パッケージデザインに携わるインハウスデザイナーの仕事内容を事例を元に紹介するセミナー「インハウスデザイナーの可能性」が2017年12月21日(木)Too本社の「The Gallery Too」(東京都港区虎ノ門)で開催されました。


The Gallery Too入り口の受付の様子

明治、キリンビバレッジ、コーセーのデザイン担当者からパッケージデザインの現場の話を聞ける貴重な機会で、すぐに満席になるなど注目度の高いセミナーでした。

上層部から不安の声が大きかったデザインが、ユーザー調査を説得材料に採用

「明治ザ・チョコレート」のデザイン開発について

講師:株式会社明治 コミュニケーション本部 デザイン企画部 アートディレクター 井田 紀美子 氏

明治のアートディレクター・井田紀美子さんは、「明治ザ・チョコレート」の商品開発の事例を元に、明治におけるインハウスのアートディレクターの仕事を紹介しました。


明治ザ・チョコレートを息の長いブランドに成長させたいと語る井田 紀美子さん

明治ではデザインチームの半分が営業・企画などの出身で、社内ではディレクションを担当し、外部のデザイナーとともにデザイン作業を進めるのが一般的とのことです。「明治ザ・チョコレート」のデザイン開発も、外部のプロデューサー&デザイナーとの共同作業で行われました。


デザインが作られていく過程を詳細に解説していただきました

今ではすっかりおなじみの「明治ザ・チョコレート」のクラフト風のパッケージですが、検討段階では上層部から不安の声が大きかったという裏話も。しかし、ユーザー調査結果では明確にスコアが良かったことが説得材料となり、今のデザインが採用されることとなったそうです。


パッケージを元にした創作がSNSでブームにもなった「明治ザ・チョコレート」

デザインを実際の製品に落とし込む上で、製造ラインでの問題、コスト面での問題などに直面したエピソードは、他ではなかなか聞けない貴重な話だったでしょう。外部クリエイターたちと作り上げたデザインにこだわりつつも、現実的な落としどころを決めていく作業は、特にインハウスのアートディレクターの手腕が発揮されるところだと感じました。

外部クリエイターもコンセプトの段階から関わるなど、社内・社外を超えたチームとして取り組む

「新・生茶」のものづくり

講師:キリンビバレッジ株式会社 マーケティング本部 マーケティング部 商品担当 主任(デザイナー)水上 寛子 氏

キリンビバレッジには「デザイン部」という組織はなく、インハウスデザイナーは商品担当と同じく各ブランドチームに所属し、コンセプト段階から開発に携わります。


キリンビバレッジのデザイン担当は「開発者とパッケージデザイナーをつなぐ翻訳家」と話す水上 寛子さん

マーケティング部で「キリン 生茶」の大規模リニューアルを担当した水上寛子さんは、外部クリエイターとともに行った生茶のリブランディングについて語りました。


生茶は「後がない」状況だったからこそ大きなリニューアルができたそうです

生茶のリニューアルは、外部クリエイターもコンセプトの段階から関わるなど社内・社外を超えたチームとして取り組みました。新・生茶のコンセプトをしっかり共有していたため、ベースとなったプロトタイプは、ほぼ1案に近い形で提案され、プロトタイプの印象をベースに最終デザインまで進行したそうです。


リニューアル後は高いトライアル&リピートを獲得し、市場の活性化に貢献しました

キリンビールのハートランドをモチーフとしたビンのような形状のペットボトルを実現するための強度問題への対策や、中味の液色が加わったときのボトルの色の見え方の調整など、デザインを形にしていく作業の詳しい解説は興味をそそられる内容でした。そして、デザインを精密化して実際の製品に落とし込むためには、社内デザイン担当者が重要な役割を果たすことを実感しました。

提出されたものに対しどうフィードバックするかが社内ディレクターの存在意義

海外クリエイターとつくる「デコルテ」デザイン

講師:株式会社コーセー 商品デザイン部 デザイン室 クリエイティブディレクター 赤井 尚子 氏

コーセーのクリエイティブディレクター・赤井 尚子さんは、世界的デザイナーのマルセル・ワンダース氏を起用した、ハイプレステージブランド「デコルテ」のパッケージデザイン開発の現場を紹介しました。


使いやすさにこだわったデザインをしていると語る赤井 尚子さん

コーセーでは社内のデザイナーがイチからデザインするのが一般的なのですが、海外展開を考えグローバルな環境をよく知っているデザイナーに頼みたいと、マルセル氏をデコルテのデザインに起用することになったそうです。


歴史と伝統を大事にしながらグローバル価値を取り入れるために外部海外デザイナーに依頼

3Dプリンタで作った模型を事前に送ってからウェブミーティング(テレビ会議)を行うなど、日本とオランダとでやり取りする方法の紹介は興味深い内容でした。通訳もいるけれどデザインの専門ではないので、イラストを使ってコミュニケーションを取るのも効果的だったそうです。もちろん、オランダのマルセル氏のスタジオに訪問してのミーティングも行っており、そのときのエピソードも聞くことができました。


「唯一無二のデザインに仕上がった」というマルセル氏の手による商品デザイン

外部デザイナーとものを作っていく上での醍醐味は、提出されたものに対しどうフィードバックするかであり、そこに社内ディレクターの存在意義があるとのことです。デザインをパッケージとして再現できるのか、生産性はいいのかなど、懸念事項を徹底的に洗い出す最初の段階が肝心という解説が印象に残りました。

穏やかな雰囲気での4人のトークセッション

トークセッション

株式会社明治 コミュニケーション本部 デザイン企画部 アートディレクター 井田 紀美子 氏
キリンビバレッジ株式会社 マーケティング本部 マーケティング部 商品担当 主任(デザイナー)水上 寛子 氏
株式会社コーセー 商品デザイン部 デザイン室 クリエイティブディレクター 赤井 尚子 氏
株式会社コーセー 宣伝部 クリエイティブディレクター 山﨑 茂 氏

3人の話のあとは、本セミナーの企画&コーディネートを担当した日本パッケージデザイン協会理事の山﨑 茂さんも加わって、トークセッションを行いました。


コーセーで宣伝部クリエイティブディレクターを務める山﨑 茂さんも参加

山﨑さんが事前に準備していたテーマに対して3人が答えていくスタイルで、「インハウスデザイナーの存在意義」「インハウスデザイナーとして働く上で大切なこと」「マーケティング要素をどうデザインに落とし込んでいるか」などについて語り合いました。


真摯に一つ一つのテーマに答える3人

今回インハウスデザイナーとして登壇いただいた3人は、もともと面識があったということもあり、穏やかな雰囲気でのトークセッションとなりました。


あっという間のトークセッションでした

最後は登壇者も交えての懇親会

最後に、飲食しながらの懇親会が開催され、各セッションで登壇いただいた方々とTooのスタッフも含め、ざっくばらんに意見交換していただきました。


軽食、アルコール、ソフトドリンクなどを用意しました


歓談する来場者の皆さん


各種プリンタ/3Dプリンタの出力見本なども展示しました

大勢のお客様にご来場いただき、ありがとうございました。

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