2023年10月にアメリカ ロサンゼルスで開催された「Adobe MAX 2023」では、Adobe Creative Cloud 2024バージョンのリリースや、様々な新しい機能・サービスが発表されました。先駆けて商用利用可能との発表のあった、アドビの生成AIであるAdobe Fireflyの機能も多くリリースされています。
Adobe MAX直後のToo主催セミナー「design surf seminar 2023」でもその内容はコンパクトにまとめてご案内していますが、毎年もっと詳しく聞きたいという声をいただいています。ということで、Adobe Creative Cloudの最新機能を深掘りするセミナーを2023年11月22日(水)にオンライン開催しました。講師はdesign surf seminarと同じくToo Training Center Desi講師の前田勝規です。
Illustrator 2024で、特に仕事に使えそうと講師の前田が感じている新機能として紹介したのが「モックアップ」です。帽子の写真の上にベクター形式のロゴを合成するときに、帽子の立体感に合わせてロゴが自動的に変形される様子を紹介しました。画像の中のものを立体として認識し、内部的に立体構造のメッシュが作成されているとのことでした。
モックアップ機能については、セミナー中にいただいた質問に答える形で、ロゴの不透明度を変えたり描画モードを使ってなじませると不自然さがなくなるという補足の解説と、埋め込みではなくリンク画像でも利用できることを確認しました。
つぎに、Adobe Fireflyを利用した新機能「生成再配色」の紹介です。アウトラインデータで作られた緑が多い森の画像を、「冬」というプロンプトで配色を変更してみます。4つの候補の中には秋っぽいものもありましたが、トーンが落ちて白っぽい要素が増えた冬らしい配色のものを選びました。
そして、もうひとつのFireflyを使った機能として、プロンプトによりベクター画像を生成する「テキストからベクター生成」を紹介しました。テキストからベクター生成機能はまだベータ版ですが商業利用可能です。
講師の前田は「わたしは絵心がありません」と前振りをしつつ、四角形を描き「かわいい犬」と入力するだけで犬のベクター画像を生成しました。1度に3つ生成されて気に入ったものを選べます。イラスト素材が必要なときに素材集などから探す時間も短縮できますし、素材がビットマップだった場合にトレースしてベクターデータにするといった手間も不要となります。
生成されるベクターデータは、被写体、シーン、アイコン、パターンの4種類が設定できます。さきほどの犬は「被写体」で生成したのですが、「シーン」では簡単な背景付きで生成され、「アイコン」では線や色が間引かれてアイコン風に生成されると説明しました。
「パターン」では繰り返しパターンを作れるのですが、「かわいい犬」のプロンプトのままで実際に生成したところ、候補の3つはどれも違和感のないパターンになっていました。生成されたパターンは、タイル状に並べたときに破綻しないものになっています。
次に、WebアプリのAdobe Expressの案内です。一般企業や学校教育で使われることが多く、Adobe Creative Cloudを使いこなしている人には関係ないツールだと思われているかもしれませんが、そういったプロの人たちでも利用する価値があると思ってもらえそうなヒントを案内しました。
Adobe Expressは最近、Illustratorファイルに対応したので、実際にファイルを読み込んで一部のオブジェクトをアニメーションさせるデモンストレーションを行いました。さらに、Adobe Expressに用意されている写真素材を取り込んで背景を削除したり、テキスト部分を英語、中国語に翻訳した別ファイルを自動で作成するなど、簡単な操作で高度なことができることを紹介しました。
特にSNSに投稿する画像を作るのに便利で、あらかじめ主要SNSごとのキャンバスサイズが用意されていて、サイズを変えた複数のファイルを作りやすくなっています。さらに、各SNSへの予約配信ができるようになっており、情報解禁日に合わせて投稿するといったメディアコントロールもしやすくなっているといった解説もありました。
Photoshopの新機能として注目されているのはやはり、Fireflyを利用した「生成塗りつぶし」です。まずは白紙の新規ファイル全体を選択し、プロンプトとして「夜、海岸、花火、灯台」と入力して画像生成しました。1回につき3枚の画像が生成されるので、そこから気に入ったものを選びます。そして今度は、海岸の一部を小さく選択し「焚き火」と入力すると、違和感なくそこに馴染んだ状態で焚き火が生成されました。
生成塗りつぶしのプロンプトの書き方にはこれが正解というものはあまりなく、トライアンドエラーを繰り返すしかないとのことです。プロンプトは日本語も通るのですが、やはり英語の方が理解されやすかったり、英語に翻訳できない表現を使うとうまくいかないことがあるなどの知見をお知らせしました。
次に、すぐに仕事に活かせそうな画像生成AIの使い方として、「生成拡張」を紹介しました。人物の頭と肩の一部が欠けている写真のカンバスを大きく広げて、欠けている部分が違和感なく追加される様子をデモンストレーションしました。砂利を敷き詰めた写真も、生成拡張で違和感なくカンバスサイズを拡張できました。使いたい画像のサイズが足りない、縦横比を変えたい場合などに便利で、時間短縮につながりそうです。
Photoshopの生成塗りつぶしでは1回につき3つの候補が生成されて、「生成レイヤー」として残ることであとから変更できるメリットがある一方、ファイルサイズが大きくなるデメリットがあります。候補を個別に削除したり、生成レイヤーを通常のレイヤーに変更することで容量を減らせます。
Fireflyによる画像生成は無限にできるわけではなく、「生成クレジット」が設定されています。Creative Cloudコンプリートプランでは月間の生成クレジットが1000クレジットで、Photoshopの生成塗りつぶし1回(3枚の候補を生成)に1クレジット必要といった仕組みです。
なお、Adobeから一旦は2023年11月1日からクレジット制が開始されると発表されたのですが、2024年1月1日以降に改めて発表するということで、少なくともそれまでは無制限で生成できる状態だと説明しました。
今回は2023年11月に実施したウェビナーのレポートをお届けしました。
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記事は2024年1月12日現在の内容です。