教育機関では AI ツールを使ってクリエイティブな人材を育成することが注目されています。児童や生徒が学ぶためにはどのように活用すべきかお悩みの方も多いのではないでしょうか。
今回のTooで開催したセミナーでは、Adobe Education Leaderの境 祐司先生から、小中高校で求められるクリエイティブ教育に関して、デジタルツールとしてAdobe Express を取り上げながら生成 AI を活用した授業の事例をご紹介いただきました。このレポートでその内容をご紹介します。
今回のセミナーは、以下の2 つの項目について語られました。
「クリエイティブ教育は2016年頃から話題になったアドビの AI エンジンAdobe Sensei から始まりました。現在の教育において、デザインの力で問題を発見・解決していくといった創造的問題解決能力を身につけることが重要」だと境先生は話します。
「創造的問題解決能力とは、問題を深く理解し、解決策を考え出し、その解決策を実際に試しながら改善していく一連のプロセスを指します。」
重視することは、チームで取り組む・共同作業のしやすさ・質より量の実現、とのことです。
「人から意見をもらいながらものを作ると、時間もかかり本人も妥協してしまうことがあるそうです。生成 AI により、授業や講座の時間内にたくさんアイデアを出して、完成させることができるようになります。アイデアを出して、かたちにする、意見をもらって改善するというように取り組むことで、妥協なしで作業を進めることが可能になりました。今後はグループ内にデザインセンスに優れた人がいる必要もなくなり、またチームで取り組むことで妥協せずに解決力を身につけられるようになります。」
続けて、境先生から生成 AI とは何かの説明がありました。
「大量のデータを学習し、その傾向を理解して、文章、画像、音楽等を生成する技術のことを生成 AI といいます。
画像生成ができるツールはいくつかありますが、最近利用可能になったAdobe Firefly が誕生したことで安全を重視して教育現場で使えるようになりました。Adobe Firefly は、短期間でアップデートされ、改善が行われているようです。
生成 AI の技術を利用することで、生徒達が未来の職業や身近な問題解決に対応するための新たなスキルと視野を獲得する手助けになります。また生成 AI の可能性だけでなく、潜在的なリスクについても学ぶことができ、AI の限界を理解しながらベストプラクティスを模索できる力を養うことが可能です。」
「生成 AI の進化は速い為、柔軟に対応していく力も身につけなければいけない」と境先生は話します。
司会者から、権利侵害など生成 AI を利用するリスクを心配される方が多いのではと質問をしたところ、境先生からは「Adobe Firefly はAdobe Stock のコントリビューターの使用許諾契約に基づくコンテンツが使用されているため為、クリエイターの著作権を侵害するものを作らない」とお答えいただきました。
Adobe Firefly で作成されたものは、すべて安全に商用利用できるように設計されているので、例えばブランドやキャラクターなどの名前を検索してもNGワードが設定されているので出てこないとのことです。
境先生は、小学校では物理的な何かを展開することを1つの方針としていると話しました。例えば、ストーリーを作って実際に絵を描くと時間がかかってしまいますが、Adobe Express を利用すると、文字を入力するだけで簡単に画像生成ができます。
「実際に児童に絵を描いてもらうと、そこに時間がかかってしまうとお悩みの先生も多いのではないでしょうか。Adobe Express に含まれているAdobe Firefly を利用すると、候補として4つの画像が生成されます。授業内で完結することができるほか、児童の作品をPDFで書き出して電子ブックを作成し、別の児童に作品を共有することが可能です。
アニメーション機能が搭載されており、BGMや音声収録ができるので、自分の声を含めることもできます。このように、物理的な作品を鑑賞することで授業を完結することができます。」
シリアスゲームは遊びながら学べるところが1番の特徴と境先生は言います。
「この授業では、Chat GPT とAdobe Express を活用してプロトタイプを制作することで、ゲームを通じてプレイヤーに何を学んでほしいのか、またどのような問題について考えてほしいかを定義し、引き込まれるような面白いストーリーを深く考えることが目的です。通常ゲームを作るには、多くの人が関わる必要があり、授業内では難しいと思います。」
