企業の紙文書をPDFに移行する際は、安全性を確保して行う必要があります。デジタルデータは紙の文書とは違うリスクがあるからです。
セキュリティ対策が甘いために情報漏えいや改ざんといった問題が起きると、信用を失ったり損害賠償を請求されたりする恐れがあります。仮にそういったことが起これば、企業にとっては大きな損害・ダメージとなってしまいます。紙の文書のPDF化によってそうした事態にならないよう、細心の注意を払わなければなりません。PDFのセキュリティ対策はどのようにするべきなのでしょうか。セキュリティ対策の方法や種類、対策を行う場合の注意点について紹介します。
従来は紙文書を得意先等に送りたい場合、封入や投函などの手間が必要でした。しかし、デジタルデータであればPCやタブレットからそのまま文書などを送ることができます。特に、PDFはPDFリーダーさえあれば送信されたデータを閲覧できるなど利便性が高く、無料で配布されているため、ほとんどのパソコンで問題なく閲覧可能です。そのため、企業・個人を問わず書類・マニュアルなどで幅広く利用されています。
しかし、デジタルデータならではのリスクがあります。業務において、デジタルデータを誤って違う宛先に送信してしまうと関係のない第三者にも閲覧されてしまったり、情報が書き換えられてしまう恐れもあります。
そういったことが起こった場合、企業のイメージや信頼の低下、場合によっては損害賠償・慰謝料・補償金等の支払いなどの可能性があります。企業にとっては大きなリスクとなるため、デジタルデータのセキュリティ対策は重要です。以下では、多くの企業で利用されているPDFのセキュリティ対策について紹介します。
PDFセキュリティ対策として、一般的な方法である「パスワード設定」について紹介します。
パスワードの設定方法
PDF利用者にパスワードの入力を求め、設定した数字・アルファベット・記号を正しく入力できなければ利用を許可しないという仕組みです。「閲覧を許可するパスワード」と「編集を許可するパスワード」があり、閲覧のパスワードを設定することで情報漏えいを、編集のパスワードを設定することで改ざんを防止できます。
PDFにパスワードを設定する方法は次のとおりです。
・WindowsのWordを利用する方法
Wordで作成した文書を、PDFとして保存することができます。保存時にパスワードを付与して暗号化でき、セキュリティ対策を行います。WordでPDFを作成する際にパスワードを設定する手順は次のとおりです。
1. 「名前を付けて保存」で「その他のオプション」を選択
2. ファイルの種類を「PDF」にし、オプションを選択
3. 「PDFのオプション」の「ドキュメントをパスワードで暗号化する」にチェックを入れる
4. パスワードを設定する
ExcelやPowerPointのアプリ内から直接PDF形式に保存することは可能ですが、Wordのようにパスワード設定によるセキュリティ対策はできません。
・Macでパスワードを設定する方法
MacではプレビューでPDFにパスワードを付与することが可能です。手順は次のとおりです。
1. 「プレビュー」で対象PDFを開く
2. 「ファイル」→「書き出す」→「アクセス権」ボタンを選択
3. PDFを開くためのパスワードを設定するのか、PDFへのアクセス権を管理するためのパスワードを設定するのかを選択
4. パスワードを設定して保存
暗号化しないPDFを残しておく必要がある場合は違うファイル名を付けて保存します。
専用のソフトウェアを使用する方法もある
WindowsのWordや、Macのプレビューを用いた場合にはパスワードを付与しての暗号化しか行えませんが、ソフトウェアを使用するとさまざまな種類のセキュリティ対策を行うことができます。複数のセキュリティ対策を組み合わせることもでき、その場合はより安全なPDFとなります。また専用のソフトウェアは操作性の点でも優れていて、直感的な操作や分かりやすいインターフェースによって簡単にセキュリティ対策が行えるというメリットもあります。
ソフトウェアで行えるセキュリティ対策については後述します。
PDFのセキュリティ対策には、パスワードの設定以外に次のような種類があります。
利用の制限
PDFにおける利用制限とは、コピー・印刷・編集をできないようにすることです。コピー不可・印刷不可にすることで情報の不用意な拡散を防ぐことができ、編集不可にすることで改ざんを防ぐことができます。
