アニメCG最強就活イベント「アニかつ!」
2020年2月16日、秋葉原UDX GALLERYでアニメCG業界志望者に向けた就職セミナー「アニかつ!」が開催されました。
アニメだけでなく映画・ゲーム・CMなど、いまや幅広いジャンルで使われているCG。ネット配信の普及で海外への扉もより広く開かれているだけに、今すぐにひとりでも将来性に満ちたスタッフが欲しいアニメプロダクションと、憧れの業界に飛び込みたい学生たちのニーズを受けて、「日本初のアニメプロダクションのみによる就職セミナー」として企画されたのがアニかつ!です。
会場には14社の説明会ブースと、参加各社大規模プレゼン用のセミナールームが用意。各ブースにはそれぞれのアニメスタジオの代表作ポスターが飾られたり、ポートフォリオが見れたりとオープンな雰囲気。
イベントは10時半の開場とともに、志望者たちが100人以上受付に列をなすほどの盛況なスタート。配られた資料の中には参加各社のデータが載せられた「雇用条件比較表」なんてものもあり、皆興味深く読み込む姿が多く見られました。そして11時のイベント開始と共に、各ブースでの説明会とプレゼンがスタートしました。
セミナールームで行われるのは、各アニメスタジオが交代で行なう会社説明。大型のスクリーンに各社の解説や実績を映し出しての45分のプレゼンテーション、そのトップバッターを努めたのが、exsa ・ENGI・サムライピクチャーズ・SOLA DIGITAL ARTS、・チップチューン・YAMATO WORKSの6社による合同プレゼン。朝一番のセミナーにも関わらず、来場者に対して椅子席だけでは数が足りず、左右前後に二列に渡る立ち見が出るほどの関心の高さです。
モデレーターとして進行を務めたのは『Bang Dream! 3rd Season』『新サクラ大戦 The Animation』で知られるサンジゲンの松浦裕暁氏。各社のプレゼンターの皆さんとは交友があるのもあって、ちょっとした業界裏話も挟まれたりと、学生たちからしばしば笑いが起きる柔らかい空気でプレゼンは始まりました。
そんな中、松浦氏から「皆さんが会社を見る時は作品で見ると思うんですが、これからのプレゼンからは各社毎の『毛色の違う画作り』や『規模の違いによるコミュニケーション』『尖ったスタジオ運営』といった部分も注意して聞いてほしい」とこのプレゼンについて、学生たちに「趣味」ではなく「仕事」を意識しての聞き方をアドバイス。あらためて学生たちも引き締まります。
各メーカーのプレゼンは、それぞれの代表作を紹介しつつ、会社の特徴や雰囲気が説明されていきます。表に出る作品では見えない、企業としてのアニメスタジオの顔を、志望者たちは真剣なまなざしでメモを取りつつ確かめていました。
アニメやCGの仕事というと、かつてのイメージでは東京一極でしたが、近年は地方に拠点を置くスタジオも多く、『ケンガンアシュラ』『BanG Dream! 2nd Season』のexsaは日本全国に5つの拠点を持ち、話題作『宇崎ちゃんは遊びたい!』を現在制作中のengiも2020年4月には岡山スタジオを立ち上げ、全国体制で活動しています。全国から学生があつまったアニかつ!だけに、こういった情報をより深く聞けたのは嬉しい学生も多かったはず。
もちろん会社の規模や資本関係、経営方針、業務体系に社員構成といった、就職セミナーならではの話も多く、現在のスタッフの数やスタジオの設備などについても細かく解説。『天気の子』『BanG Dream! 2nd Season』にも参加したサムライピクチャーズは、中途採用よりも新人を積極的に登用し育成する教育プログラムについて説明し、『幼女戦記』『ヴィンランド・サガ』のチップチューンは少人数ならではのやりたい仕事を現実にしやすい体制で、昨年4月に入社した社員が早くもモデル作成に取り組むなどやる気を仕事に繋げやすい体制と説明するなど、それぞれの新入社員として、そしてその先のステップをイメージさせてくれます。
また、憧れの監督やアニメーターと仕事が出来るというのもスタジオ選びとしては大きなポイント。『ULTRAMAN』『攻殻機動隊 SAC_2045』のSOLA DIGITAL ARTSには『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX』の神山健治監督と『APPLESEED』の荒牧伸志監督が、YAMATO WORKSには米アカデミー賞ノミネート歴もある森田修平監督が所属し、直接指導を受ける機会も多いのも魅力です。
それに近年のアニメ作品はテレビだけでなくNetflixなど海外配信の需要も増える一方。それだけに制作現場の国際化も進んでいます。CGスタッフの半数が外国人で常に英語と日本語が入り乱れているというengiや、社長が韓国系アメリカ人で日本も含めて9つの国のスタッフがいるSOLA DIGITAL ARTSなど、制作能力以外の英語スキルやコミュニケーション力も高めてくれそうな会社も見受けられました。
会社の規模は違えど、それぞれの魅力があるアニメスタジオのプレゼンテーションは学生たちに響いたようで、セミナーの後には各単独ブースの説明会に足を運び、積極的に詳細を質問する姿も多く見られました。
この後もセミナールームでは、『ヒーリングっど♥プリキュア』『ワンピース』の東映アニメーション、『BEASTARS』『宝石の国』のオレンジ、『HELLO WORLD』『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』のグラフィニカ、『空挺ドラゴンズ』『HUMAN LOST 人間失格』のポリゴン・ピクチュアズ、『ポケットモンスター ソード・シールド』『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル ALL STARS』のアニマ、『PSYCHO-PASSサイコパス3』『天気の子』のサブリメイションといったスタジオのプレゼンテーションが行われ、アニメCG業界を夢見る志望者たちが熱心に耳を傾けていました。
そして各スタジオのブースでの説明会では、会社スタッフからの詳細な解説にはじまり、よりピンポイントに会社について話を聞きたいという学生たちによる質疑応答が行われました。それも職場環境だけでなく、給与や福利厚生などについて、さらに近年の働き方改革などを受けての体制も丁寧に解説が行われました。
中には個人面談を行なうスタジオもあり、CGクリエイター志望者やプロデューサー志望に分かれて現役スタッフが面接しつつアドバイスを与えたりと、対面式のイベントならではのダイレクトなやりとりも。
特にCGクリエイター志望者にとっては、直接自分のポートフォリオを見せてプロに評価を聞くチャンスでもあります。スタジオによっては自社のメリット度外視で「良いポートフォリオの見せ方」という講座も行なうなど、参加者にとって自分の技術や能力だけでないプロならではの“見せ方”を学べたはず。そうした業界と志望者の底上げを感じさせたイベントでもありました。
アニメスタジオ自身が主催する就活セミナーである「アニかつ!」、一日で300人以上の志望者が集まり、あらためて業界への注目度の高さが感じ取れました。就職セミナー専門の会社の主導ではなく、スタジオ中心で動いたセミナーというのもあり、参加企業のコミュニケーションも取れており、他の就活セミナーに比べてもスタッフ同士も身近で打ち解けたイベントになっていました。今後も世界的に需要が高まる業界だけに、第2回第3回の開催が待たれます。