教育的な要素を盛り込むために、いくつかの役割をChat GPT に与え制作を行うことがポイントとのことでした。
「数年前はゲームの画面を作るだけでかなり作業が必要でした。Adobe Express にAdobe Firefly が追加されたことで、ストーリーに合わせていくつかのテンプレートを作ることができるので、時間短縮が可能になりました。背景もキャラクターもすべて生成 AI を利用することで、完成が容易になります。」
また境先生は、授業では伝記物語のような特定の歴史的な芸術作品の生成を行うことは避けるよう呼びかけます。
芸術作品の生成を避ける3つの理由を挙げました。
・倫理的および文化的配慮(作品がもつ文化的価値や影響を尊重するため)
・技術的方針とガイドライン(著作権だけでなく、AI 技術の適切な使用とその影響を考慮するため)
・画像の独自性の促進(新しいアイデアやビジョンを視覚化することが重視されているため)
リスクに注意しながら、メリットとなる部分を積極的に利用していくことが大切と話されます。
高校授業では、防災アプリがどんな問題を抱えているのかを調査し、問題発見します。境先生は課題に対して、情報収集とアイデアをたくさん出すことが大切だと話しました。
アイデアは質より量で、短時間で行うことが重要なため、まずはペンで書いて写真を撮り、Adobe Express にアップロードします。その後プロトタイプを作成して検証し、その後URLを公開してたくさんの人に確認してもらいます。
Adobe Express のコメント欄を利用し意見交換を行うと、評価をする先生がプロセスを確認しやすいようです。
「これで今まで1回しかできなかった改善を、数回できることで、より完成度の高いものを作ることができるようになります。
デザインの力で問題を発見し解決して、作りながら考えていく。この繰り返しで、プロのデザイナーが行っていることを生徒にも体験させることができるようになりました。」
司会者から評価基準について質問したところ、境先生からは「成果物も評価の対象となるが、コメント欄などから見えるプロセスに重点を置いて評価するのが望ましい」と回答いただきました。ルーブリックや自己評価を用いると、より具体的かつ公平な評価ができるようです。
「技術の変化のスピードが速く毎月作り直すことが多いですが、そのおかげで不可能だったことも可能になりました。ぜひ児童や生徒にはデザインの力を身につけ、問題を解決することに慣れてほしいです。」 と境先生は言います。
生成 AI の可能性だけでなく、潜在的なリスクについても学ぶことで、AI の限界を理解しながらベストプラクティスを模索できる力を養うことができるとのことです。
また、先生たちが恐れずに生成 AI を利用するには、可能性とリスクを理解する必要があることがわかりました。安全な範囲で積極的に利用することが現在のクリエイティブ教育で大切なことだということ、また著作権の理解・倫理的な使用・AI の限界の理解・セキュリティの理解・原作品へのリスペクトが大切だと感じました。
今回のブログでは、中学高校で求められるクリエイティブ教育に関するセミナーのレポートをお届けしました。
この内容を参考に、児童や生徒の皆さんにチームで力を合わせてたくさんアイデアを出し、問題を解決することをAdobe Express を通じて体験できる授業を行っていただけると嬉しいです。
2024年2月29日(木)には和光学園 和光中学高等学校の情報科教諭でAdobe Education Leaderとしてもご活躍の小池 則行先生から、Adobe Express の生成 AI 機能を取り上げながら、アドビ製品を活用した授業の事例をご紹介いただきます。
オンライン開催ですので、インターネットに接続できるPC、もしくはスマートフォン・タブレットデバイスがあればどこからでも気軽にご参加いただけます。ぜひこの機会にご参加ください。
創造的な学びを豊かにする -和光高等学校のアドビ授業実践紹介-
日時 2024年2月29日(木) 17:00 - 18:00 LIVE配信
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記事は2024年2月13日現在の内容です。