透かしの挿入
無断でコピーや印刷されることを防止するために行うのが、透かしの挿入です。透かしとは読むには支障がない程度の背景を設定することで、背景には「複写禁止」「社外秘」などの文字や会社マークが該当します。コピー・印刷ができる文書でも、透かしを背景に設定することで、第三者に渡すといった二次利用をしにくくすることができます。
電子署名の利用
紙の書類に対して行うサインを、電子ファイルに対して行うものが電子署名です。電子署名は作成者・発行者を明らかにし、正確性や責任の所在を示すために用いられます。また電子署名を行ったファイルは暗号化されるため、指定した受信者だけが内容を閲覧できるだけでなく、情報漏えいも防ぐことができます。
PDFによる情報漏えいや改ざんを防ぐために行うセキュリティ対策には、以下のような問題点・注意点があります。
セキュリティ解除の方法がある
PDFにはセキュリティ対策として、WindowsのWordや、Macのプレビューを用いてパスワードを設定することができます。しかし、設定パスワードを忘れてしまった場合などに備えて、セキュリティを解除する方法も存在しています。セキュリティ解除方法の利用は制限されておらず、誰でも使用できるようになっています。
つまり、悪意を持った第三者なら、パスワードによるセキュリティは容易に解除できてしまうのです。PDFを安全なものにするには、パスワード以外のセキュリティ対策も併用することが重要です。
利用が難しく感じる
PDFのセキュリティには種類があり、どれを選べば良いかという悩みもつきものです。またPDFごとに設定しなければならないため、設定が面倒と感じる社員もいることでしょう。また社内で統一したセキュリティ対策ができない、もしくは分からない、といった問題点も生じがちです。
こうした問題点によって、PDFのセキュリティ対策そのものを難しく感じてしまう企業も多いかもしれません。しかし、セキュリティ対策は企業において必須の対応であるため、研修の実施やマニュアルを整備するなどして社員の苦手意識克服を図り、全社的にセキュリティを強化していくことが大切です。
なお、専用のソフトウェアを利用することでセキュリティ対策の設定が簡単になり、社内の統制もとりやすくなります。例えばAcrobat Proなら統一したセキュリティ対策を「アクション」として設定することで、自動で実行させることができます。
「アクション」とは指定した一連のコマンド設定に従って定めた順序で実行させる機能です。透かしを挿入する場合、言葉やサイズ、傾き、透明度を設定しておけば、毎回操作しなくても同じ透かしを挿入することができます。暗号化する場合もパスワードを設定しておけば同じパスワード、アクセス権限を設定しておけば同じアクセス権限が付与できます。透かしを挿入したうえで暗号化する、といった設定も可能です。
このように、ソフトウェアやツールもうまく活用してセキュリティ対策をスムーズに進めていきましょう。
何のセキュリティもかけていないPDFは情報漏えいや改ざんの危険があります。企業の大切な文書を守るためにはセキュリティ対策をしっかりと行わなければなりません。最も一般的なのはパスワード設定ですが、それだけでは情報漏えいや改ざんを防止できない可能性があります。セキュリティ対策にはパスワード設定だけでなく利用制限や暗号化など、いくつもの種類があります。複数の方法を導入することでセキュリティ強化を図っていきましょう。
複数のセキュリティ対策を設定することが難しいと感じる場合は、セキュリティ機能が搭載されたソフトウェアを活用する方法があります。Adobe Acrobatならセキュリティ強化のためのさまざまな機能が備わっています。ぜひご検討ください。
詳細はこちらをご覧ください。
Adobe Acrobat /株式会社Too
参考:
PDF にセキュリティを設定する方法 (Acrobat)|Adobe
アクションウィザード(Acrobat Pro)|Adobe
PDFを二次加工されないようにするには、どうすればいいですか?|TooクリエイターズFAQ
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記事は2022年9月 1日現在の内容です。