Tooは2022年10月6日にオンラインセミナー「企画やプロトタイプで活きる!バーチャルフォト制作フロー〜Substance 3D Collectionを活用したバーチャルフォト制作〜」を開催しました。セミナーレポートをお届けします。
本セミナーはアドビ株式会社の加藤修一様を講師に迎え、バーチャルフォトが求められている理由と効果、Adobe Substance 3D Collectionを使ったバーチャルフォトの制作フローを話していただきました。
バーチャルフォトは、実際の写真撮影を行わず一貫してデジタルで制作されたもので、「3Dデータをベースとして作り上げるデジタル表現のひとつ」と表現していました。
これまでのスタジオを使った商品撮影をベースとした、画像制作に時間とコストがかかる問題は、コロナ禍となり特に顕著になってきています。
それだけでなく、撮影途中や終了後にクライアントからの要望が入ると、1から作り直すなど改変が難しい点は従来からの課題でした。そういった問題点を解決し、さらに新たな付加価値を追加できるのがバーチャルフォトです。
3Dの導入は商品開発だけでなく顧客の購買体験にもプラスの影響を与えることが、いろいろな調査から明らかになっています。
商品開発での変化は、制作コスト削減とマーケット展開スピードの向上による効率化です。また、実サンプル削減による環境への配慮は、企業のSDGsへの取り組みにつながることも見逃せないポイントです。
そして、商品を3Dで扱うことは、パーソナライズやAR/VRへの展開を容易にして、顧客の体験向上と新たな接点の創出に寄与するはずです。
オンライン販売では、8枚以上の画像を用意することで購買確率を76%向上でき、AR体験で購買に至る確率は11倍になると言われているそうです。3Dを利用したバーチャルフォトの活用により、最大10倍のコスト削減とともに、顧客体験の向上を期待できるとのことでした。
事例として紹介した、カタログなどにバーチャルフォトを利用しているIKEA、MY G-SHOCKでのカスタマイズに3Dを利用するCASIO、ARに取り組み始めているアメリカのECサイトWayfair、ARによるスニーカー試着ができるアプリ「Wanna Kicks」などの取り組みも興味深い内容でした。
バーチャルフォトには、「実物なんじゃないか」と思わせるリアリティを表現する必要性があり、それを実現するのがAdobe Substance 3D Collectionだと加藤氏は説明します。
テクスチャーの作成を行うSubstance 3D SamplerとSubstance 3D Designer、3Dオブジェクトを取り込んでPhotoshopのような操作感でペイントしていくSubstance 3D Painter、3D慣れしていない人でも簡単な操作で3Dオブジェクトを配置してバーチャルフォトを作成できるSubstance 3D Stagerの4つのアプリケーションがあります。さらに、テクスチャーや3Dオブジェクト、環境光などをダウンロードできるWebサービス型のSubstance 3D Assetsも提供しています。
Substance 3D Collectionはテクスチャー作成に特化しており、3DS MAX、MAYA、Blenderなどの一般的な3Dソフトやレンダリングソフトとは別なポジションの製品だと加藤氏は強調していました。
※なお、2022年10月18日に3DモデリングツールSubstance 3D Modelerがラインナップに追加されています。
本セミナーで紹介された、Substance 3D Collectionの4つのアプリケーションと1つのサービスの解説を以下にまとめました。
3D Sampler
簡単なUIでマテリアルを作成可能で、既存のマテリアルをカスタマイズしたり写真から新規作成したりと、比較的容易にテクスチャーのデザインを行えるアプリケーション。
3D Designer
3D Samplerより難易度が上がる分、ゼロから完全オリジナルのマテリアルを作れる「カスタムマテリアルの業界標準アプリケーション」。
3D Painter
モデルに対してテクスチャーを3Dペインティングしていく「3D界のPhotoshop」。ゲーム業界、映像業界で使われることが多いが、製造系、建築系、家電系などでも使われている。
3D Stager
平面を専門とするデザイナーでも使いやすい直感的なレンダリングレイアウトツール。3Dモデルをドラッグ&ドロップして平面のグラフィックと合体させることができ、ユニークで使いやすい。
3D Assets
9千点以上の3D関連素材を集めたコレクション。素材を利用して作成した制作物は商用利用可能。
Substance 3D Samplerと3D Stagerを使っての、バーチャルフォトを作る過程をデモンストレーションしました。3Dモデルは既に作ってある前提で、テクスチャーを用意して商品写真を仕上げるまでのワークフローの紹介です。
3D Samplerでは、革のテクスチャーを元に調整していく様子を紹介。3Dモデルに適用した状態を見ながら、フィルターをかけることでカラーの変更やタイリング(繰り返しパターン)のパラメーター調整などを行いました。
3D Samplerで作ったテクスチャーは、ワンクリックで3D Stagerに送信できます。3D Stagerでは3Dモデルにテクスチャーを適用させるとともに、Illustratorで作ったロゴなどもドラッグ&ドロップで追加できます。もちろん、貼り付けたロゴは自動的に3Dモデルの表面に沿った状態で適用されます。
バーチャルフォトでのシーンを構成するのに必要な要素が背景画像です。3D Samplerでは「カメラのパースを合わせる」機能により、Adobe SenseiのAI技術を使って自動でその背景画像のシーンになじむように、3Dモデルのパースを自動で調整可能です。デモでは、3Dのスニーカーが机の上に違和感なく配置されました。
レイアウトが完成したらPhotoshop形式で書き出します。レイヤーで分かれたデータなので、商品の後ろに文字を入れるなどPhotoshop上での作業がやりやすくなっているのがポイントです。
Substance 3Dを用いた布、建物、板、時計、バッグなどの作品例や、導入企業の一例、企業内のどんな職種の人が利用するのかの案内で、加藤氏の講演は終了しました。
最後に、バーチャルフォト及びSubstance 3Dが「企画の段階、プレゼンテーション、商品開発で有用に使えることをイメージしてもらえたら」と加藤氏は話しました。
質疑応答ではたくさんの質問がオンラインで寄せられ、「これまでAdobe Dimensionで行っていた空き部屋に家具を配置するバーチャルステージに使えるか?」「可能です。Dimensionの後継が3D Stagerで、より高機能です」など多くの質問に答えました。既にSubstance 3Dを利用しているユーザーからの細かい質問にも、加藤氏に丁寧に答えていただきました。
Tooからのお知らせとして、おすすめの3Dソフトを紹介しました。Substance 3Dを補完するツールとして参考にしていただけると幸いです。
ライセンスの見直しの際には、アドビ取り扱い30年以上・経験豊富なスタッフの多いTooにご相談ください。 Tooはアドビ正規販売代理店 最上位のプラチナリセラーです。
法人版限定のディスカウントもあります。
ありがとうございました。
今後も最新情報やTIPSなど配信していきますので、ぜひご覧ください!
記事は2022年10月30日現在の内容です。