有やシームレスなアプリ連携を仕事に活かすことができます。
Mac(OS X)は、国内約16%のユーザーが利用しています。
Windows PCのシェアは約66%です。(2021年1月-2021年6月)
Source: StatCounter Global Stats - OS Market Share
少し前のデータと比較してみると、2015年時点ではWindows PCのシェアが約86%でした。(2015年1月-2015年6月)
ここ数年で、Windows PCヘの依存度が下がってきていることが確認できます。
Source: StatCounter Global Stats - OS Market Share
全従業員が1つのOSだけで仕事をする時代は変化を迎えつつあると言えるでしょう。
また、2020年の文科省によるGIGAスクール構想により、国内の小中学校で一人一台の端末配布が推進されました。
MM総研の調査によると、端末出荷台数はiPadが3割弱のシェアとなっています。
義務教育時代から配布された端末に触れてきたこれからの社会人は、使い慣れた端末を業務でも使うことを、より強く求めるようになるでしょう。
Employee Choiceのメリット・デメリット
従業員選択制のメリット
Employee Choiceを取り入れる一番のメリットは、これまで触れてきた通り「慣れたITツールで業務を行う」ことによる生産性向上です。
ハードウェアや内蔵アプリの使い方など、業務に直結しない部分で悩むことが少なくなります。
問い合わせの頻度も下がり、サポートコストの面でも低下が見込めます。
そして、従業員選択制は、採用の場でも大きなメリットとして訴求できます。
- 従業員が働きやすい環境に投資している
- 社員の多様性を大切にしている
- OSに依存しないクラウドベースのIT環境が整っている
- 学生時代や前の会社でMacを業務利用していた場合、新しいOSを覚える必要がない
- 特にエンジニア採用において、希望のスペックを伝えられる需要が高い
IT投資への意識や、働きやすい環境設計は、魅力的な職場のアピールに繋がることでしょう。
Windows PCに慣れている方はWindows PCを選択、Macに慣れている方はMacを選択、というのが基本ですが、 希望に応じて使ってみたいOSを選べるとさらにモチベーションの向上にもなります。
従業員選択制のデメリット
デメリットとしてはもちろん、両OSに対応した環境を整える必要がある、というところです。
特定環境でしかできない作業は減ってきているとはいえ、まだ既存システムがクラウド環境に移行していない場合は、 IT設計全体の見直しが必要となります。
100% Windowsで業務を行なっている環境においては、いきなり選択制の実現は難しいかもしれません。モバイルOSの選択や、PCスペックへの希望提出など、少しずつ柔軟さを持たせていく進め方が良いでしょう。
一方、既に基礎業務をWEBベースである程度完結できていたり、一部の部署だけでもMacを既に運用している経験があるなら、Employee Choiceの導入障壁は低くなります。
企画・営業・制作といったチームでは、端末の選択制を比較的容易に取り入れることができます。
経理や開発といった特定領域ではOS固定の必要があるかもしれませんので、利用中のツールや業務対応については事前調査を推奨します。
OSごとに即したセキュリティポリシーや調達法を検討していくことも不可欠ですが、一度に進める必要はなく、少しの台数から始めて順に最適化していけば良いでしょう。
従業員選択制の導入の進め方、検討事項、調査などは、既に取り組まれている国内事例を参考にすることができます。
実績のあるTooにぜひご相談ください。
記事は2021年6月29日現在の内容です。
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